強気なあのコは誰のモノ?
俺は最近、毎日この時間、この公園のベンチで昼寝をしている。
不思議な事に、この時間だけは土方も俺を探しに来ない。
らしくねェけど、俺が愛しいあのコに逢ってる、ってのを知ってて遠慮してくれてるのか?
なんだかんだ言っても、俺だって仕事はしてる。
そうそうあのコに逢いにばっかり行ってる訳じゃない。
それが判ってるから、土方だってこの時間だけは大目に見てくれてんのかもしれない。
流石にフォロ方って言われてるだけは有らァ。
…まぁ、山崎情報によると、土方もこの時間毎日何処かに出かけてる、って話だけどまぁそんな事はどうでも良い。
今日も俺はいつもの公園のベンチに寝転がって目を瞑る。
買い物帰りの愛しいあのコが、ちょっと怒りながらも嬉しそうに俺を起こしてくれるのが幸せで…
その時だけが、必ずあのコに逢える時間だから。
だから、何が有ろうとも、俺は此処に来るようにしている。
さぁ、もうすぐあのコが此処にやってくる時間だ。
俺はしっかり寝たフリをする。
今日は何をしてやろうか?
手なんか繋いじまったから…そろそろちゅーとか…しても良いんじゃねェかなァ…
この時間の公園は、あんまり人居ねェし…
やっちまっても、良いんじゃねェかな…?
心臓がドキドキと脈打ち始める頃、とてとてと可愛らしい足音が聞こえる。
あぁ…来た…
「もう、沖田さんっ!こんな所で寝てたら風邪ひいちゃいますよ?」
「こんぐらいで風邪なんかひきやせん。」
やっぱり可愛いや。
俺の事こんな心配してくれるなんざ、愛だねェ、愛。
やっぱり今日はちゅーを…
「こんなヤツ、風邪ひいて死ねばいいアル。」
早速抱き寄せて、ちゅーをしようと目を開けると、ソコには憎っくきチャイナ娘のツラ…
あー、気分悪ィ…
目覚めには新八くんの可愛い顔、って決まってんでィ!
思いっきり嫌な顔をしてもっかい眼を瞑ると、新八くんが俺に突っ込みを入れてくれる。
「ちょ!目、覚めたのに何で又眠るんだよっ!!」
「ぐー…目覚めには新八君の顔、って俺は決めてんでィ…ぐー…チャイナのツラなんざ見た日には、気色悪くて永遠の眠りについちまわァ…ぐー…」
俺が寝言風に言うと、新八くんはきっと顔を真っ赤にして怒るんだぜィ…
そんな顔も可愛い…
「ヒドイネ!ワタシ傷付いたヨー!!新八ぃー」
…そういやぁ居たんでしたっけねィ…チャイナ…
ワザとらしく泣き真似なんざしたからって、新八くんは俺の…
「酷いよね!僕、沖田さんがそんな事言う人だなんて思いませんでした…おいで、神楽ちゃん。」
なっ…!?
何か雲行きが怪しく…
思わず目を開けて起きあがると、新八くんがチャイナを抱きしめて俺を睨んでやがる…
そんな事有るのかィ!?
新八くんは俺の恋人だろィ!?
俺が呆然と二人を見ていると、チラリ、と俺を見たチャイナがムカつく顔でニヤリと笑う。
アイツ…やっぱりワザと泣き真似しやがったな…
「…チャイナ…テメェ…」
俺が殺気を叩きつけると、クスリと笑ったチャイナが、ワザとらしく怖がったように新八くんの後ろに隠れる。
んにゃろぅ…新八くんが甘やかすからって…図に乗りやがって…
そのまま一歩近付くと、新八くんがチャイナを背中に庇う。
…何ででィ…!
新八くんは俺よりチャイナの方が大事なのかよ…!?
「沖田さん酷いですよ…神楽ちゃん女の子なのに、顔の事けなすなんて…こんなに可愛いのにっ!」
ギッ、と睨まれると心が折れそうでさァ…
その上チャイナの頭まで撫でて…新八くん酷いでさァ…
俺だって、頭撫でられてェ!!
フラフラなまま新八くんに歩み寄ると、じりじりと下がっていかれる…
酷いでさァ…新八くん…俺は…お前さんの恋人じゃなかったんですかィ…?
俺が顔を歪めると、新八くんの表情が困ったものになる。
全部…全部チャイナのせいだ…
何で恋人である俺が、後回しにされなきゃいけねェんでィ!
チャイナばっかり甘やかされて…俺は怒られて…
ギシリ、と心が軋む。
俯いちまってた顔を上げると、慌ててチャイナが新八くんを後ろに庇う。
何でィ…まだ俺の邪魔するのかよ…
「ドSがキレたネ!新八は危ないからワタシの後ろに隠れてるネ!」
「いや、神楽ちゃんは僕が護るよ!」
…新八くん男らしいこって…
でも、気にくわねェ…俺が新八くんを傷付けるとでも思ってんのかよ…
まぁ、チャイナは殺っちまうかもしれねェけどな。
一瞬で距離を縮めて斬りかかると、生意気にもチャイナが傘で俺の刀を受け止める。
ギリギリとせめぎ合う俺達を…イヤ、違うな、チャイナを、おろおろと新八くんが心配してやがる…
マジで殺っちまおうかな、コノ女…
「テメー、ドS!新八が怪我したら殺すぞ、ガキィ…」
「馬鹿言うねィ。俺の大事なコにかすり傷一つも付ける訳ねェだろィ!!」
「ハァっ!?」
驚きでチャイナが怯んだ隙に、新八くんを腕に抱き込んでチャイナと距離を取る。
とっさの事で、新八くんもチャイナも反応出来ない。
やっと俺のペースに出来やした…
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