沖田さんに見送られて万事屋に入っていくと、銀さんと神楽ちゃんがひどく驚いた顔で迎えてくれる。

「…何ですか…?」

「…新八…オマエ、背ぇ縮んだ…?」

「ワタシと同じくらいネ!」

駆け寄ってきた神楽ちゃんが、こつん、とおでこをぶつけるけど、まだ少しだけ僕の方が大きいし!

「僕の方がまだ大きいよ!それより大変だったんですよ!!山崎さんから貰ったジュースを飲んだら僕、女の子になっちゃって…襲われそうになった所を沖田さんに助けてもらって…」

「はぁ!?」

素っ頓狂な声を出した銀さんが呆然と僕を見て、後ろから神楽ちゃんが僕の胸を揉む…ってギャァァァァァァッ!!!

「かっ…神楽ちゃん何すんのっ!!」

「…新八のクセに生意気な乳ネ…本物のマミーになったアル…」

ぐるりと僕を回して、今度は正面からぎゅっと抱きついてこられると…なんか…こう…すっごく愛しくなってきちゃうよ…娘ってこんな感じ…?
ってちょっと待て!!まさかコレ…母性本能とかなんとかいうヤツじゃ…
たっ…大変だ!!心まで女の子になったら取り返しがつかないっ!!

「神楽ちゃんっ!ちょっ…離れて!!」

「なんでダヨー…あ、新八感じちゃったアルカ?エロいねぇ〜お嬢ちゃん…」

「そんな訳有るかっ!!」

ニヤニヤ笑ってとんでも無い事を言う神楽ちゃんを押しのけて前に出ると、顔を赤くした銀さんが僕の肩に手を回す。
なっ…何だ!?

「何ですか!?」

「いやぁ…なんか悪ぃな〜と思って…俺の為に女の子になってくれた感じじゃん、コレ。マジで万事屋家族になっちゃう?嫁になっちゃう?」

「なりませんっ!もう1人娘が出来たと思って下さい!!」

肩に回された手を叩き落として距離をとる。
なんか…ショックだ…僕にまで手を出すなんて…そんなに飢えてるのか!?銀さん…
あ!沖田さんが言ってたのってこういう事だったのか…沖田さんは銀さんと結構仲良しみたいだから知ってたのか…
良かった、聞いてて。いつものつもりで居たら、大変な事になったかもしれないよ!
沖田さんも…心配してくれたのかな…僕の事…
そう想うとなんだか顔が赤くなる…

「も〜、新ちゃんのツンデレ!でもやっぱ赤くなっちゃうんだ〜銀さんはいつでもおっけ〜だゾ!」

「喧しい、黙れマダオ。」

そう言いつつ神楽ちゃんの後ろに避難すると、バッと手を広げて僕を護ってくれる。
2人の睨み合いで一瞬も気を抜け無いってのに、ぴんぽ〜ん、と呑気に万事屋のチャイムが鳴る。

「邪魔するぜ。」

「お邪魔するよ。」

ドタドタと足音が響いて、黒服がなだれ込んでくる…沖田さん…?
助けに来てくれたのか、なんて一瞬想ってしまったけど、それは土方さんと伊東さんだった…
なんでだろ…凄くガッカリしてるよ、僕…

「あの…何か御用で…?」

突然の乱入で睨み合いを止めた銀さんと神楽ちゃんが2人を無視していつもの位置に戻るんで、僕が2人に話しかける。
と、まじまじと僕を見た2人が大きな溜息を吐く。

「…やっぱり女になっちまってんのか…」

「…可憐だ…」

えっ…?何かやな予感…

「山崎がすまない事をした。部下の尻拭いは上司である俺がしてやる。新八、俺の嫁に来い。」

土方さんが真面目な顔で僕にバサリと何かを渡す。
赤い…花束…?…じゃない!マヨネーズのキャップか!?マヨネーズの束か!?

「何スかコレぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?こんなモノより男に戻せぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

ポッと頬を染めて、ちらっちらっとこっちを見てる土方さんにマヨ束を叩き返す。ダメだこの人っ!!
伊東さんならまともに話をしてくれるよな!きっと…
そう思ってジッと見ると、伊東さんが頬を染めてすまなそうな顔をする。
…何故手を握る必要が…?

「新八君、残念だが君が飲んだ薬は天人が偶然発見した薬でね…今の所男に戻れる方法は無いんだ…」

…まさか…この人も…?

「部下の不始末は誰かが償わなければいけない。本来なら局長の近藤さんが償う所なのだが…彼には好いた女性が居るからね。だから代わりに僕が君の一生を護ろうじゃないか。」

キリッ、って感じでキメ顔されても…

「だーから、それは副長である俺の役目だろ。」

「何時死ぬか判らん男に新八君が任せられるか!」

お2人が言い合いを始めたけど…僕の意見は無視ですか…?

「あのー…」

「おうおう、オメーラ勝手に新八貰う気でいるなヨ!新八はワタシのマミーネ!!」

「チンピラ警察はお呼びじゃね〜んだよ!新八は万事屋の嫁なんだよ!つまり俺のなんだよ!!」

…神楽ちゃんと銀さんも勝手な事言ってるよ…
ギリギリと4人が睨み合いをしているのを遠くから眺めていると、後ろからするっと抱きつかれる…って誰っ!?

「あー、ホントに女になってるヨ、新八。」

呑気な声出してるけど、手つきがエロいっ!
ってか、何でこの人が…っ…!?

「もう、新八ってば俺の為に女のコになったなんて可愛いネ!」

ぎゅーっと抱きしめられると、痛いっ!!痛いっ!!!
この人力加減を知らないよっ!!

「ちょっ!痛いです神威さんっ!!」

「…新八離せや…」

その腕から逃れようと暴れると、後ろからスッと刀が付きつけられる。
僕が暴れてたからって…神威さんの後ろをとれるなんて…誰…?

「あ!馬鹿兄貴!?何しに来たネ!?」

僕が確認する間もなく神楽ちゃんが飛びかかってきて、神威さんが僕を離してくれる…と思ったらぐるんと回されて後ろを向かされる…
って!!高杉さんんんんん!?何でこんな所に…!?
あわあわとしながらも、逃げようと振り返ると至近距離に人がっ!?

「おお!本当に女子になっている…可愛いぞ、新八君。」

桂さんんんんっ!?
あ、エリザベス先輩も『可愛い』って看板出してくれてる…って!!
いやあの、この人達今ここに居ちゃヤバいんじゃ…

「おー、新八君可愛いぜよ!ワシの嫁になってくれるがか?」

坂本さん!?
ってかなんで皆僕が女の子になったって知ってるんだ!?

「ちょっ…皆さん何で僕が女の子になったって知ってるんですかっ!?」

「かんぱにーの情報力舐めたらあかんぜよ〜」

目茶苦茶得意気に坂本さんが胸を張る。
怖ぇーよ!カンパニー怖ぇよ!!!

「丁度良い…桂…高杉…」

「お縄について貰いましょう…」

いつの間にか桂さんの後ろに土方さんが、高杉さんの後ろに伊東さんが忍び寄っていた。
真選組の2人、静かだと思ったんだ…
でも、捕物になったら僕の事なんか忘れてくれるよな!
桂さん達には悪いけど、ここは捕まってもらわなくっちゃ…

ほっと一息吐くと、ひゅるるるる…と音がする…アレ…?この音…