「あの…沖田君…?」

「告白だからな、今の。俺が惚れたのはお前でィ、八恵。よっく考えなせィ。」

「だって…私達…友達…だよ…」

「そういう意味じゃ無くて好きなんでィ、俺ァ恋人になりてェ。パチ恵とイチャイチャしてェ。」

えっ…えぇぇぇっ!?
まさか、沖田君の好きなコって…今迄相談されてたのって…私ィィィ!?

いつの間にか自転車を降りて真正面からじっと見つめてくる沖田君はなんだかキラキラしてて…眩しくってまともに見れないよ!
それになんだか心臓がドキドキ大騒ぎして苦しいし、頭に血が上ってくるし、顔は熱くなるし…どうしちゃったの!?私!?


びっくりしすぎて固まっていると、毎朝の恒例になった神楽ちゃんの飛び蹴りと信女ちゃんの木刀が沖田君を襲う。
あ!危な…

「パチ恵ーおはようアルー!」

「おはよー…」

「パチ恵ちゃんおはよう。」

2人に押されて自転車を降りた私をそよちゃんの手が引っ張って、私達の背後でいつもの3人のケンカが始まる。
私にはケンカって言うより殺し合いに見えるんだけど…でもあの人達みたいに強くなったらそれはケンカですんじゃうんだよね…

「私達は教室に行っちゃお?遅刻しちゃうよ。」

ニコニコ笑ったそよちゃんが、3人を置いたまま私の手を引いて教室に向かって歩きだす。
いつもは3人のケンカを私が止めてから向かうんだけど、今日はそんな心の余裕無いよォォォ!
なので、私はそよちゃんに引かれるまま真っ直ぐ教室に向かったのでした。

「あれ?パチ恵ちゃんが見捨てた…これで私達、ドS4人娘になれるね!」

そよちゃんがそんな事言うけど、私はドSじゃないもん。



その後はもう全然落ち着く暇なんかなくて!
だって沖田君って私の後ろの席なんだよ!?
その上授業中でも関係無しに話し掛けてくるし…つんつんって背中つついてくるしィィィ!

…そりゃ、いつもはこっそり振り向いて沖田君の変顔で笑わされたり、おかしな教科書の落書きで笑わされたり、渾身のパラパラ漫画に感心したりするのが楽しくて背中をつつかれるのが楽しみだったりしたけど…でももう沖田君の目どころか顔も見れなくなっちゃったから…振り向くなんてできないよぅ…

しばらく私の背中をつついてたけど、遂には諦めたらしくて沖田君は大人しくなった。

その後の休み時間も、キラキラ光って眩し過ぎる沖田君の顔をまともになんか見れなくなった私は、話し掛けられる前に神楽ちゃん達の所に逃げ込んで沖田君の事は一切見なかったんだ。
こんなのダメなのに…でもちゃんと反応できなくて私は逃げてしまった。

そうしたら、次の休み時間からは沖田君が山崎君の所に行ってしまって、私には一切話し掛けないようにしてくれたの。

お弁当の時間も、ミニハンバーグ好きだって言ってたのに食べに来なくって…いつの間にか教室からも居なくなってしまっていた。

…どうしよう…
私、それが凄く寂しいよ…
初めに目を逸らしたのは私の方なのに勝手すぎるよ………

「パチ恵どうかしたアルか?元気無いヨ…」

「沖田君も今日はパチ恵ちゃんのお弁当食べに来ないね…ケンカしたの?」

「…ドーナツ食べる?」

皆が心配そうに私の顔を見てるよ。
ダメだなぁ私…皆にこんな顔させて…

「心配掛けてごめんなさい…有難う…」

なんとか私が笑うと、何かを感じたのか神楽ちゃんと信女ちゃんが怖い顔をして立ち上がる。

「ドSヤロウがパチ恵をいじめたアルか…?」

「パチ恵を苛めるなんて生意気。○○○斬ってくる。」

「だっ…ダメェェェ!私苛められてないからァァァ!!」

慌てて2人を引き留めると、そよちゃんも仲間に入った3人がニヤリと嫌な笑顔を浮かべて私を見た。
ドS3人娘降臨だァァァ!

「沖田君と何が有ったの?パチ恵ちゃん。」

「正直に話すアル。」

「告白された?」

「なっ…何で知って…あっ………」

つい、そう叫んでしまうとニヤニヤを深くした3人が更に私に顔を寄せてくるよぅ…
そのままじりじりと顔を近付けて来られたらもう逃げ場がなくって…今朝有った事を包み隠さず白状させられると、意外と真面目に聞いてくれた3人娘が私から離れてくれる。

「あんなヤツさっさと振ってやれば良いネ。」

フン、と鼻を鳴らした神楽ちゃんが嫌そうに舌を出す。
…神楽ちゃんは沖田君の事嫌いだからなぁ…

「貢がせるだけ貢がせて捨ててやると良い。ドーナツとか買わせよう?」

真顔で言われたら怖いよ!
…信女ちゃんも沖田君とは仲悪いもんね…

「パチ恵ちゃんは沖田君の事どう想ってるの?嫌いなんだったら、後腐れないように皆の前で振ってあげると良いよ!沖田君は打たれ弱いSだから暫く立ち直れないし、復讐したりとかストーカーにはなれないんじゃないかな?」

にっこりと邪気の無い顔でそんな事言うなんて…やっぱりいちばんの天然ドSはそよちゃんだよね…

「何で皆、私から振る一択!?私の気持ち…って言っても…沖田君は皆と同じ最高のお友達だよ…?恋人とか…分かんないよ…!」

そこからは私の口は止まらなくて。
謎の動悸や体調不良や自分勝手な寂しさを全部3人に話すと、初めは真剣に聞いててくれたハズなのに、いつの間にか嫌そうな顔で目を細めて、チッ、と舌打ちされてしまった。
神楽ちゃんなんか鼻くそまでほじってるよ!!何で!?

「つまんねーアル。」

「ムカつくから教えない。」

「それはパチ恵ちゃんが気付かなきゃいけない事だから…」

それっきり3人は話題を変えて私の話は聞いてくれなかった…何で…?
私のコレって皆普通に知ってる事なの…?私だけが知らないの…?



午後の授業が始まるんで自分の席に戻ろうとすると、珍しく沖田君がもう座ってて…
その姿を見たら、緊張して恥ずかしくて体温が上昇して心臓が壊れそうにバクバクいって顔に血が上って…その上もう目が逸らせなくって…沖田君ばっかりを目が追ってしまう…サラサラな綺麗な髪だなぁ、とか華奢に見えるけど実は筋肉ついてるなぁ、とか横顔綺麗だなぁ、とかばっかり想ってしまう。
やっぱり私おかしいよ!

…保健室…行こうかな…?


どっちにしてもお弁当箱は置いて行かなくちゃいけないからなんとか席に戻ろうとしても、手足が上手く動かなくておかしな歩き方になってしまうよぅ…
誰か助けて!おきたくん…って沖田君が原因だよ!!

ギクシャクしながらなんとか席に近付いて行くと、フッと私を見た沖田君がビックリした顔をして、すぐにふわりと微笑んだ。

うわァァァ!
何アレ何アレ何アレェェェ!?
心臓が…心臓が壊れるよぅ…
そんな顔でコッチ見ないでェェェ!

泣きそうになった私を見た沖田君は、フッと眼を逸らして机に突っ伏してしまった。

…胸が痛いよ…やっぱりこのまま沖田君とずっとお話出来なくなるのは嫌だよ…

…でも…

なんとか席に戻れた私は、やっぱり後ろを振り向く事は出来なかった。



結局その日はその後も沖田君とお話しする事は出来なくて…
それでも気が付いたら沖田君を目で追ってしまってたんだ。
目が有った瞬間逸らしちゃうし、見てたらドキドキが止まらないのにでも見ていたくって…

私…どうしちゃったんだろ…

どうしたら良いんだろ…