新八は、自分が海水をかけたせいで濡れた沖田の髪を撫でた。
「まだ、これから思い出はどんどん増えるじゃないですか」
「……俺との思い出が増える間にも、新八と旦那達との思い出はますます増えていくじゃねェですかィ」
「僕には両方大切だ、って言ったじゃないですか。数なんて関係ない、て」
「でも、」
「もう!」
何度言っても分からない沖田の頬に手を当てて、新八は怒ったような声を出す。
「そんなに言うなら、これからは銀さん達とは作れない思い出を沢山作れば良いじゃないですか!」
「へ?何でィそりゃ、」
新八は沖田の口に自分のソレを重ねる事で、沖田の声を遮る。
一瞬重ねて、そして離す。
「……!」
沖田は自分の唇を手で塞いだ。
「こんな、……キ、キス、の……思い出は、沖田さんとしか、作りませんよ」
新八は顔を真っ赤にして言う。
「こんな思い出も、これから増やせば良いんです!銀さん達とじゃ作れない思い出なんだし……コレで良いでしょう?!」
怒鳴るような声を聞いた後、沖田は新八を見る。
真っ赤な新八の顔を見て、次第に沖田の顔が緩んでいく。
「……へ、へ。そりゃイイや」
笑って、今度は沖田から口付けをする。
「これから、沢山、思い出作りやしょうぜ」
口を離してからニッと笑えば、新八の頬に赤みが増す。
「すぐ元気になって……切り換えの早い人」
「新八のチューじゃないと、こんなすぐ元気にはなれやせん」
「……バーカ」
拗ねた口調で言っても、新八の声には甘さが含まれていた。
さぁ、思い出を作りましょう。
君と、僕だけの
甘い、甘い思い出を。
おわり
礼
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