※電波注意
イシンデンシン
万事屋での家事も一段落した午後3時。
いつもこの時間の万事屋には、お茶菓子持参で真選組の沖田さんがやってくる。
万事屋には、僕が居るから。
なんだかんだ言いつつも銀さんも神楽ちゃんも沖田さんがやってくるのに慣れ始めてて、文句を言い合いながらも4人で楽しくお茶の時間を過ごしている。
でも、今日は違う。
沖田さんは珍しくお仕事だから。
攘夷浪士のアジトに踏み込んで、今まさに斬り合いが始まっているのだから。
「新八ぃー、今日はドS来ないアルか?」
「糖分無ぇの〜?」
ソファに座ってだらだらしながらも、2人は寂しいのかそんな事言ってくる。
真選組には良い感情を持って無い2人だけど、ここ最近は沖田さんの餌付作戦が効いているのかちょっとだけ大人しい。
会えないと寂しいとか思ってくれてるのかな?
それともただ単にお菓子が無いから?
僕としては、寂しいと思ってくれてると嬉しいんだけどな…だって僕と沖田さんは2人で1人なんだから。
僕の大切な人達には、僕と同じように沖田さんを大切だって思って欲しいし、沖田さんの大切な人達にも沖田さんと同じくらいに僕を想って欲しい。
もちろん僕達はお互いにそう想ってる。
沖田さんは仲が悪かった万事屋にだって、ちゃんとお土産持って来てくれてるでしょ?
神楽ちゃんとの喧嘩だってしなくなったし、銀さんに糖分与えたりもしてるもの。
勿論僕だって近藤さんの侵入を笑って迎えられるようになったし、土方さんにはちょっと歪んだ愛情を注いでる。
「沖田さんは今日は来ませんよ?だって今お仕事中ですもん。」
目を瞑ると沖田さんが見ているモノが僕の頭にも浮かぶ。
うん、こっそり潜入して…あ…もう!又無茶してる…
「今丁度攘夷浪士斬ってるんで…今日は無理っぽいですね。」
僕がそう説明してあげると、銀さんと神楽ちゃんがおかしな表情をする。
なんだろう…姉上もそんな表情したよな…
「…新八…?」
「おいおいお前随分詳しいじゃん。沖田君もそういう機密事項漏らしちゃ駄目なんじゃね?」
なんとか引きつった笑いを浮かべながら銀さんが冗談っぽく言うけど…
「沖田さんはそんな事僕に言いませんよ?」
「は?じゃぁ何で新八がそんな事情知ってんだ?」
「ゴリかマヨにでも聞いたアルか?新八最近アイツらとも仲良しネ…」
神楽ちゃんまでそんな難しい顔して…
「近藤さんや土方さんがそんな大切な事言う訳無いじゃないですか。あのね、神楽ちゃん。僕と沖田さんはそんな事話さなくたっていつも見てるモノは一緒なんだから。」
僕が胸を張ってそう言うと、2人の顔がもっとおかしなモノになる。
あれ?僕何かおかしな事言ったっけ?
「…新八どうしたネ…」
「ちょっと新八君何言ってんの…?そんなにいつも一緒に居んの?沖田君と…まさかおまえら付き合ってたりとか…」
銀さん物凄い汗。
つきあう、って…あぁ、恋人か、って事かな?
「僕と沖田さんが恋人か、って事ですか?」
僕が確認すると、銀さんが恐る恐る頷いた。
神楽ちゃんは泣きそうな顔で僕を見てる。
「そんな事有る訳無いじゃないですか!僕ら男同士ですよ?」
微笑んで言うと、2人があからさまにホッとする。
とんでもない誤解だよ!
僕らの関係がそんなちっぽけなモノだなんて。
「僕と沖田さんは同じ魂を持ってる、って言うか…片翼ずつ持ち寄ってこの世に生れて来た2人で1人の生き物なんです。だから僕は沖田さんがどこで何をしてても全部感じる事が出来るんです。勿論僕が沖田さんを感じるように、沖田さんは僕の事全部分かります。だって同じモノを見て同じように感じてるんですもん。」
「新八…?」
「オマエ何言ってるネ!妄想も大概にするヨロシ!」
なんだろう?
何で銀さんも神楽ちゃんもそんな目で僕を見るんだろう?
あぁ、2人にはまだそういう人が居ないんだから分からないんだよね、可哀想な人達。
僕だって沖田さんに逢ったばかりの時はそんな事考えもしなかったもんね。
「早く2人にもそういう人が現れると良いですね。」
うふふと笑って神楽ちゃんの頭を撫でると、驚いたように僕の手を弾き飛ばす神楽ちゃん。
何でそんなにビクビクしてるんだい?
あぁ、おやつが無くってイライラしてるのかな?
なにかコソコソと話し始めた2人を居間に残して、僕は台所に向かう。
朝のうちに沖田さんが買って持たせてくれた串団子を用意して、お茶を入れて2人の元に戻る。
「ほら、おやつ有りますから安心して下さい?朝のうちに沖田さんが…」
『新八ィ…』
僕がお盆を机に乗せた時、沖田さんの声が聞こえた。
すぐに意識を沖田さんの方に向ける。
その途端、僕の肩からお腹にかけてが酷く熱くなる。
そしてすぐに襲ってくる激痛。
僕の身体から、鮮血が飛び散った…
「新八っ!?おまえ…一体何が!?」
「新八ぃ!新八ぃぃぃっ!!」
お…きたさん…
おきたさんが…
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