風吹き桜膨らむ
季節は流れ、家の双子も寺子屋に通うようになりました。
2人とも相変わらずだけど、ちょっとは大人になった…のかな…?
「おかーさんただいまー!」
「しんぱちぃーけぇったぜぃ!」
「はい、お帰りなさい。もぅ、又お父さんの真似するんだから…」
ふぅ、と溜息を吐いて小言を言おうと腰に手を当てると、すぐに気付いた風樹が桜を引っ張って洗面所に行ってしまう。
…ホント、風樹はしっかり者に育ったなぁ…
手洗いとうがいを終えた2人が居間に戻ってくるんで、小言は諦めておやつを用意してあげる事にしよう…
僕がおやつを用意するんで台所に行こうとすると、満面の笑顔の桜が何かプリントを差し出して、得意気に僕を見上げる。
「きょーはねー、てすとだったんだぜぃ!はい!」
「…はい…」
あれ?
何で風樹がモゾモゾしてるの…?いつもなら桜がテスト隠すのに…
とりあえず、2人からテストを受け取って点数を見てみる。
桜が80点で、風樹が95点…全然悪くないのに…
「2人とも良く頑張ったね!」
嬉しくなって2人の頭を撫でると、桜は照れたように僕の手にスリスリとすり寄ってくるけど、風樹は泣きそうに顔を歪める。
「どうしたの、風樹?95点なんて凄いよ?」
「ぼく…まんてんとれなかった…」
「そんな…」
「そうでぃ!ふうきはクラスで1ばんなんだよ!」
僕と桜が言って俯いてしまった風樹の顔を覗き込むと、遂に風樹は泣き出してしまう。
「…いちもんまちがえたもん…ぼく…おべんきょうしかできないもん…さくらちゃんみたく…けんじゅつできないもん…うんどうもにがてだもん…」
「そんな事無いよ?風樹頑張ったんだから凄いんだよ?」
「そうでぃ!ふーきだってけんじゅつうまいよ!さくらがすごすぎるだけでぃ!」
…本当に…変な所ばっかり総悟さんに似て…
どこから来るんだよ、その自信…
「風樹だって筋悪く無い、ってお父さん言ってたでしょ?もっと大きくなったら強くなれるよ!それよりほら!今日のおやつはケーキだよー?クリーム一杯だよ?」
「わーい!ごーかごーか!!」
「…けーき…?」
あ…風樹がちょっとだけ元気になった…
「そう!さっき山崎さんが持ってきてくれたんだよ?」
「おー、やまざきのくせにきがきくな!」
「こら、桜っ!そんな事言う子にはケーキあげないよ?」
今度こそ僕が怒ると、あわあわと慌てた桜と一緒に風樹まで慌てだす。
「やだー!えっと、やまざきさんはいいおにいさんです!」
「やさしいおにいさんです!」
必死でそんな事言うけど…まったく…変な事ばっかり覚えるんだから…全部総悟さんが教えてるんだよな…
いや待てよ?銀さんか?…神楽ちゃんかもしれない…
碌な大人居ないな、オイ。
「山崎が持ってきたのかィ?タバスコ仕込まれてねェか?気ィ付けろィ。」
何の気配も無く、僕の肩ごしに総悟さんが顔を出す。
「そんな事しませんよ…総悟さん、そういう事したの…?」
そう言って横に有る顔をジロリと睨むと、ちゅっ、とキスされる…
って!なっ…何を…!?
「俺がそんな事するのは土方だけでィ。」
得意気に笑う顔は綺麗だけど…っ!
子供の前でキスするなんてっ!!
僕がぺしっと頭を叩くと、総悟さんがむぅっと膨れる。
「なんでィ、愛してるのサインじゃねーか。」
「こっ…子供の前でなんて…駄目ですっ…」
こっ…この人は…恥ずかしげも無く…
…嬉しいけどさ…っ…
「おとーさんとおかーさんらぶらぶー!」
「おやじー!もうしごとおわりー?」
「イヤ、休憩時間でィ。」
2人が嬉しそうに総悟さんの足に抱きついていくんで、僕は4人分のおやつとお茶を用意する。
最近は仕事をあんまりサボらなくなった総悟さんは、子供達に会えない日が無いようにおやつの時間には何とか時間を作って家に帰ってくる。
こればっかりは、近藤さんも、土方さんでさえ大目に見てくれてるんだ。
ケーキとお茶をおぼんに乗せて居間に行くと、卓袱台の周りに綺麗に並んだ3人が目をキラキラ輝かせて待っていた。
早速それぞれの前にケーキとお茶を置くと、子供達はすぐにケーキを食べ始める。
僕も頂こうとフォークを手に取ると、総悟さんがズイッと自分の分のケーキを僕に差し出す。
「…珍しい、いらないの?」
「いんや、ここん所イチャイチャが足りねェから…食べさせてくれィ。」
…真顔で何言ってんだ!?コイツ!?
大体、昨夜だってこの人無茶苦茶したじゃないかよっ!!おかげでまだ腰ダルイんだからなっ!?
「何ボケかましてるんですかっ!あんなに…っ…ゴホン…足りないってアンタどんだけ!?」
「違いまさァ、それはエロエロでィ。イチャイチャはしてねェじゃねェか。」
ニヤニヤと笑いながら僕を見下ろす顔はドS顔で…
ちくしょう、カッコいいじゃねぇかよ…
「おとーさんとおかーさん、けんかする…?」
「えろってなんでぃ?」
はっ!
子供達の前だったっ!!
僕があわあわしてると、総悟さんがさらりと2人の頭を撫でる。
「安心しろィ、喧嘩なんざしねェよ。お父さんはお母さんの事大好きだからねィ。な、新八ィ?」
「…僕も…大好きですからね…っ!」
僕が言うと、3人が僕を見てにへらと笑う。
そんな顔されたら…怒れないし…言う事聞いてあげたくなっちゃうし…
「それから桜、エロはお前ェはまだ知らなくて良いんでィ…イヤ、一生知らなくて良い。」
…なんだかんだ言って、桜の事大事で仕方ないんだよね…僕もだけど。
桜は誰にもお嫁にはあげないから。
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