犬も喰わねェ訳はねェ
もうすぐ4時。大江戸ストアのタイムセールの時間だ。
この時間には必ずアイツが…新八くんが大江戸ストアに現れる。
だから俺ァ、毎日必ずこの時間には見廻りにかこつけて大江戸ストアの前を通りかかる事にしている。
だって、それぐれェしか逢えねェから…惚れたヤツには毎日逢いてェだろィ?
今日は大荷物なのか少ないのか。
少なかったら団子屋にでも誘おうか…
大荷物なら、万事屋まで荷物持ってやりやしょう。
そしたらきっと、俺にもあの綺麗な笑顔、くれやすよね…?
そんな事考えながらウロウロしてっと、買い物を終えた新八くんが現れる。
今日も可愛いねィ。
お、今日は荷物が少ねェぞ。
よし、団子屋に誘って…
俺が心を決めて歩み寄ると、新八くんの隣に何か黒いモンが有る…山崎…?
土方さんにパシらされたのか、両手にはち切れんばかりのマヨネーズの袋を持って、それでも嬉しそうにニヤニヤ笑いながら新八くんに何か話しかけてやがる…
新八くんも新八くんでィ!
何でそんなヤツと楽しげに話なんかしてんでィ!?
そんな、にこにこ笑ってんじゃねェよ!!
ちょっと頬なんか染めちまって…可愛いんだよ!!
そんな顔…山崎には見せてんだ…
…俺にはそんな笑顔、くれねェくせに…
イライラが腹の中に渦巻いて堪らねェ。
こんなん、ただ黙って見てるなんて俺らしくねェ。
欲しいモンは、奪ってでもこの手に掴んでやらァ…
そのまま速度を上げて二人に近付いて、新八くんに、話しかける。
「よう、眼鏡くん。今日は荷物少ないねィ…やっぱ仕事無いんで?」
精一杯にこりと笑いかけたってのに、新八くんの顔が歪む。
頭に怒りのマークが見えそうでィ。
「余計なお世話です沖田さん。大体僕はメガネじゃないですから。志村新八って立派な名前が有るんです!!…って何回言わせりゃ気が済むんだよこのドSプリンス!!」
…怒鳴られた…
この後まだ続きが有るってェのに、新八くんは短腹だねィ。
「新八君巧い!…って沖田隊長、笑顔が企んでますよ…?」
山崎が何か言ってるけど無視だ無視。
俺の爽やかな王子スマイルに文句付けてんじゃねェや!
「おやおや、俺の事『王子様』だなんて、眼鏡くんは俺に惚れてんで?」
「なっ…何でだよ!?ぼっ…僕は男ですから!!ちょっと山崎さん!!」
ビクリと震えた新八くんが、真っ赤になった…
何でィ、もしかして脈有りなんですかねィ…?
ちょっとだけ気分が浮上したってのに、新八くんは山崎なんかに俺の文句を言ってやがる。
こんな近い距離に居るってのに、ボソボソ喋ってる内容は全然聞こえねェ。
真っ赤な顔で涙まで浮かべて、山崎に小声で文句を言ってる姿は凄ェ可愛い。
それを山崎が宥めてやがる…あ!頭触った!!
屯所に帰ったら…覚えてろィ…
俺一人がイライラモヤモヤしてんのに、次第に新八くんの機嫌は直って又二人が楽しそうに話しだす。
でも…俺は蚊帳の外で…
…凄ェ、アウェイ感満載でィ…
あー、畜生…又イライラが腹ん中に溜まって来やがる…
新八くんはたまにチラリと俺の方を向くけど、目が合ったらすぐに逸らされる。
…何なんでィ…
俺ァ…怖がられてんのかねィ…
いっつもまともに話なんざしてねェけど…こんなんは無かったよな…?
挨拶の後に話す時も、怖がってなんかいなかった筈でィ。
まぁ、新八くんは俺のボケに突っ込んでるだけだけどな。
…ってか二人、近過ぎねェか!?
俺に聞かれちゃマズイ悪口言ってるにしたって、そりゃぁ近過ぎだろ!?
耳打ちとかしてんじゃねェよ!!
思わず手が出て、新八くんをグイッと俺の方に引き寄せる。
とすん、と俺の胸にぶつかった瞬間、ふわりと石鹸の良い匂いがした。
そのまま引きずって団子屋に…と思うのに、体が動かねェ…
何やってんでィ!俺のヘタレ!!
「なっ…なっなっなっ…何ですかぁぁっ!?」
あ…更に赤くなった…
新八くん…本当に俺の事好きなんじゃね?
「…近過ぎでィ…オメェらデキてんですかィ?」
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