かぐや姫
むかしむかしある所に、大きな竹林が有りました。
その竹林には、白髪の男と2人の娘がなんとなく竹を売りながらダラダラと暮らしておりました。
「ちょっと銀さん?又だらだらとジャンプを読んでるんですか?そんな暇が有るんだったら、ちゃんと仕事をして私達を養って下さいよ。毎日卵焼きじゃ育ち盛りの神楽ちゃんの栄養が偏ってしまうわ。」
「アネゴ、ワタシは卵かけご飯でいいネ。銀ちゃんは甲斐性なしだからナ。」
「イヤイヤイヤ、俺はしっかり働いてるからね?竹取ってきて売りに行ってるし?ちゃんとお前ら育ててるし…」
「ちゃんと…?」
「ワタシ酢こんぶ食べたいネ!」
娘達が男を睨むと、その男、坂田銀時は慌てて竹林に出掛けて行きました。
ずっと1人で生きてきた彼にとって、竹林で出逢った2人の娘、妙と神楽は何物にも代えがたい大切な存在で、そして頭の上がらない存在でした。
ダラダラと良い竹を探して進んでいくと、奥の方から不思議な光が溢れてきました。
男は少し怖かったのですが、ビビりながらもその光の方に進んでゆきました。
すると、その奥にはまばゆく輝く1本の黄金の竹が有ったのです。
「なっ…何だコレ…でも、コイツは高く売れそうだな…」
ニヤニヤ笑いながら男がその竹を切ってみると、その中にはとても可愛らしい赤ん坊が居て、男を見た途端にっこりと笑いました。
男は驚きましたが、赤ん坊のあまりの可愛らしさにすぐにメロメロになって家に連れ帰りました。
家で迎えた娘2人も小さな赤ん坊が可愛くて仕方なく、すぐにメロメロになりました。
そして、その小さな赤ん坊を『新八』と名付け、大切に大切に育てるのです…
◆
それから3カ月。
不思議な事に小さかった赤ん坊は年頃の娘に育ちました。
その可憐さは留まる事を知らず、その噂は地を駆けて、新八を嫁に迎えようという男性は後を絶ちません。
しかし、新八の父と2人の姉達は一切の男を近付けず、夜這いになど来ようものならボコボコにして放り出して新八の純潔を守っておりました。
「もう!新ちゃんが可愛いからって、本当煩い男達ね!」
「そうアル!ワタシ達だって美少女ネ!」
「あ〜…ホラ、新八を好きになる男はアレだから…美少女を好きなのとはちょっと違うから…」
「あら銀さん、私達と新ちゃんのドコが違うのかしら…?」
妙の睨みはちびるほど怖かったのですが、ソコはちゃんとしておいた方が新八の為だろうと父は頑張りました。
「イヤ、だからさ…」
「姉上、父上を苛めるのは止めて下さい!大体、僕は男ですからっ!姉上達とは違いますっ!!」
きっぱりと言い切った所は非常に男らしいものだったのですが、その姿は美しくも可愛い姫のものでした。
そうです、あまりに可愛らしいその赤ん坊を、この家の者達は姫として育ててしまったのです。
「新八…知ってたのか…!?」
「当たり前だろうがボケ親父!もうこんな格好させるのは止めて下さい、姉上達…」
「だって新ちゃん可愛いんだもの…」
「そうアル。折角なんだから本物の女の子になれば良いネ。」
2人の姉がにっこりと美しい笑顔でそう言いますが、新八はやってくる男達に嘘を吐いているようで心苦しく思っていました。
「そんな訳にはいかないですよ…皆本気で僕をお嫁さんにしようと思ってくれてるのに…僕は男ですからっ!お嫁さんは無理ですからっ!」
「大丈夫よ新ちゃん。私達が変な男は近付けないから。」
「そうアル。貧乏人が新八を嫁にするなんてワタシが許さないアル。最低ライン、ウチよりは金持ちじゃ無いと駄目アル。」
「そ〜だな。ま、金持ちでも許さね〜けどな…帝レベルじゃね〜と。」
竹取りとしてダラダラと過ごしていた男の家は、新八を見付けてからすっかり変わったのです。
度々竹林に黄金に輝く竹が現れて、その竹の中には大判小判がたっぷりと詰まっているのです。
その為、坂田家は今や結構な金持ちになっておりました。
3人が強気に盛り上がっているのを新八は冷めた目で眺めておりました。
…誰が来ても、男って時点で駄目だけどね…
「帝レベルって…じゃぁ帝がウチに来たら僕をお嫁さんに出すつもりなんですか?」
ジロリと3人を睨みながら新八が言うと、鼻クソをほじりながら父が笑う。
「お〜、帝が来たらそりゃぁ仕方無いだろ。だって帝だもん。」
「イヤ、でも帝も僕も男ですからね?バレたら処刑されますよ!!」
「大丈夫、新ちゃんの可愛らしさならバレないわ!」
「そうアル。新八頑張れヨー」
2人の姉もにこにこと笑いながらそんな大それた事を言い出す始末。
新八は大きく息を吸って、心の底から突っ込みを入れた。
「そんなの良い訳無いだろうがァァァ!それに、僕は知ってるんだぞ?オマエら僕にかこつけて言い寄って来る馬鹿男達から貢ぎ物巻き上げてんだろうが!帝からも何か巻き上げるつもりかよ恐ろしいわ!!」
新八がそう叫ぶと、3人がそーっと目を逸らしました。
確かに、言い寄って来る男達の持ってくる貢ぎ物を、3人はこっそり頂いておりました。
甘い菓子や食べ物は父と次女の神楽が、ブランドバックや貴金属は長女の妙が。
「や〜、だって折角の気持ちなのに新八貰わないし…」
「どーせ返してもアイツら困るネ。ワタシ達が有効活用してるアル。」
「そうよ?駄目男達の気持ちぐらいは受け取ってあげないと可哀想じゃない。」
3人がそれぞれもっともらしい言い訳をしてきますが、新八には通じません。
「最低です、皆…」
新八の軽蔑のまなざしに、父はダラダラとおかしな汗を流しますが姉達はどこ吹く風、平気な顔をしておりました。
「とにかくっ!僕はもう皆さんに男だって言いますからっ!騙してるなんてうんざりです!!」
「「「えー?」」」
「えーっ、じゃありませんっ!もう僕、気を使い過ぎてハゲそうですからねっ!」
涙目でそう言う新八は可愛らしくて思わず笑ってしまいそうになる3人でしたが、ここで笑うと後々面倒くさそうなのでなんとか我慢しました。
「それは困るアル。」
「そうね。新ちゃんならバーコードでも可愛いとは思うけど…」
「しゃ〜ね〜な…」
ここまで言われたら、もう仕方が無いかと3人は貢ぎ物を諦める事にしました。
「で?バラすってどうすんだ?」
「それは僕に考えが有ります…」
◆
その晩も、懲りずに沢山の男達が貢ぎ物持参で新八の元にやってきました。
しかし、いつもならそれぞれの保護者に貢物を奪われて叩き返されていた男達が、今晩に限っては家の庭まで入れてもらえておりました。
何が有るのかと男達がソワソワしている所に、とても可愛らしい姫が現れました。
皆、一目見てその姫が自分達が逢いたかった新八姫だと分かり、一同にざわめきが広がりました。
「すみません…」
発した声も愛らしく、皆は更に新八への恋心を募らせます。
「皆さん、今日までお会いできずにすみませんでした。皆さんのお気持ちは有難いのですが…」
そう言ってそっと顔を伏せた後、思い切って顔を上げた新八姫は、ガバッと音を立てて自分の着物を剥ぎ取りました。
勿論その下には何もつけておらず、透き通るような綺麗な肌が皆の目に晒されました。
しかし、男達が期待したモノは、新八姫には有りませんでした。
その代わりに、姫の股間にはおなごには有り得ないモノがぶら下がっておりました。それも、結構立派なモノが…
「僕、男ですからっ!!」
辺りにそう新八の声が響き渡ると、我に返った男達はゾロゾロとその場から帰っていきました。
ソレを見送りながら、姉達は新八の着物を合わせます。
「もう、新ちゃんの綺麗な体を見せる事なんか全然無かったのに…」
「そうアル。アイツラの記憶全部消したいヨ!」
姉達はプリプリと怒っていますが、新八は逆に集まっていた男性達に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
「イエ、むしろあの人達も記憶を無くしたいと思ってると思いますけどね…」
新八が遠い目で前を見ると、全員居なくなっているであろう場所に、5人の男達が残っておりました。
あぁ、文句を言われるのだろうと、新八は彼らに向き直って深々と頭を下げました。
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