お父さんと一緒



今日も1日真面目に働いちまった。

アレだね。所帯を持つと、なんかこう働かねェといけねェ気分にならァね。
俺が守ってやらなきゃならねェ感じ?
おかげでここんトコ毎日定時にあがれてらァ。

それに、最近はテロリスト共が大人しくてなァ…特に桂が大人しくて、噂も聞かねェ。
新八は…関係ねェよなァ…?ちっと不安だぜ?
関わり合ってっと、新八までしょっ引かなきゃなんねェもんなァ…俺ァそんなのは嫌だぜィ?

そんな事考えてっと、なんでか不安になって、ちょいと急ぎ足で家に向かう。

…アレぁ…
ちょいと先に見慣れた色の頭…
又、アイツが来ちまったのかィ…?

そのままのスピードで近付いて、ソイツを追い越してから振り向くと…やっぱり俺か…

「よぉチビ。又来ちまったのかィ?」

「あ…おれかよ。しんぱちをえきまでおくってたんだ。そしたら又ここにいた…」

…俺の顔でそんな不安なツラするんじゃねェよ…

「ウチ、来るんだろィ?」

「…しんぱちの家に行く…」

…可愛くねェなァ…

「俺も今帰るトコだから、ついて来い。」

俺がチビに声を掛けて歩き出すと、タカタカと小走りでついてくる。

チッ………

早く家に帰りてェけど、コイツを置いて帰ったのがバレたら新八すげェ怒るだろうしなァ…
ちょっとだけ歩くスピードを弛めてやる。
でもまだ早いみてェで、ずっとタカタカと走ってくる。
そのうち足音がしなくなったんで振り向いてみると、ちょっと後ろで立ち止まって、ハァハァと息をついていやがる。

あーあ、めんどくせェ…

暫く待っててやると、又タカタカと走り寄ってくる。

「ん。」

俺が手を差し出すと、一瞬キョトンとした後、かぁっと赤くなる。

「なっ…なんだよソレっ!?こどもあつかいするなよなっ!おっ…おれはひとりでもしんぱちの家に行けるんだぞっ!」

「へいへい。」

俺が前を向くと、真っ赤な顔で、ぎゅっと手を握ってくる。
…なんでィ…可愛いじゃねェか…

チビの手を握って殊更ゆっくり歩いてやると、ほっと息をついて安心した顔になる。
なんでィ、俺ァチビの頃でもこんな事ぐれぇで焦ったりしなかったぜ?新八に甘やかされてんじゃねェのか?コイツ。
…別に…羨ましくなんざねェよ?全然。

ただひたすら歩いてんのも気詰まりなんで、今日の晩飯は何だろうねィ?とか話しながら家に向かう。
家に着いて、たでいま〜と玄関の戸を開けると新八が迎えに出てくれる。

「総悟さんお帰りな…さい…って総悟君?あははっ、仲良く手を繋いでる!2人とも可愛いっ!」

新八が俺たちを見てにこにこ幸せそうに笑うんで、俺はチビを置いてこなくて良かったと胸を撫で下ろした

「新八ィ、今日の晩飯は何でィ?」

「えっとね、麻婆豆腐とサラダと卵のスープと、デザートに杏仁豆腐を作ったよ?中華なんだ!」

新八が可愛らしくえへへ、と笑う。
そんな笑顔を見てるだけで幸せ感じちまうなんて、俺も丸くなったもんでさぁ…

「新しいレパートリー、増えやしたね。」

「総悟さんには、美味しいもの沢山食べて欲しいですからね。材料費の心配もしなくて良いし。」

新八が今度は、悪戯っぽく笑う。
今までは安売り安売り!で来たからねぇ…
俺ァそんな苦労はさせやせんぜ?

「楽しみにしてまさぁ。俺ァ着替えてきやすんで待ってて下せェ。」

俺がちゅう、と新八にきっすすると、くすぐったそうに首をすくめる。

「はい。あ、その間に総悟君も着替えてこようね?」

「おれ、手をあらうー!」

今まで大人しくしていたチビが、そこだけは譲れない!ってぇ顔で、トタトタと洗面所に走る。
あぁ、そういやぁ姉上にずっと言われてたっけ…
懐かしくなって、俺も洗面所に行って手を洗ってうがいをする。
そこに様子を見にきた新八が、クスリと笑う。

「流石同一人物。後ろから見たらそっくりだよ?」

新八のクスクス笑いを聞きながらチビを見ると、チビもこっちを見てやがった。
…何でィ…照れるぜ…

笑ったままの新八が、チビを連れていったんで、俺は隊服を私服に着替えてタスキをかける。
久しぶりにこの時間に間に合ったんだ、ちゃんと手伝いますかねェ。