珍しくシリアスです。流血注意。
氷雪の華
今日も買物の時間は、でっ…でーとの時間。
大江戸ストアでタイムセールの戦利品をカゴに入れて、他にも安売りの食品を物色していると、土方さんの目を盗んで見回りを抜けて来た沖田さんが手を振る。
「新八ィ、今日のおかずは何ですかィ?」
「今日はお魚が安かったんで、焼き魚とおひたしか冷奴にしようと思ってるんですよ?」
僕が今晩のメニューを教えると、沖田さんが、うへぇ、って顔を歪める。
「魚ですかィ…?肉が良いでさァ!肉―――!!」
もぅ、子供みたいなんだから…好き嫌いは良くないよ!
「そんなに好き嫌いばっかりしてたら体に悪いですよ?それに…僕の作った料理が食べられないって言うんですか…?」
僕がワザとむぅっと膨れると、沖田さんがパタパタと動き出す。
「そっ…そんな事無いでさァ!新八の料理は全部美味いでさァ!!さっ…魚だってバリバリ喰えるぜィ!!」
沖田さんがパタパタしながらたらりと汗を流す。
あははっ、焦ってる焦ってる。
「じゃぁ、沖田さんの分も作って待ってますね?」
「おう!」
僕がクスクスと笑うと、沖田さんもにっこりと笑ってくれる。
えへへっ、好きだな、沖田さんの笑顔。
結局付け合わせはキャベツのおひたしにする事に決めて、会計を済ませて家へと向かう。
家に帰り着くまでは沖田さんが荷物を持ってくれて、お話をしながらゆっくりと歩く。
この、帰り道のおしゃべりも、僕にとっては大切な時間なんだ。
この時間が、もっと長く続けば良いのに…
僕らが他愛も無い話をしながら人通りが少ない裏道を歩いていると、前から浪人風の男達が歩いてくる。
何か…やな感じだな…
沖田さんもちょっと警戒してるし…僕も注意しなくちゃ…
でも、その男達は特に何も無く通り過ぎていった。
あはは…ちょっと考えすぎだったかな…
僕が気を抜いた瞬間、通り過ぎたはずの男達がするりと僕らを取り囲む。
一人の男が僕の腕を掴んで引き寄せる。
「真選組一番隊隊長沖田総悟だな。コイツの命が惜しかったら、刀を捨てろ。」
僕がはっと気付いた時には既に遅くて、男の1人に腕を掴まれて首に刀を当てられていた…
「新八ィ!」
「刀を捨てろ。本気で殺すぞ?」
男が僕の首にあてていた刀をぐっと押しこむ。
痛っ……
首にぬるっとした感触が走る。
ちくしょうっ…沖田さんの枷にはなりたくないのにっ…
くっ、と顔を歪めた沖田さんが、腰の刀を捨てる。
沖田さんの近くに居た男が捨てた刀を蹴り飛ばし、鞘に入ったままの刀で沖田さんを殴りつける。
そんな…僕のせいで…っ…沖田さんが殴られるままでいるなんてっ…
悔しくて、ぽろりと涙が落ちる。
「すまねェ新八ィ…巻き込んじまった…」
「そんなっ…僕がもっとしっかりしていれば…っ…!」
「イヤ、全部俺のせいだ。」
「沖田さんっ…」
「死出の挨拶は済んだか?…殺れ。」
僕の首に刀を当てている男が、沖田さんの側に居る2人に指示をする。
大きく頷いた1人が、沖田さんの後ろから刀を振りかぶる…
「やぁっ!沖田さんっ!!」
僕の声で後ろを振り向いた沖田さんに、男の刀が下ろされる。
嫌な音が響いて、沖田さんの胸から血しぶきがあがる………
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「…安心しろ、お前もすぐに後を追わせてやる。」
僕が頭を振ると、カシャリと音がして、眼鏡が落ちる。
僕の目の前は、真っ赤に染まった……………
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