コイビトコレクション



気が付くと、僕は見知らぬ部屋に1人で居た。
その上、何でだか僕の身体は女の子になってしまっていた…

「えっ…ちょっ…何がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

取り敢えず叫んでみても、僕のある状況は何も変わらず…夢かと思ってぎゅっと頬っぺたをつねってみても、物凄く痛い…
僕は…一体どうしちゃったんだ…?

ぐるりと部屋を見回してみても、ヒントになる様なものは何も無い…どころか部屋の中には何も無い。
ここは一体どこで…僕は一体どうなったのか…
そんな事を考えてただ呆然としていても仕様が無い。
僕は目の前の扉から、部屋を出てみる事にした。

ドアノブに手を掛けると、部屋の外からコンコンとノックされる。
僕の他にも誰か居たんだ!
…でも…それが誰なのか分からない内は、油断できない…

「…誰ですか…?」

「その声は…万事屋の眼鏡…?」

ガチャリとドアが開いて、そこに焦った顔で立っていたのは…

「沖田さん!?」

良かった!知ってる人だった!!
知り合いの顔を見たら安心して、ホッと気が緩む。

「沖田さんっ!ここは何処ですかっ!?僕らは一体…」

僕が矢継ぎ早に質問を浴びせかけると、沖田さんが僕の肩を押さえて首を横に振る。

「…それは俺にも判りやせん。俺だって今居た部屋から出て隣の部屋…ここに来たばっかでさァ。」

「…そうなんですか…あ!ここの隣とか…部屋は無いんですか!?」

「まだまだ有りやした。一緒に行ってみやすか?」

「はいっ!」

部屋から出てみると、長い廊下が続いてて…何個もドアが並んでいた。
沖田さんと2人で手分けして次々と部屋を覗いて行くけど、この建物には3階まで有るのに…僕ら以外誰も居なかった…

この建物の外にも出てみたけど、どうもここは小さな島のようで…何でこんな所に僕らが連れてこられたのかは、さっぱり分からない。
食べ物屋さんや、服屋さんや、それ以外にも何軒かお店が有ったけど、そこに居る人達はみんな黒子のような格好をしていて…僕らが話しかけても何も応えてくれなかった。

結局、何も分からないまま2人で僕の部屋に帰ると、僕の部屋のチャイムが鳴る。

「沖田さん…」

「誰か…来たんですかねィ…俺ァ扉の外で様子伺ってやす。何か有ったら絶対護ってやりやすから、安心しろィ。」

ニカリと笑って沖田さんが部屋の外に出て行ってしまう。
大丈夫だよね…?沖田さん強いもんね…
恐る恐る窓に近付いてみると、窓の外に大きな沖田さんが居た…

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

その沖田さんが僕にご飯をくれて、服をくれて、頭を撫でてくれた。
…良い人なのかな…?
その上部屋も豪華にしてくれて、携帯ゲーム機までくれた。
…凄く良い人なのかも…
でも…沖田さんじゃんか…何だよ!やっぱりあの人が原因なんじゃないかよっ!
なら、問い詰めたら元に戻れるよね!良かった…

安心したらちょっと余裕が出てきたよ。
どうせ又沖田さん来るよね?
その時に問い詰めよう。
それまでちょっとこのゲームを…

僕が貰った携帯ゲームをやっていると、隣の沖田さんがバタバタと僕の部屋に駆け込んでくる。
あ…沖田さんも着替えてる…

「ちょ!眼鏡ェ!!」

「志村新八です。ってか沖田さんっ!やっぱりアンタが絡んでたんじゃ…」

「俺ァ知りやせん!なんでィ、あの大きな俺ァ!!」

「…本当に何も知らないんですか…?」

「こんな事で嘘なんざ吐きやせん!大体何か企むなら俺までこんな所になんざ来ねェや!!」

「…確かに…じゃぁ、僕ら…」

「あぁ、暫くこのままですねィ…さっきでっけェ俺に色々聞いてみたんですが、こっちから話しかけても何も応えてくれやせんでした…だから、何で俺らがこんな所に連れてこられたのか、ここが何処なのかはさっぱり判りやせんでした…」

「…そうなんですか…」

これで帰れると思ったのに…僕はどうしたら良いんだろう…姉上…心配してるだろうな…
すっかり気落ちして僕が俯いてしまうと、沖田さんがバンバンと僕の肩を叩く。

「心配しなさんな。飯と寝る所の心配はねェんだ、その内なんとかなりますぜ。」

ニヤリ、と笑われると本当になんとかなりそうな気になる。
沖田さんが一緒で…良かったよ…

「…はい…そうですね。休暇でも貰ったつもりでゆっくり休みます。ご飯美味しかったし…ゲームも貰ったし…」

「お?んじゃ対戦しやすか!」

沖田さんの部屋に連れていかれて、オヴェーで一緒に遊ぶ。
意外と沖田さんはゲームは苦手なのか、僕が勝ったりもした。
一杯身体を動かしたからか、すぐに眠くなってその日は僕は部屋に戻ってぐっすり眠ってしまった。



次の日も、その次の日も大きい沖田さんはやってきて、ご飯やら服やら色々くれた。
その度に2人で色々質問してみたけれど、その人は何も応えてくれなかった。
沖田さんとは…毎日遊ぶようになって、すっかり仲良くなった気がする。
そう言えば、沖田さんに言って無い事が1つ有ったっけ…
沖田さんも…そうなのかな…?
いつものように、沖田さんがバタバタと僕の部屋に駆け込んできたんで、その事を聞いてみる事にした。

「新八くん、今日は何して遊びやす?」

「…あの…沖田さん…1つ聞いても良いですか…?」

「今更なんでィ?」

ここに来てから見るようになった、にっこりという笑顔につられて僕も笑う。
沖田さんがこんな顔するなんて知らなかった…いつもこんな風に笑ってれば良いのに…

「あの…僕、ここに来てから身体が女の子になってるんですけど…沖田さんもそうなんですか…?」

「はぁっ!?女ァ!?」

目を見開いた沖田さんが、がしっと僕の胸を鷲掴む…って!?ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!

「なっ…何すんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

僕が手を叩き落とそうと振りかぶると、サッと手を離す。
なっ…なっ…何するんだよっ!コイツぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!

「…新八くん本当に女になってんですねィ…俺ァ変わってやせんが…」

ほれ、と胸を差し出すんでさすさすと擦ると固い胸板で…
男の人…だよね…こんな女の子の胸板は嫌だ…

「何で僕だけ…」

「…アレじゃねェですか?こんな島に俺ら2人っきりで男と女って事ァ…産んで増やせ、って事じゃねェですか?どうでィ、試してみやすか?」

ぐいっと肩を抱かれて顔がすっごく近くなる…なっ…!?
思わず条件反射で頬っぺたを叩いてしまうと、赤くなった頬っぺたを押さえた沖田さんが僕をジロリと睨む。

「…ってェ…冗談じゃねェか…俺だってお前さんみたいな地味眼鏡、お断りでィ!」