ずっと前から好きでした



それはまだ、俺達が子供だった頃…


「おっきくなってもよめのもらいてがなかったら、おれがぱちえのこともらってやるよ!」

かわいくってだいすきなぱちえに、ゆうきをだしてぷろぽーずした。
おとなになってもぜったいぜったいいっしょにいたいから、いまからやくそくしとくんだ!そしたらいっしょにいれるもん!!
それなのに、ぷぅっとふくれたぱちえは、ぷいっとよこをみた。

「そーちゃんいじわるゆうからやっ!ぱちえおよめさんになれるもん!う――…やっ!!」

たくさんなみだをだすぱちえはかわいいけど、ちょっとだけかわいそうでむねがぎゅうっていたくなった。
おれもなきそうになった。
ぱちえはいっつもおれのことだいすきっていってるのに、なんでそんないじわるゆうんだよ!?

「…ばーかばーかぱちえのばーか!ぱちえなんておよめさんになんかなれないよーだ!おれだってもらわないもん!うそだもん!!」

かなしくって、ついいじわるゆったらびっくりしたかおでおれをみて、もっとたくさんなみだをだしてぱちえがわんわんってないた。

「そ−ちゃんのほうがばかー!わーん!!」

あんまりなくからかわいそうになっててをつないだのに、ぱちえはぜんぜんなきやまない。
だから、おれもかなしくなってちょっとだけなみだがでた。

「ぱちえちゃんなかないで…」

「いもうとをいじめないで!!」

ぱちえのこえをききつけてはしってきたたえねえが、おれからぱちえのてをとっていった。

「そーちゃんがいじめるー!!」

「そーちゃんダメよ?好きなこいじめちゃ。」

「おねーちゃ…」

みつばおねえちゃんになきついたぱちえは、もうおれのことなんてみてくれない。
おねえちゃんもぱちえのあたまはなでるのに、おれのほうはこまったかおでみてる…おれのおねえちゃんなのに!
なんだよばーか!かなしくなんかないやい!!これはあせだ!!

「…そー…泣くぐらいならいじめなきゃいいのに…」

「ないてない!」

「なまいき!」

俺の頭に物凄い衝撃が襲って目の前が暗くなる。
それ以来、俺が素直にパチ恵に好意を伝える事は無くなった。
だって、俺は振られたのだから………





担任の先生に『志村の今の学力じゃ難しい』って言われた私が、一生懸命頑張ってこの銀魂高校に入学したのは、ココに大好きな人が居るから。

中学校の時に、幼馴染に無理やり連れていかれた剣道部で知り合ったその人は、ひとつ先輩の土方十四郎さん。
頭が良くて運動神経も抜群で風紀委員までしっかり務めている凄い人で、その上剣道が強くて全国大会でいつも上位入賞しているの。
もちろんイケメンだしスタイルも良くてカッコいいのに、優しくて面倒見が良くて頼りになって真面目で…本当にすごい人なんだ。
そんな人だから当然モテモテで、いっつも沢山の可愛い女子達に囲まれているのに剣道一筋でチャラチャラしてなくて男子の友達も多くって。
初めて土方さんを見た時に黒い道着が黒い髪と黒い瞳に合っていて、私の心はその黒に飲み込まれてしまったんだ。
…私が彼女になれるなんて全然思ってはいないけど、でも大好きだから。
だから、同じ学校なら偶然逢えたり、物陰から姿を見つめたりできるんじゃないかなぁ…なんて思ったんです。



「なーなー!オメェしか居ないんだって。」

「そうよ、剣道部のマネージャーになれるのは、はっちゃんしか居ないの。お願い、お姉ちゃんの言う事聞いてくれるわよね?」

せっかく乙女らしい考え事をしていたっていうのに、いつの間にか私の目の前には綺麗な顔でふてぶてしく笑う幼馴染と、手を合わせながらも私を脅してくるお姉ちゃんが居た。
確かにこの2人の言う事を聞くのは私の恋にとってはチャンスなのだけれど…勇気が足りない私には、その一歩を踏み出すのはなかなか難しい事だよ。
それに、どうせこの2人の事だもの、私の事を都合よく使うつもりなんだよね…そう思うとなかなか素直には頷けないよ…

「ミツ姉様だってはっちゃんが来てくれるの待ってるのよ?」

うっ…美人で優しくて大好きなミツバお姉ちゃんを出されると弱いよ…
昔からそーちゃんに苛められたら助けてくれてたし…それに、銀魂高校に入れたのだってミツバお姉ちゃんが根気よく勉強教えてくれたおかげだもんね…そんなお姉ちゃんが待ってるって言われたら…

「はっちゃんは皆の癒しなんだもの!それに家事だって得意だし…ね?」

「そーだぜー?パチ恵のおっぱい枕は癒されまさァー」

そーちゃんがそう言うと、笑顔のお姉ちゃんが、思いっきり頭をグーで殴る。
…アレ、痛いんだよな…

「この物騒な世の中だもの!私、はっちゃんと一緒に登下校しないと心配で仕方ないわ!剣道部に入ったら私もミツ姉様も土方君も、ついでに総も一緒だから安心よ?」

ぎゅうっとしっかり手を握られると痛いィィィ!

「そうそう、俺も、土方も、一緒ですぜ?」

『土方』を強調してニヤリと笑うこの幼馴染には、私の気持ちはすっかりバレているんだろうな…昔っから鼻が利くから…
でも…意地悪に言っていても最後は絶対味方してくれるんだ…本当は優しいから…

「ね?はっちゃんそろそろ大人しく入部しなさい?代々教えなきゃいけない仕事が有るから、一年生でも一人はマネが居ないと困るのよ。貴女なら浮かれた雌犬共と違って真面目に仕事するでしょ?」

にっこりと笑うお姉ちゃんが恐いィィィ!
そういえば去年は大変だったって聞いたっけ…何故かイケメンが多い剣道部に女子マネージャー希望者が大挙して押しかけたって…
それも、イケメン目当てだからその人達だけに群がってまともに仕事しないって怒り狂ってたっけ…
私も不純な動機なんだけどな…
そっと2人を窺うと、綺麗な蒼がキラリと光る。

「パチ恵なら地味眼鏡だから部員の気も逸れねぇしな。だからマネやれィ。」

「ちょ…失礼でしょうが!…事実だけど…」

「あら、一部気が逸れるんじゃない?ね、総?」

「剣道部にそんなモノ好き居るんですかィ?妙姐。」

2人が喧嘩を始めそうになるから慌てて私が止める。
放っておいたらこの場が凍りつくゥゥゥ!

「わっ…分かりましたからっ!私、剣道部のマネージャーやりますからっ!でも!後で文句言っても知りませんからね!!」

2人の間に入って大きく手を広げると、その場の空気が和らぐ。
よっ…良かったァァァ…

「んな事言わないと良いねィ…」

「大丈夫よ、誰にも言わせないから。」

「えっ…!?」

にっこりと笑う2人がちょっと怖いけど…
でも、せっかくのチャンスだから!私は精一杯頑張ろうと思いました。


「なんだヨー、アネゴはドSを殺らないアルカ?んじゃワタシが殺ってやんヨ!」

「はぁ?テメーが俺を殺れるかよチャイナ。」

「やめろやァァァ!!!」


今度は飛んできたクラスメイトの神楽ちゃんと喧嘩始めたよ、このバカな馴染み!!
…気苦労で禿げるんじゃないかな…私…