明日からのプレゼント



依頼の終わった帰り道、銀さんと神楽ちゃんと3人で万事屋への道を歩いていると、突然何かに着物の裾を引っ張られた。

「…おかあさん…」

「へっ?」

私が下を見降ろしてみると、私を見上げて黒髪のちっちゃい男の子が掴まっていた。

「オイ、ガキ、パチ恵から手を離すアル。」

「何だー?迷子か?」

神楽ちゃんと銀さんが、しゃがみこんで男の子をじろじろと眺め回す。
私は裾を掴まれてるから動けないよ…
でも…この子…なんか…

「…オイ…このガキ多串君に似てね?」

銀さんが、イヤな顔をしながらも、その男の子を抱きあげる。

「そうネ、マヨ臭いアル。」

神楽ちゃんも、顔をしかめて男の子を見る。

「あ、2人ともそう思いました?何か似てますよねー、目付きとか…」

私が銀さんに抱かれて大人しくしている男の子の顔を覗き込むと、その子が泣きそうになる…なんで!?

「めがね…おかーさんじゃねぇ…おかーさん…いなくなった…」

「やっぱり迷子じゃねーか。おいボーズ、お前名前は?」

銀さんが優しく聞くと、銀さんの着物をぎゅっと掴んで、泣かないように頑張る。

「ひじかたじゅうごろう。」

…土方…?

「は?じゅーごろう…?ちなみにオヤジの名前は…?」

「ひじかたとしろう!しんせんぐみのふくちょうなんだだぜ!」

…なんで…?

「おいおいパチ恵、いつの間に…」

「パチ恵は万事屋のマミーアル!」

神楽ちゃんが、ぎゅーっと私に抱きつく。

「私…子供なんか、産んでませんけど…?大体、この子結構大きいですよね。いくつの時の子供だって言うんですか…?」

私がにっこりと微笑むと、3人がビキリ、と固まる。
土方さん…やってくれちゃいましたね…

「え…?じゃぁコイツ、隠し子か…?やるねぇ、多串君も。」

「パチ恵、すぐに別れるヨロシ。」

「…そうですね。」

怒った…怒ったよ、私…
私がちらりと十五郎君を見ると、びくり、と震える。

「…おっ…おれなにもしてない…」

「あ…」

まずいまずい、この子は悪くないもんね…

「ごめんね、十五郎君…怒ってないよ?(キミには…)」

私が笑うと、十五郎君が赤くなる。

「おれ、おねーちゃんがいい。このおっさんなんかあまいにおいがする…」

銀さんの腕の中から身を乗り出して、私の方に手を伸ばす。
あ…なんか可愛いかも…

「おっさんじゃないですー!俺はおにいさんですー!でも、さっすが多串君の子供だけあるな。もうパチ恵に手を出そうとしてやがるぜ?このガキ。」

銀さんが更に強く抱きしめると、うぇぇ…と泣きだした。
あ、まずい…本当に可愛い…

「銀さん、泣いちゃったじゃないですか!おいでー?おじちゃん怖かったねー?」

「パチ恵まで何言うの!お兄さんだろーが!」

…銀さん…大人気無い…
十五郎君が泣きやまないんで、銀さんがしぶしぶ降ろして手を離すと、たたっ、と私に駆け寄ってきて着物の裾に掴まる。

「じゃぁ、お姉ちゃんと一緒に…って、重いー!」

私が抱きあげようとすると、十五郎君は意外と重くて持ちあがらない…
だっ…駄目だ…

「ワタシがだっこするヨ!」

神楽ちゃんが興味津々で十五郎君を見て、ひょいっ、と抱きあげる。
わ…スゴ…
女の子に抱っこされたからか、十五郎君が泣き止む。
…へぇーっ、こんなちっちゃいのにスケベなんだ…
そりゃぁお父さんは隠し子も作るよね…

「おれじゅうごろう。おねーちゃんのなまえは?」

「ワタシは神楽ネ。」

十五郎君が、神楽ちゃんの顔をじーっ、と見る。

「かぐら、おれのおよめさんにしてやる!」

「ナマイキなガキネ…」

十五郎君が笑ったんで、神楽ちゃんも笑う。
なんか、良いお姉ちゃんじゃない?神楽ちゃん!
でも…その子はマズイよ…きっとエロだよ?エロ…

2人がきゃっきゃっとはしゃぎながら歩く。
それについて銀さんと2人で屯所までの道を歩いていると、途中で山崎さんと伊東さんに会った。

「あれー、皆さんお揃いで。どうしたの?」

「こんにちわ、伊東さん、山崎さん。今、この子を屯所に連れて行こうと…」

「へー…って、何この子!?副長そっくりじゃん…隠し子…?」

「…なんか、そうみたいです…」

私が遠い目で言うと、山崎さんの顔が引きつる。

「えっ…マジで…?」

「マジで。」