※注意※

この話は沖田姉弟と志村姉弟が4人で姉弟になっています。(総悟・妙は双子です)
そんなパラレル有り得ない!!と言う方は、この先進まれないようご注意下さいませ。
全然大丈夫!と言う方は、このままお進み下さいませ。





最凶姉弟



僕の名前は沖田新八、苦労人の16歳だ。
江戸に有る恒道館道場に、父母の残した道場の復興を夢見て姉上と兄上と慎ましく暮らしている。
父上と母上は、僕が小さい頃に亡くなってしまった。
でも、寂しいなんて思った事は一度も無い。
僕には、最強の姉上と兄上が居るから…全くもってそんな事思ってる暇なんか無いんだ!



僕の一日は、妙姉と総兄の喧嘩で始まる。

「新ちゃん、もう朝よ?」

ぽんぽん、と優しく僕の布団を叩いて起こしてくれるこの人は、妙姉…沖田妙。
沖田家の次女で、艶めく黒髪も美しい18歳だ。

「ミツバ姉さんがご飯作って待って…あら?いやだ新ちゃんお布団にゴミ虫が入り込んでるわよ?」

なかなか起きない僕の布団をめくり上げた妙姉さんの声音が変わる。
それと同時にものっ凄い殺気が僕を襲って、さっきまで僕が寝ていた場所にグサリと薙刀が刺さった。
あーあ、又布団繕っておかなくっちゃ…
僕がぼんやりと目を覚ますと、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
妙姉さんがどんな無茶しても、この人が隣に居るの分かってたから安心して寝てられるんだよね…
まぁ、この人が居なけりゃ僕の布団が串刺しになる事も無いんだけどさ。

「あぶねぇなァ、新八に刺さったらどうするつもりでィ。まぁ、俺がそんな事させねェけど。」

「アナタが新ちゃんの布団に入り込まなきゃ良いだけの話よ?総?」

にっこりと般若の笑みを浮かべる妙姉をものともしないこの人は、長男の総兄…沖田総悟18歳。
妙姉とは双子なのに、仲良くしてる所を見た事が無い。
武装警察真選組、なんて物騒な所に勤めているので、いつ怪我するかと僕は毎日心配だ。

「兄上、姉上が怒ってます…」

何時までもこんな事してたってらちが明かないので、僕が声を掛けると二人がにっこりと笑う。

「新ちゃんおはよう」

「妙姉おはようございます。」

「おー、新八おはよう。」

そう言って総兄が至近距離でにへら、と笑って僕の唇にちゅうと吸い付いてくる。
…本当にマイペースな人だなぁ…総兄は…
唇を割って舌が入り込んでくるんで僕も舌を絡めると、じゅっと舌を吸われる…

「…総悟…?テメェ新ちゃんに何してくれてんだゴラァァァァァァ!!!!!」

妙姉の薙刀が振り降ろされ、僕らのすぐ横を風が過ぎる。
串刺しにされなかったのは、総兄の恐るべき反射神経のおかげだよね…僕も一緒に連れて逃げてくれなかったら、ヤバい所だったよ…
総兄が僕を横抱きにしてするりするりと逃げ回るんで、落とされないようにぎゅうっと首に掴まると、妙姉の纏う空気が更に怖いものになる。
なんでー!?

「新ちゃん…?そのゴミ虫から離れなさい?」

「新八は俺の方が好きなんでィ!」

「えっ!?ちょ…」

二人が本気でぶつかりそうになってるぅーっ!!
家が壊れるぅーっ!!!!!
なんとか僕が止めようと総兄にしがみつくと、ふわりと空気が変わる。

「まぁ、総ちゃんも妙ちゃんも朝から仲良しね?」

うふふ…と呑気な笑い声が二人の殺気を打ち消してくれる。
この声は…

「ミツ姉っ!おはようございます!!」

「おはよう新ちゃん。三人とも何時まで経ってもご飯食べに来ないんだもの、待ちくたびれちゃったわ。」

ミツ姉は沖田家の長女で今は家長だから流石の二人も逆らえない。
それ以前にミツ姉の事大好きだから、逆らう気も無い。
ミツ姉…ミツバ姉さんは、父上と母上が亡くなってバラバラにされそうな僕ら姉弟を、一人で育ててくれた偉大な人だ。
ミツバ姉さんだって、まだ子供だったのに…それでもミツバ姉さんは頑張ってくれた。
今僕達が皆一緒に暮らせてるのは、全部ミツバ姉さんのおかげなんだ。

「ごめんなさい…だって総が…」

「妙がイキナリ襲いかかってきたんです!」

ミツ姉に嫌われないようにって、総兄も妙姉も言い訳を始めるけど…ミツ姉は全部ちゃんと分かってるんだ。

「二人とも仲良しなのは良いけど新ちゃんのお部屋汚しちゃ駄目よ?メッ!」

「「…ごめんなさい…」」

「はい、解ればよろしい。さぁ、朝ご飯にしましょう?総ちゃんも新ちゃんも仕事に遅刻しますよ?」

ミツ姉の手を叩く音で一斉に動き出す。
僕と総兄は身支度を整えて、妙姉はミツ姉の手伝いをして食卓に着く。
…今日も真っ赤だぁ…
ミツ姉は綺麗で優しくて、最高の姉上だけど…料理だけは…料理だけは激辛なんだ…

「いただきます。」

「「「いただきます!」」」

ミツ姉の声を合図に、真っ赤な朝ご飯を食べ始める…
うーっ…やっぱり辛いよ…
涙目になりながらも頑張って食べていると、横からするっと手が伸びてくる。

「新八のおかずもーらい!」

総兄は、そう言っていつも僕のおかずを半分ぐらい持って行ってくれる。
さりげなく優しいから、どんな事されても憎めないんだよ…
今ばっかりはそれが分かってるから、いつもは総兄のやる事なす事怒る妙姉も怒らない。
ミツ姉にはバレないように、二人ともさりげなく僕を助けてくれるんだ。
だって折角のミツ姉のご飯だから…辛くったって食べたいから…

「もう、総ちゃんったらお行儀悪いわよ?」

「新八がトロいから駄目なんです!」

ミツ姉に怒られても、総兄は僕とミツ姉を護ってくれる。
妙姉も、全部分かってて黙っていてくれる。
ミツ姉だって本気で怒ってる訳じゃない。

皆優しくて…僕はそんな家族が大好きです!



朝ご飯を終えて、僕と総兄は仕事に向かう。
ミツ姉と妙姉に見送られて家を後にして、僕の仕事場まで総兄と一緒に向かう。
総兄は通勤途中だから、って言うけれど、本当は僕を送ってくれてるんだよね…ちょっと過保護かな、って思うけど…
それで皆が安心するんなら良いか、って思う。

「んじゃ、気を付けて行ってきなせェ。」

「なんでだよ、気をつけるのは総兄だろ…」

「イヤイヤ、万事屋の旦那には気を付けなせェ。イヤらしい事されそうになったらチャイナに助けを求めるんですぜ?」

「何でだよっ!?銀さんはそんな事しないし…大体僕男だよ?」

「いんや、あの人ァ危ねェ。ちゃんと気をつけなせェ。」

僕の仕事場万事屋の前に着くと、そんな事を言って総兄が笑って僕の頭を撫でる。
僕が背伸びしてちゅうとキスすると、手を振りながら走って行ってしまう…
そんな光景を毎日見てても…毎日不安になる。総兄の仕事は、それだけ危険な仕事だから。
今日も総兄が、ちゃんと家に帰ってきますように…
そう祈りながら、僕は万事屋への階段をのぼった。



「おはようございまーす。」

「お〜う」

「おはようネ。」

僕がいつものように、挨拶をしながら万事屋に入っていくと、いつもは寝ているはずの二人が起きてすっかり支度を整えていた。
…珍しい事も有るもんだな…

「どうしたんですか?二人とも…」

「今日はティッシュ配りの仕事が入ったんだ。出掛けんぞ〜」

あぁ、僕が帰った後に仕事入ったのか…起こしてもいないのに起きてるなんて、びっくりした。
銀さんについて仕事場に向かうと、そこは…

「って!かまっこかよっ!?」

「パチ恵文句言うなヨ!これでお茶漬けサラサラ出来るネ!」

「そぉ〜よぉ〜贅沢は言いっこなしよぉ〜?パチ恵〜」

…確かに贅沢は言ってらんないよな…
総兄と妙姉のお給料だけでなんとか生活は出来てるけど…僕だってちゃんと家計費入れたいし!

「行くわよ〜、パチ恵、グラ子!」

「はい!」

パー子の衣装でなんだか張り切ってる銀さんを先頭に、僕らは街へ繰り出した。