KISSして
僕が警察に入って数年来、こんな面倒くさい事件に当たった事は無かった。
それも、こんな不思議な現象が起こるなんて…
とてもじゃないけど、科学じゃ解明出来るとは思えない。
こんな事、僕じゃ分かんないよっ!僕の専門は数学だったんだからっ!
…あの人なら…きっと分かるんだろうなぁ…
でも…
「志村!お前、アノ物理学者の先生と大学の同期なんだって?」
僕がそんな事を考えていたら、すっごいタイミングで、上司の近藤さんが僕の肩を叩く。
このにこにこ顔が、曲者なんだよな…嫌な予感…
「餅は餅屋と言うだろう?俺達刑事がいくら考えたって、判らんもんは判らん。そんな事は専門家に聞くのが一番だ。そう思わんか?志村。」
「…そうですよね。でも僕は…」
「志村はアノ先生と同期で友人なんだそうじゃないか。山崎から聞いたぞ?」
山崎さんんんんん!
僕が睨むと、すっと目を逸らす。
「アノ先生は偏屈で有名だからなぁ。友人の言う事なら、少しは融通してくれるんじゃないか?」
「でも近藤さん、僕は…」
「頼んだぞ?」
僕の意見はまるごと無視して、近藤さんがニカッと笑う。
…逃げられないよなぁ…
山崎さんめー!山崎さんだって同期のくせに…あの人に会いたくないからって僕に振ったんだよ、絶対っ!
そりゃぁ、変わり物で偏屈で意地悪で我儘だけど…良い所も有るんだよ?…少しだけど…
…逢いたいけど…逢いたくない…
だって僕は…好きだから…
逢わないでいたら、忘れるかと思ってたけど、忘れられない…
もっとずっと、好きになって…今逢ってしまったら…止められない…きっと…
僕が行きたくないって目で訴えても、近藤さんのにこにこ笑いは行けと言う…
…仕方ない…行くか…
「…行ってきます…」
僕がのろのろと上着を掴んで席を立つと、近藤さんが良い笑顔で頼んだぞー、と手を振る。
はぁ…
事件解決の為だから…仕方ないんだよね…
暴走しないように…頑張んなきゃ…
ちょっと遠い目をしながら、僕は母校に車を走らせた。
懐かしい中庭、懐かしい教室…そんな中でも一番懐かしい研究室の前に立った僕は…やっぱり躊躇する。
あの頃は…2人でずっとココに入り浸ってたっけ…
あの人は、今もココに居る…
僕は、なんとか思い切って、ドアに手を掛けてそっと開く。
「…沖田さん…?」
そーっと中を覗くと…あれ…?誰も居ない…お昼でも食べに行ってるのかな…?
コツコツと靴の音を響かせて中に入って行くけど…やっぱり誰も居ない。
しくじった…連絡してから来れば良かった…
ホッとしたようながっかりしたような…複雑…
「新八ィ、久しぶりですねィ。」
突然、がばりと後ろから抱きつかれる。
こんな事する人は…それに…この声を忘れるわけがない…
「…沖田さん…アンタ相変わらず…」
ホント、冗談でこんな事するのは止めて欲しい…僕の心臓がもたないよ…
「新八が隙だらけだからだろィ。本当に警察官かよ、ずっと後ろに居たぜ?俺ァ。」
えっ!?後ろ…って…あー…扉の後ろに居やがったな…?
相変わらず気配消すの上手いよ、この人…学生の頃も、散々驚かしてくれたっけ…
「あーもう、ホント相変わらずですね、沖田さんは…」
「んな事すんのは新八だけでィ。俺ァ新八が好きだからねェ。」
「あー、ハイハイ…」
またそうやって…その一言で、僕がどれだけドキドキしてるかなんて知らないんだよ、コノ人…
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