「…我の誘いを断るのか…?」
「…ワタシの事嫌いなの…?」
目が物騒になった2人がジリジリと僕らに近付いてくるけど、無視してソウゴ君と2人でハンバーグを囲む。
「凄い美味しそうだね?」
「うん!おれしんぱちにたべさせてあげる。はい、あーん!」
上手にひと口大にハンバーグを切ったソウゴ君が僕の口までハンバーグを運んでくれる。
かっわいいなぁ!
パクリとそれを食べると、久し振りの肉が沁みわたる…美味しいぃぃぃ!
「有難う、ソウゴ君。凄く美味しいよ?はい、ソウゴ君も食べよう?」
今度は僕が箸でハンバーグをソウゴ君の口までもっていくと、一生懸命大きな口を開けてそれを頬張る。
「おいひい!ひんぴゃちぎゃたびぇさしぇてくりぇたから、もっとおいひい!」
「食べてからお喋りしようね?」
ソウゴ君が大きく頷くんで、嬉しくなってもっと食べてもらおうとハンバーグを掴むと、無理矢理首を反対に向けられる。
ちょ!首グキッて言った!グキッて!!
「ソウゴずるいよ!新八、ワタシのも食べて?」
はい、と上目遣いで僕を見るソウシさんは可愛過ぎて、心臓がバクバクと暴走を始める。
あ〜ん、と差し出されたハンバーグは、なんか甘い気がする…
「美味しいです、ソウシさん…」
僕がそう言って笑うと、とても嬉しそうに笑う顔から目が離せない。
かっ…可愛過ぎるよ!!
「…むぅ…我は出遅れたのだな…ならば…」
にっこりと僕に微笑みかけたカイザーさんが、おもむろにハンバーグを食べ始めた。
何だろ…?お腹空いてたのかな…?
もぐもぐとイッキにハンバーグを食べていく姿まで格好良い。
でも、ほっぺた一杯に詰め込んでる顔は可愛いなんて反則だ。
くすくすと思わず笑ってしまった僕を、全部口の中に納めたカイザーさんがジッと見る。
あ…笑っちゃったら失礼だったかな…
「ごめんなさ…」
僕が謝ると同時にカイザーさんが近付いて来て、そして、僕の肩をガッシリと掴んで、イケメン面が近付いてきたと思ったら口移しでハンバーグを僕の口の中に入れて来た!?
なっ…どんだけ器用に動くんだよこの人の舌っ!?
「ぅむーっ!んーっ!!んーーっ!!!」
「あ、ズルぅい!ワタシもワタシもー!!」
「おれもー!」
…3人に滅茶苦茶にされた僕は、お腹は一杯になったけど、心は枯れ果てた…
江戸案内なんてチョロイ、ぐらいに思ってたけど…僕にはもう無理かも…ってか本当に江戸案内?
ってか沖田さんは何時になったら来るんだ…?
「てめーらァ!何しやがんでィ!!俺を監禁するなんざ、良い度胸でさァ!!流石俺!!」
突如ファミレスに響き渡ったのは、天下の真選組一番隊隊長の怒鳴り声で。
今日僕が呼びだされていた筈の人だ。
意味不明の事を叫んでるけど、突っ込んでなんかやらない。
兎に角とっとと用事を終わらせて欲しいよ…お客さん皆出て行っちゃうし…
「あ、オリジナル。あのトラップを抜けてくるなんて中々やるじゃん。」
「あの程度の罠やっと抜けてきたのか?遅いぞ。」
「なんだー、でてきちゃった、おとしあな。」
3人がおかしな事を言ってヤレヤレと肩をすくめる。
遠い目のまま声のした方を見ると、いつもの隊服姿に手錠と縄を絡めて髪をボサボサに乱した沖田さん…え…?なんか、所々焦げてない?折角の綺麗な顔も手も傷だらけだし…仕事…だったのかな…?
「…沖田さん…?」
「しんっ…志村くん…来てくれたんで…?」
ひどく意外そうで、心の底から安心したような沖田さんを可愛いと思うなんて失礼だな。
でも、そんな顔初めて見たし…なんか、ソウゴ君みたいで…
「そりゃぁ…来ますよ…万事屋は買収されたし、姉上も…」
「皆応援してくれたんですかィ?足止めにしかならねェと思ってやした…」
そう言って、にっこりと微笑む顔に僕の心臓は又暴走を始める。
ソウシさんみたいに綺麗な笑顔…
「何なんですか?皆を僕に注意しろとかの苦情ですか?それは無理です。それとも僕に仕事の依頼ですか?親戚の方達の案内とか?」
「イヤ、そんなんじゃ無くって…ですねィ…」
背筋を正してきちんと僕に向きあう立ち姿は、カイザーさんみたいに格好良い。
うわ…心臓がおかしい…
なんでこんなにドキドキと騒ぐんだよ…
「俺ァ今日、しん…っ志村くんとお近づきになろうと思って呼び出させてもらいやした。」
「お近づき…?」
「そうでさァ…俺ァ…しんっ…志村くんが…」
物凄く真剣な目で僕だけを見つめる沖田さん…
暴走する僕の心臓の音が煩く耳に響く。
それに…さっきから気になって仕様がない。
呼ぶならちゃんと呼べよ…気になるんだよ…
「だからぁ、ワタシは新八の事が好きって事。恋人になろ?」
「そんなのずるいよ!しんぱちはおれのおよめさんになるんだい!」
「我の妃になれ、新八。」
それまで黙って沖田さんの行動を見守ってた沖田一族が、何か言いかけてた沖田さんを押しつぶしておかしな事を言い始める。
イヤ、ソウシさんはおかしくは無いけど…カイザーさんとソウゴ君はおかしいだろ。
「イヤイヤイヤ、無理ですから。妃とかお嫁さんは無理ですから。」
がっかりと肩を落とす2人は可哀想だけど、僕男だし。
「やりぃ!じゃぁワタシの恋人だね!」
「いやあのそれもちょっと…」
ぎゅうっと抱き付いてくるソウシさん、何か良い匂いする…って流されないぞ!!
何かこの人ヤバい気がする!ヤバい気がするっ!!
なんとか逃れようと腕を押してみると、すっげぇ柔らけぇぇぇぇぇ!
なっ…なんか流されても良いかな…
僕がそんな事思い始めた時、カイザーさんとソウゴ君を飛ばして沖田さんが復活する。
「オメェら好き勝手言ってんじゃねェ!!新八くんは俺んでィ!!今から告白するから邪魔すんじゃねェよ!!」
………あ、やっと呼んだ………
ってか、今とんでも無い事言ったんじゃないのか?沖田さん…
え…?告白…って…
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?おっ…沖田さん…?」
「あ…」
それだけ言って固まっちゃったけど、目が…僕から離れない…
それに、短い付き合いだけど、そんな沖田さんの表情は見た事が無い…凄い真剣…
本気…なんだ…?
「ね?あんなヘタレ放っといてワタシにしなよ。」
ソウシさんが僕の腕に掴まってくる。
「おれのほうがしょうらいせいあるよ?」
ソウゴくんが僕の袴に掴まってくる。
「我は皇帝。妃になって一緒にこの国を総べようぞ。」
カイザーさんが後ろから僕を抱きしめる。
なっ…何が…?
何で僕沖田一族にモテモテ…?
「あっ…あのっ!何で僕…?皆さんとは今日会ったばかりだし、沖田さんとだってまともに話した事なんか…」
「ワタシはずっと見てたよ?新八の事、オリジナルの中から。話した事無いのなんて、オリジナルがヘタレで話し掛けられなかっただけじゃん。」
「おれもみてたよ?ずーっとかたおもいしてたんだ。」
「我らは自分に正直だからな。オリジナルが言えない事も、君に伝えられる。」
この人達が何を言ってるのか分からない…
え?さっきから言ってる『オリジナル』って何?
中から、ってどう言う事?
ってか僕ものっ凄く熱烈な告白されてない?
頭がグルグルし始めたと思ったら、グイッと手を引かれて今度は沖田さんの腕の中に囲まれる
…ってかコレ抱きしめられてる!?
おっ…男は嫌………でもないのは何でだ…?
「煩ェ!オメェらさっさと消えやがれ!!」
「「「はぁ?」」」
怖い目になった3人が3人とも、僕を上手に避けて沖田さんを攻撃し始める。
カイザーさんは勿論の事、ソウシさんの剣さばきも見事だし、ソウゴ君までもがいっぱしの剣豪だ。
どうなってんだ!沖田一族!?
うわぁ!もうファミレスが破壊されるっ!!
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