彼がこの「契約関係」に飽きない事を祈る




「じゃあ、行って来ますね」


新八は振り向いて上司に声をかけた。


「…お前、それいつまでの契約なんだよ?」


上司は不満たっぷりに机に顎を乗せ、ぶつくさ文句を言っている。


「仕方ないでしょ、今回は沖田さんからの依頼で…凄く報酬弾んで貰っちゃってて…沖田さん、女の子に付き纏われてて、仕事にもならないからって言うし…」

「そりゃあな、確かに額はでけェが、お前と沖田がおホモダチって設定が…」


よりにもよって、とまだ上司はブツブツ言っている。
そんなんなら真面目に仕事探せよ!と何度も言ったが、肝心の上司は大枚の依頼料にかまけて普段の倍ダラダラしまくっている。


「そりゃ、結構恥ずかしいと言うか、そこまでするかとは思いますけど…。………銀さんがちゃんと仕事してくれてたらこんな事言われずに済むとかは思わないんですか…」


小さく文句を言うと、銀時はあらぬ方を向いて何やら瞑想している。


そんな上司にため息をつくと、新八は玄関に向かった。

頬が微かに赤く色付いている。


(契約が、悪い事ばかりじゃないから、まだ怒らずにいられるんだ)


玄関の引戸を開け、まだ冷たい空気で少し火照った頬を冷ます。


「行って来ます!」


新八は、沖田との待ち合わせ場所へと駆け出していた。







「あ…」


待ち合わせの公園に到着すると、依頼主である沖田は既に公園のベンチであのアイマスクを着け爆睡中だった。


「あんた…ナイフ持った女の子に狙われてたんじゃ…」


そう言いながらも、新八はそっと沖田のそばに腰掛けた。


「寒くないんですか〜?」


自分がしていたマフラーを、沖田の首から肩辺りに掛けてやる。


(人の気も知らないで…)



沖田の寝顔を見ながら、新八はため息をつく。


沖田の依頼を受けた理由は、勿論依頼料の多さもあるが、新八自身の気持ちにもあった。


「…本当、人の気も知らないで…好き放題言ってくれちゃって」




もう一度、大きくため息をついて、新八は空を仰ぎ見た。






晩冬の空は抜けるような青空だった。