はじまりの日
僕の好きな人はいつだってカッコ良くって、いつだってしっかりと自分の魂を輝かせてる。
アノ人に声を掛けて貰えると僕は、いつだってドキドキするんだ!
今日も買い物の途中、アノ人に出逢える事が出来た。
あ…声…掛けても良いかな…?でも今アノ人は仕事中だし…どうしよう…
「お、万事屋の…今日もお使いか?偉いな。」
あ…声、掛けてくれた…えへへっ、嬉しい…
「こんにちわ、土方さん。見廻りですか?ご苦労様です!」
「おぅ。」
照れたように笑ってくれると、僕の心臓はドキドキいって堪らない…あぁ、変なヤツ、って思われないかな…きっと顔赤くなってるよ…
土方さんと居ると、僕はどんどん我儘になってる…
挨拶するだけの関係だったのがお話し出来るようになって、お話しできるようになったら触ってみたくって…もっともっとって思ってしまう…
この人の恋人になれたら…きっと、毎日が幸せで堪らなくなるよ、きっと…
でも…僕は男だし、土方さんも男の人だし…
そんなの気持ち悪がられるよね、きっと…
お友達、なんてなれるハズもないし…顔見知りの子供、ってだけで満足しなきゃ…でも…ちょっとツライよ…
◆
見廻りの途中、買い物帰りの新八を見付けた。
今日も新八は震えるほどに可愛い。
畜生…抱きしめてぇなぁ…でも、俺がんな事出来る筈も無い。そんな事したら、怯えられるだろ?絶対。
アイツ…きっと何処もかしこも柔らけぇんだろうなぁ…
イヤイヤイヤイヤ…
折角顔見知りのお兄さんになったんだ。
そんな事して変態のレッテル貼られたら、俺は死ねるね。ショック死するね。
本当なら俺だって『新八』って呼びたい所だが、まだだ。まだ早すぎる。
せめて話す内容が天気の話から脱さねぇと、いきなり名前なんて馴れ馴れしく思われちまうぜ。
「お、万事屋の…今日もお使いか?偉いな。」
アホか俺ェェェェェェェェェェ!お使い、って何だ!?いくらなんでもお使いはねぇだろ!!
「こんにちわ、土方さん。見廻りですか?ご苦労様です!」
「おぅ。」
よっ…良かった…スル―してくれたぜ…
良い子だ…ホント良い子だ…可愛いし…今日も笑顔が眩しいぜ!
よっ…よし、今日こそは誘うぞ…誘ってみせるぞ!
「おい、オマエも大江戸ストアか?」
「えっ?土方さんも買い物ですか?」
「おぅ、マヨネーズがきれそうなんでな…一緒に行くか?」
ふっ…不自然じゃねぇよな…?
新八が、にっこり笑って頬を染める。
くぁーっ!可愛いぜェェェェェェェェ!!!
「はい、じゃぁご一緒させて下さい。」
だっ…ダメだ…可愛過ぎる…手、繋ぎてぇ…
イヤ、待て待て俺!焦るな!焦ったら負けだ!!
俺は新八の隣に並んでゆっくり歩く。
それでも新八はちょこちょこ小走りで俺についてくる。
…心臓もたねぇな、こりゃぁ…可愛過ぎんだよ、畜生…
大江戸ストアに着いて、まず先に新八の買い物に付き合う。
新八が買う物を全部確保した後に、俺の買い物…マヨネーズを、カゴ一杯に詰め込んでいると、新八の笑顔が引き攣る。
ヤベっ…少なかったか…?
「土方さん…どれだけマヨネーズ使うんですか…?僕、この間お使いに来てる山崎さんに会ったばっかりなんですけど…」
おっ…多いのか!?多すぎるのか!?
「イヤ、使うだろ?1食に1本…」
「使うかァァァァァァァァァァァっ!?アンタ、メタボって聞いた事無いのかァァァァァァァァァァっ!!」
…新八が怒った…そんな怒らなくても良いじゃねぇか…
使うだろ?普通…1食に1本…
俺が不服そうな顔をしているのを見て、新八がハッとなる。
「すっ…すみません…失礼な口をきいてしまって…でも…土方さんのお身体心配なんです、僕っ…そんなにマヨネーズを食べてたら…って…それに土方さん、煙草も吸うし…」
本当に心配そうな顔で俺の顔を覗く。
なっ…こっ…こんなに俺の事を心配するなんて…
何だ?もしかして新八、俺の事を…
「…心配は有難ぇが…どっちも止められねぇな…」
俺がそう言うと、新八が泣きそうな顔になる。
何で…そんなに心配してくれるんだ…?俺は期待して良いのか…?
「僕…この年で知り合いのお葬式になんて出たくないですっ!土方さん、せめてハーフにするとか2食で1本に減らすとか出来ませんか!?」
…葬式まで考えが行っちまってんのか…そりゃぁ嫌だよな…葬式は…
ちょっとヘコむぜ…
「…ハーフってヤツに変えるか…」
俺がカゴの中のマヨネーズを全部取り換えると、新八がホッとした顔で笑う。
「はいっ!」
新八が嬉しそうに笑ってくれるんなら…2食に1本に減らしてみるか…?
会計を済ませて、新八を送って行く流れを自然に作る。
さりげなーく新八の荷物を1つ持って、万事屋方面に歩きだす。
「土方さんっ!ソレ僕の荷物…です…」
「…送ってやる…」
俺が言うと、新八が真っ赤になってふんわり笑う。
「有難う御座います…土方さんって、優しいんですね…」
えへへ、と笑う新八が可愛くて…
両手に荷物を持ってて良かったぜ…じゃなきゃぁ、抱き締めてる所だ…
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