ヒミツの花園
ココは皆が憧れる有名女子高。
清楚な普通のセーラー服は、皆膝丈。
三つ編を風にそよがせて、ごきげんようと挨拶を交わす。
「新ー!大好きアル!ずっとずっと一緒に居るネ!!」
そう言って僕の腕にぎゅっとつかまってくるのは、ピンクの髪も愛らしい女の子、神楽ちゃん。
でも…僕はずっとなんて約束出来ない…だって…
「教室に着いたら髪ゆってヨー!ワタシ新に髪ゆってもらうのすきアル!マミーみたいで優しいネ!」
「うん…」
ええへ、と笑ってぎゅうぎゅうと腕に掴まってくるけど…
分かってないから出来るんだよ?こんな事。
神楽ちゃん…?本当は僕、男なんだよ…?
僕、志村新こと志村新八がこの女子高に潜入しているのは、仕事の都合だ。
それというのも、僕がバイトしている万事屋に、ひとつの依頼が来たんだ。
それがここ、男子禁制で有る筈の女子高で起きた、盗撮事件。
この学校の女子高生の着替えシーンや、スカートの中が写された映像が、裏で流れているのが見つかったのだ。
どう見たってその映像は、この学校の生徒でなければ撮影する事が出来ないものばかりだった。
だから、その犯人を捜す為に、僕がこの学校に潜入する事になった。
僕としては女装して潜入、なんて絶対やりたくなかったんだけど…
上司がここの制服を着てみたら、女子にすら見えなかったし…姉上はにっこり笑顔で脅してくるし…
仕方なく、こうして潜入している。
僕の地味な外見と、姉上の力で(僕の姉上はここの生徒だ。ちなみに依頼も姉上からだ。)僕はなんとか溶け込んで捜査しているけど…
僕だって学校が有るんだからそんなにゆっくりしてらんないんだけどな…
その上姉上の友達の神楽ちゃんにすっかり懐かれて、潜入1日目にして色々連れていかれてもう3日目…
昨日なんか、遊びに行った先で危うく僕の学校の男子生徒にナンパされるところだったよ…神楽ちゃん可愛いしね…
でもまぁ、神楽ちゃんは顔が広いから、情報収集にはもってこいだ。
最近、あんまり見た事の無い女子高生が僕らのクラスに居る気がする、ってトコまで突き詰めたんだ!
居る気がする、って言うのはおかしな話だけど…きっと相手もいつも居る訳じゃないんだよね!
今日ぐらいでその人を見付けられると良いな…僕もそろそろ単位が…
神楽ちゃんと話をしながら教室に行くと、僕の席辺りに人だかりが出来ていた。
…何だろ…?
僕が足早に自分の席に向かうと、僕の席には綺麗な栗色の髪の美人が座っていた。
…あれ…?…どっかで見たような…
僕が訝しげにその人を見ていると、僕に気付いたその美人が、にっこり笑って立ち上がる。
うわ…綺麗…
「新!逢いたかったでさァ!」
…その美人から発せられた声は低音で…
僕にがばっと抱きついてくる。
「なっ…!?アンタ誰ですかっ!?」
「覚えてないんで?昨日ナンパしたじゃねェか!」
「あぁっ!昨日の…っ!神楽ちゃんナンパしてきた…」
「は?俺ァアンタをナンパしたんですぜ?新。俺の事ァ総子と呼んで下せェ。」
周りの皆がざわざわと騒ぎ始めたんで、彼の手を掴んでトイレの個室に押し込む。
神楽ちゃんが心配そうに見てるけど…大丈夫!このくらい僕だけで何とか出来るさ!
「新、案外積極的でさァ…総子照れちゃう♪」
「積極的ってなんだ!?女装までして何しに来てんだアンタ!!」
「新に逢いたかったんでさァ。昨日も言ったろィ。俺と付き合えって。」
「だから!断ったじゃないですかっ!!」
「そんぐらいで諦められっかィ。」
至近距離で見つめられる目は真剣で…って、至近距離…?
気付くと僕は便器の蓋の上に座った男の膝に跨がされて、その手が僕の制服の中に入って来ていた…
いっ…今は仕方ない…僕が男だって分かれば、この人もさっさと帰るだろ…
僕ががばっと制服の前を上げて、胸をさらす。
「残念でした!僕は男です。ここには仕事で・・って、ひゃぁっ!?」
なっ…なっ…なっ…舐めたっ!この人僕の乳首舐めたっ!?
「なっ…何すんだ馬鹿野郎っ!」
「や、目の前に有ったから。」
「有ったから、じゃねーだろっ!男だって言ってんだろっ!」
「そんなの知ってらァ、志村新八君。」
「へっ…?」
な…んでこの人僕の事知って…
「ショックですぜ?俺ァ結構有名だと思ってたんですがねェ…」
「えっ…?」
栗色の髪に綺麗な顔立ち、吸い込まれそうな深い青の瞳…アレ…?この人…
ぎゃぁーっ!この人…同じ学校の沖田君…変人で有名な、沖田総悟…
何で僕の事知って…?
「おっ…沖田君…?」
「正解。」
「何でこんな所に…?僕の事何で知って…?」
「面白そうだったから。」
「面白い訳有るかァァァァァァァァっ!!!!!」
僕がツッコミを入れても、なんだか嬉しそうににこにこ笑ってる…何だよ…
「面白ェだろ?地味な眼鏡が女装してお嬢様学校に潜り込んでるなんざ。」
「だからって何でアンタまで女装して潜り込んでんだァっ!?」
「新八君とお知り合いになれそうだったしねェ。」
「はぁ?」
僕ぅっ?お知り合いって…何で沖田君がわざわざ…
「で?新八君は何でこんな所に来てんでィ?」
「…僕は…」
どうしよう…仕事内容…話しちゃダメだしな…
僕が考え込んでいると、何か…
「…やぁんっ…って!なっ…何してやがるっ!?」
「や、暇だったから。」
「アンタは暇だったら男に手出すのかよっ!?分かった!分かりましたよ話しますよっ!!」
「誰でもって訳じゃねぇですぜ?新八君だからでさァ。」
沖田君がふんわりと笑う…な…んだよ…そんな顔したって…知らないよ…
するりと僕の頬を撫でて、綺麗な顔が近付いてくる…あ…
ちゅう、と唇を吸われ…ってぇぇぇぇぇっ!?それ僕のファーストキスぅぅぅぅぅぅっ!!
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