ジリリリリリ…
「ぱちえー!朝アル起きるネー!!」
めざまし時計の音がひびく中、何かが私の顔をぽふぽふとたたく…やわらかくて…きもちいい…
「チコクするヨー?」
………ちこく………遅刻………?
ガバッと布団から起き上がってめざまし時計を見ると、起きる時間をもう過ぎてるよォォォ!!
「カグラちゃん起こしてくれてありがとう!」
「気にすんなヨ、酢こんぶで手をうつアル。」
わたし坂田ぱちえ、銀魂小学校に通う小学4年生。
好きな科目は美術と音楽で苦手な科目は算数の、とりあえず元気がとりえの女の子です。
「じゃぁ帰りに酢こんぶ買ってくるね!」
「おう!いってらっしゃいヨー」
「いってきます!」
ぱたぱたと飛びまわって見送ってくれるのは、私がおかしなことに巻き込まれた原因のカグラちゃん。
本当は『ショウヨウカード』の封印の獣ヤト・カグヤ・カグラっていうお名前なんだけど、カグラちゃんって呼び方の方が可愛いよね?
今は力が足りなくて羽がはえたウサギさんのぬいぐるみの姿になっているけど、真の姿はばっきゅんぼんなナイスバディなんだって。ちょっと想像つかないよねー?
バタバタと大急ぎで階段を下りて行くとそこにはもうお兄ちゃんがいて、マヨネーズてんこ盛りの朝ご飯を食べていた。
「おはよう!」
「朝から何バタバタ暴れてんだ。マヨ足りないんじゃねぇのか?ホラ。」
真面目な顔で業務用マヨネーズを差し出してくるけど私そんなの食べられないよ!!
「いらないもん!」
「遠慮すんな。」
「えんりょしてないもんんん!」
このマヨラーなのが十四郎お兄ちゃん、小学校のすぐ隣に建っている真選高校の2年生。
怖い顔で瞳孔が全開で全世界の生き物がマヨネーズ大好きだと思ってるちょっと困ったお兄ちゃんなんだ…
「朝からうるせーぞガキども…ププッ…」
「笑ってんじゃねぇよクソ天パ!俺だってこんな配役納得してねぇよ!!」
寝間着がわりの甚平姿で銀色のくるくる天然パーマをかきながら私の朝ご飯を持って現れたのは、お父さんの銀時さん。銀魂高校で国語の先生をしているの。
いつもダラダラしてて死んだ魚の目をしたマダオって言われてるけど、イザという時はきらめくんだって。
でもね、本当はテレ屋で優しくて頼りになるお父さんだって知ってるから、私は大好きなんだ。
お兄ちゃんとはいつもケンカしてるけど、本当は仲良し…なんだよね…?
お母さんは私が小さいときに亡くなったの。まだ3つのときだからあんまり覚えてないんだ…
でも、家にはいっぱい写真がかざってあるから忘れる事はないんだ!美人でしょ?綾乃さんって言うんだよ?
「ごちそーさん。」
あ、お兄ちゃんがご飯を食べ終わっちゃった!急がないと…
あわてて残りのご飯を口に詰め込んで私も席を立つ。
「オイオイぱちえ、大丈夫かよ…」
「らいじょうぶ!」
お父さんが心配してくれるけど、これだけはゆずれないの!
ドンドンと胸をたたいてご飯を飲み込んで、走って玄関にいるお兄ちゃんを追い掛けるとあきれたような顔をむけられてしまったよ…
「オマエはもう少し遅くても大丈夫だろ…」
「だって…」
お兄ちゃんと一緒じゃなきゃあの人に会えないもん!
スタスタと歩いて行っちゃうお兄ちゃんを小走りで追いかけていると、少し先にキラキラの笑顔で手を振る姿が…きゃー!
「おはよう、トシ、ぱちえちゃん。」
「よお。」
「おはようございます光葉さん!」
このキレイなヒトは月田光葉さん、お兄ちゃんと同じクラスの高校2年生。
瞳孔でマヨラーなお兄ちゃんのお友達だなんて信じられないくらい、優しくてステキな人なんだー!
そう!この人が私がいそいでお兄ちゃんについてくる理由なの。
光葉さんに会いたいから、がんばってお兄ちゃんについてきてるんだ!いっつも時間も足も速くて大変なんだけど…
でもね、光葉さんと会えたらもうだいじょうぶなの!光葉さんはワザと私に合わせてゆっくり歩いてくれるんだもん…大好き!!
光葉さんとの時間はいつも楽しくて、私の学校の事とかをお話してるうちにすぐに小学校に着いてしまった…もっとお話ししたかったのになぁ…
「じゃぁぱちえちゃん、またね。」
すごくすごくキレイな笑顔と一緒に私の手の中にキャンディが落ちてくる。
わ…!
私が顔を上げたときには、もう光葉さんは手を振って行ってしまっていたけど…やっぱりステキィィィ!!
「別れ際にプレゼントとは…やるわね…」
「わぁっ!?たっ…妙ちゃん…!?」
うふふと上品に笑いながらもギラリと目を光らせて隣に立ったのは、私のクラスメイトで1番のお友達の志村妙ちゃん。頭が良くて美人で大きな会社の社長さんのお嬢様なの。その上優しくてとっても良い子なんだよ!私が『ショウヨウカード』を集めてるのも知ってていろいろ協力してくれるんだけど…
「おはようぱちえちゃん。今日もカードを集めに行くのかしら?」
「おはよう妙ちゃん。うーんどうだろう…カードの気配がしないと行かないから…」
私もカグラちゃんもまだ力が足りなくて自分からカードの場所を捜せないからなぁ…
うーん、と首をかしげると、妙ちゃんがにっこり笑ってカメラを構える。
「行く時は私にも声をかけてね?次もぜひビデオにとらせて下さいな。」
すごくキレイに笑ってるけど…なんだかイヤーな感じがするよ…
「もちろんその時はぱちえちゃんに似合いすぎる可愛い衣装も用意するわ!」
やっぱりかァァァ!
私がカードを集めに行く時の可愛い衣装は、全部妙ちゃんが作ってくれたものなんだ。
とっても可愛いんだけど…地味な私に似合っているのか、はなはだ疑問だよ…
「ぱちえちゃんはとってもとーっても可愛いんだからもっと着飾るべきなのよ!それに特別な事をするときには、それなりの服を着なくっちゃダメなの。そして記念のビデオも欠かせないんだから!!」
…うん…妙ちゃんってやっぱり…ちょぉぉぉっと変わってるかも…
そういえば!
さっきから普通に言っちゃってたけど、私はひょんなことから『ショウヨウカード』という不思議なカードを集める事になってしまったんです…
あれは…4年生になったばかりの頃。
お父さんの書庫に置いてあった本を開いてしまった私は、その本の表紙から出てきたカグラちゃんに気に入られてしまって、うっかりカードを集める事を引き受けてしまったんです。
だって、そのショウヨウさんが作ったカードは、ほうっておいたら悪い事ばっかりしてこの世に災いをもたらすっていうんだもん!
大好きなみんなが困るのは、私嫌だもん!!
カードを全部封印して集めたらもう悪い事はしなくなる、ってカグラちゃんが言うから…
だから私はぜったいカードを全部集めるって決めたんだ!
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