「新八君有難う!若が…若が女の子らしくなってきたのは、君のおかげだ!」
僕の手をぶんぶん振っていると、びしっと手刀が落ちてくる。
キレイに東城君の手だけに当たってるよ…
「東城ー、何気安く俺の新八の手を握ってんでィ…」
おっ…沖田君…?瞳孔開いてるっ!瞳孔開いてるっっっ!!
「感謝の握手だ。君と違って下心なんて無い。」
「何でィ、オメェは新八狙いじゃぁねぇのか。」
「私は若狙いです。」
ソレを聞いた沖田君がにっこり笑う。
…いつもそんな顔で笑ってたら可愛いのに…って何考えてんの!?僕ぅぅぅぅぅぅ!!
照れ隠しでちゃんと前を向いて席に着くと、後ろからつんつんつんつんとつつかれる。
…こんな事するのは後ろの席の沖田君だけだ…
無視しても、しつこくつんつんとつついてくる…もぅっ!
「うるっさいなぁ!」
「…先生がそんなに煩いなら、廊下に行くか?志村…?」
服部先生が、ジロリと睨んでる…
はっ!?もう授業始ってたよ…後ろではくつくつ笑ってるし…
「すみません…行きません…」
僕だけ怒られた…沖田君のバカ…
午前中の授業も終わり、昼休みになると僕の周りの机がガンガンと寄せられる。
この時間だけは、本当に嬉しい…皆で…お弁当を食べるんだ…!
2年の時はいつも1人で食べてたんだ…その上…
「新八ー!今日のおかずは何アルカ?」
僕のお弁当に飛び付いてきた神楽ちゃんを華麗に避けて、沖田君が僕のお弁当を持ち上げる。
いきなり目標物が無くなった神楽ちゃんは、びたんっ!と机に激突した…
「かっ…神楽ちゃん…大丈夫…?」
「新八ィ、チャイナ甘やかすんじゃねぇよ。チャイナ、オメェ自分の弁当有るだろうが。」
沖田君がじろりと神楽ちゃんを睨む。
「…何ヨ…聞いたダケネ…」
神楽ちゃんは、鼻をさすりながらどかん、と座って早速自分のお弁当を食べ始める。
2年の頃は、ほとんどお弁当を食べられてたんだ…神楽ちゃんに…
でも、沖田君と食べるようになってからは沖田君が僕のお弁当を守ってくれるんで、取られる事は無くなった。
「おっ、唐揚げイタダキィ!」
沖田君が勝手に僕のお弁当を開けて、唐揚げを1個口に運ぶ。
「新八は唐揚げ好きだねェ、毎日入ってら。俺と一緒だ。」
沖田君がそう言ってにっこり笑う。
本当は…そんなに好きじゃないんだ、唐揚げ。
でも沖田君が、僕の唐揚げ好きだって言うから…つい、入れて来ちゃうんだ…
だって、すっごく美味しそうに食べてくれるんだもん、沖田君…そんな顔で食べてくれたら嬉しいし…
無事ご飯を食べ終わってから周りを見ると、もう皆それぞれ次の行動に移ってた。
神楽ちゃん達女の子は、バレーをしに行ってしまった。
山崎君は原田君を誘ってミントンをしに行ってしまった。
桂君はエリザベスと漫才の練習をするんだって放送室に。
土方君は食後の一服をするんで、屋上に行ったし、伊東君は図書室に行ってしまった。
気付くと教室には僕だけで…出遅れちゃった…僕もどこかに混ざりたかったな…
あれ?そう言えば、沖田君は…?
僕がきょろきょろと辺りを見回すと、沖田君は僕の後ろの席でいつものアイマスクを付けてお昼寝してた。
…気持ち良さそう…僕も一緒にお昼寝しようかな…?
じっと見ていると、窓から差し込む日差しが沖田君の髪に当たってキラキラ光ってる…キレイ…
そっと触ってみると、サラサラだ!すっごい気持ち良い…
…沖田君寝てるし…少し触ってても大丈夫だよね…?
サラサラと、髪を掬っては落とし掬っては落とししていると、ガツっと手を掴まれる。
あ…起しちゃった…
「ごめん、沖田君っ!」
「新八ィ…オメェ…いい加減にしなせぇ…」
あ、マズイ…怒らせちゃったかな…?
「ごめん!沖田君寝てたから…」
「オメェそんな…寝てる男を優しく撫でるなんて…彼氏彼女じゃぁねぇかィ…」
沖田君、顔真っ赤だ…そんな顔されたら、僕も照れるじゃんっ…
「なぁ、新八ィ…俺ァ、本当に本気なんだぜ?オメェに惚れてんだ。俺と付き合わねぇか…?」
「だっ…だって僕男…だよ…?」
「関係ねぇ。」
急に近付いてきた沖田君の顔が視界一杯に広がったと思ったら、唇に何か柔らかいモノが当たる。
すっと離れてニヤリと笑った沖田君が、何処かに走って行ってしまう…
…えっ…?ちょっ…今…僕………キス…された…?
って…ちょっとォォォォォォォォっ!!!僕のファーストキスぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
…でも…嫌じゃ…無い…こんなドキドキして…心臓が口から飛び出そうだよっ!
どうしよう…顔がニヤける…まさか…嬉しいのか!?僕っ!?
ありえない…ありえないけど…まさか…僕は…沖田君の事…好き…なの…?
「お?新八1人か?」
僕が呆然と座り込んでいる所に、扉からひょっこり顔を出した銀八先生がやってきて手招きする。
「悪いけど次の時間に配るプリント、運んどいて〜?」
「あ、はい…」
先生と一緒に教科準備室に行って、プリントを受け取る。
「や〜、新八君は良い子で先生助かるわ〜。何?新八ってば先生の事大好きだから色々手伝ってくれるの?」
銀八先生が、にへら、と笑って僕の頭を撫でながら、顔を覗き込む。
はぁ、今は先生のおふざけに突っ込み入れるのもめんどくさいよ…
「違います。」
一言だけ返して踵を返す。
沖田君に頭を撫でられた時は、何かくすぐったくて幸せだった…
教室に帰る途中、図書室から帰って来た伊東君に合って、半分プリントを持ってもらう。
そう言えば前に沖田君もプリント持ってくれたっけ…
なんだかんだ言って優しいんだよなぁ…
教室に帰ると、神楽ちゃんと九兵衛さんが駆け寄ってきて、僕に詰め寄る。
「新八っ!ナニやってたアルカっ!バレー楽しかったヨ?」
「当然新八君も来ると思っていたんだ…」
神楽ちゃんが僕の腕にしがみついて、九兵衛さんがじっと僕を見る。
…なんとなくほんわかして嬉しいけど…ドキドキはしない…
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