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朝食を済ませた俺達は、それぞれ学校と職場へ向かう。
勲兄と十四兄は警察に、妙姉は某有名企業に、退兄は大学に、俺とパチ恵は高校に。
当然俺とパチ恵は同じ高校で、俺ァ家族にパチ恵の虫除けになれと命令されてる。
そのせいで俺が入学した銀魂高校にパチ恵は入学させられた。
結構偏差値が高かったらしい銀魂高校にパチ恵をを入学させるのは大変でねィ…そりゃぁ家族総出で家庭教師をしたもんだ。
その上四六時中パチ恵を見護れ、と言われて俺は強制留年までさせられそうになった。
まぁそれはパチ恵の『そんなの絶対駄目!』と妙姉とパチ恵の後見人・坂田銀時がパチ恵の担任になる事で回避出来たんですがねィ…
本当の所俺ァ留年ぐらいしても構わねェと思ってた。心配だし。
…まぁ実際はそんな心配する必要なんて無く…逆に心配しなきゃいけねェぐらいパチ恵はモテなかった。
どいつもこいつも見る目無ェと思いつつも、俺は少しだけ安心してる。
それは『あの近藤総悟の妹』ってのが効いてるのも有るんだろうけど、眼鏡の地味女で居させてんのも効果抜群なんだと思いやす。
半径5mぐらいには男なんざ近付けたくねェから丁度良いや。
「そーちゃん!ぼーっとしてると学校遅刻しちゃうよ!!」
そう叫んでバタバタと走るパチ恵を大股で追いかけると、その小さな手で俺の手を掴んで引っ張って走り出す。
このあったけェ手が有れば、それだけ有れば俺ァ大丈夫だ。
おかしな気持ちも抑えておく事が出来らァ。
毎朝の日課になりつつあるこの登校風景が意外と周りへの牽制になってて、教室に入るまで俺達に話しかけてくるような馬鹿はほとんど居ねェ。
その小さな手を堂々と握っていられるのもその時だけなんで、自然と俺の足は遅くなる。
「パチ恵ェーそんなに急がなくても学校は逃げやせんぜー?」
「逃げなくても遅刻しちゃうの!そーちゃんの事は私ゴリ兄さんに頼まれてるんだから!」
「へいへい、世話かけやすねィ。」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でてやると、パチ恵の顔が真っ赤に染まる。
「ちっ…遅刻しそうなのにまったりさせるのはやめてよそーちゃんのばかっ!」
ぷりぷりと怒って早足になるけど…子供扱いされんのが嫌な年頃なんですかねィ…?
これ以上怒らせると長くなるんで、パチ恵の手を握り直して俺は本気のスピードで走りだす。
そうしたら遅刻しなかったってェのになんでかもっと怒っちまった…女ってのは判んねぇ。
◆
放課後。
剣道部の練習が終わって携帯をチェックすると、何故か家族全員からメール着信があった。
勲兄と十四兄からは
『面倒な事件が起こって今日は家に帰れない。パチ恵には総悟を待っているようにメールしてあるんで一緒に帰るように』
なんだ?近くで何かあったのか?
妙姉からは
『今日は残業で帰れません。夕飯は自分達でなんとかしてね』
…飯はいつも退兄かパチ恵が作ってるよな…
退兄からは
『今日は大学の皆で飲み会!朝までコースだから皆には上手く言っといてネ☆』
合コンか…テキトーに言いふらしといてやらァ。
んでパチ恵からは
『銀八先生の所で待ってます。』
銀八のトコってェと国語科準備室か。
のんびり着替えて国語科準備室に向かう途中、俺は大変な事に気が付いちまった。
…今晩…家にパチ恵と俺と二人っきりじゃねェか!?
ヤベェ…俺も出掛け…イヤ駄目だ。家にパチ恵一人になんてさせらんねェ。
誰か呼んでなんとかやり過ごすか…?チャイナと銀八っつあんとか…
よし、それだ!
どうせ銀八っつあんのトコに行きゃぁ皆居るし、晩飯は鍋だとか言ったらたかりに来んだろアイツら。
そうすりゃ二人っきりは免れる!ナイス俺!!
国語科準備室に着いてドアを開けざまに大声で叫ぶ。
「パチ恵ー今日は鍋にしやしょうぜー」
「そーちゃんお腹ペコペコなの?鍋かー…何鍋が良い?」
それなのに、そこに居たのはニコニコ笑うパチ恵一人で………あり…?
「…パチ恵…銀八っつあんとチャイナは…?」
「銀八先生はデートかな。ソワソワしながら私に鍵預けて帰っちゃった。神楽ちゃんは今日はそよちゃんの家にお泊りなんだって…そーちゃん逢いたかった…?」
なんて日だ!!
なんで今日に限って誰も居ねェんでィ!?
「…そうじゃねェよ、鍋は大人数の方が旨ェから…」
「そうだね。でもお姉ちゃんも退ちゃんも居るし…」
「居ねェ。今日は俺達だけだ。」
「え………」
俺の方にしかメール寄越してないのか?
まぁ、退兄は仕方ねェか。
「妙姉は残業で地味男は合コンみてェ。」
「そっか、お姉ちゃんはやっぱり忙しいんだね。退ちゃんも彼女欲しいって頑張ってるもんね…」
えへへ、と笑うパチ恵の顔が赤い。
そういやこないだ合コンの偽情報教えたっけねィ…いやらしい感じで…
「あー…んじゃ鍋は無しですねィ。」
「あ…そうだね。二人きり…じゃ食べきれないよね…えっと、じゃぁそーちゃん何が食べたい?」
顔を真っ赤に染めてそっと俺を見上げてきやがるけど…まさかパチ恵も俺と二人だって意識して…る訳無ェか…
「スーパーの弁当で良いんじゃねェか?適当に見繕って帰りやしょう。」
「え?私作るよ?」
「いっつも旨ェ飯作ってんだからたまには休みなせェ。」
俺がそう言って笑うとパチ恵の顔が更に赤くなる。
あー…勘違いしそうにならァ…
「そーちゃんが優しい…」
「俺ァ可愛い妹には毎日優しいぜ?」
にこにこ笑いながら拳骨で頭をグリグリすると、パチ恵がごめんなさいごめんなさいと謝ってくる。
よし、なんとかいつも通りだ。
「わかりゃ良いんでィ。優しいお兄様で良かったねィパチ恵。」
涙目で何かブツブツ文句を言ってっけど無視してさっさと国語科準備室を出た。
このままあの赤い顔見てたら完璧に勘違いしちまいそうでさァ…
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