ほわいと・くりすます



結局あの後、総悟君には何も聞けないでクリスマスイブになってしまいました。

クリスマスの日に友達皆でパーティをする、って事になってるんですが…イブは皆イロイロ忙しいらしくて…僕の予定は真っ白です。

神楽ちゃんは、下宿先の坂田先生とパーティをするそうです。昨日作ったケーキを2人で食べるんだ!ってはりきってました。

そよちゃんは、お兄さんとパーティをするそうです。お兄さんお休み取れたんだ…

高杉先輩と坂本先輩は、家族でパーティをするそうです。アノ2人の家族って…どんな家族なのか気になる所です。

山崎君は、ミントン部の皆でパーティをするそうです。仲良くて良いなぁ…

で、ミツバさんは土方君とパーティをやるみたいです…アノ、マヨケーキが炸裂するんでしょうか…
土方君も、朝からソワソワしてたし…タバコのフィルターに火付けたりしてたしね…

姉上は…近藤さんとやるんだろうな…パーティ…昨日作ったチョコケーキをラッピングしてたし。
近藤君は近藤君で、朝からずぅ――――っと姉上にアタックしてたしね…その度に殴られてたけど…放課後にはOKしてもらえる筈だよ―…頑張れ―…

総悟君は…放課後になると、すぐに帰ってしまった。彼女と待ち合わせなんかして、今頃デートしてるんだろうなぁ…

なんか僕だけ寂しいなぁ…仕方ないんで父上と2人でご馳走食べちゃおう!!なんて…はぁ…


僕がとぼとぼと帰り道を歩いていると、空から白いモノがふわりふわりと降りてくる。

わぁ…雪だ…

何か凄いんじゃない?ホワイトクリスマスだよ!!恋人と一緒なら…なんてロマンチックなんだろう…
良かったねぇ…総悟君………

…何だろう…何でこんな…胸が苦しいんだろう…すごく…胸が痛い…友達だと思ってたのに、何も言って貰えなかったからかな…別にからかったりしないのに…少ししか………

大江戸ストアに寄って、晩ご飯の買い物をして家に帰る。今日はちょっと凝ったご飯作るから、早く帰らないと父上が待ちくたびれちゃうからね!
僕が大急ぎで道を歩いていると、道の向こう側を、制服のままの総悟君が女の子と歩いていた。…珍しく頬を染めたりしてさ…あぁ、あの娘が彼女さんか…なんだよ、可愛い娘じゃん!よぉーし、からかって………

…アレ…?どうしたんだろ、僕…足が動かないよ…何で勝手に物陰に隠れてるんだよ…なんでこんなに息苦しくて、心臓が痛くて…涙が勝手に出て来てるんだよっ…!!
分かんない…分かんないけど…もうあの光景は見ていたくない…
僕は動かなくなった足を無理矢理動かして、家へ帰った。

家に帰った僕を迎えてくれたのは、1枚のメモだけだった。
父上は道場主協会の人達とパーティをするそうで…なんだよ…僕独りじゃん…今日は奮発して鳥の足も買ってきたってのにっ!い―よ、僕1人で2本食べてやるっ!!すんげ―贅沢っ!!

何も考えたくなくて一心不乱に料理をする。
気が付くと、クリスマスっぽい料理が、テーブルの上に所狭しと並んでいた。
…どうしよう…何も考えないで作ってたら、作りすぎちゃったよ…こんなの…独りじゃ…食べられないよっ…
ボロボロと流れ出す涙を止められない。
いいや…どうせ独りだもん、泣きたいだけ泣いちゃえ…

ひぐひぐと、しゃくりあげるまで泣いたら少しスッキリした。
…恥ずかしいなぁ、僕…誰も居なくて良かった…
泣いたらお腹がすいてきた。
…食べよ……
とりあえず、サッパリしたくて顔を洗う。ごしごしと顔を拭いていると電話が鳴った。
…誰だろ…?父上が何か忘れ物でもしたのかな…?

「もしもし父上?」

「…俺ァ新八の親父さんになった覚えはねぇですぜぃ?」

電話は総悟君からだった。

「総悟君!?何?どうしたの僕に何か用?ってか、今電話してる場合じゃないでしょう!!」

「何がでぃ?俺ぁこれから…」

「…何?でーとの報告?水くさいよね―――、いつの間に彼女なんて…」

「イヤ、だから!何の話でィ!?」

…ここまで来てまだしらばっくれるんだ…そんなに僕にはバレたくないのかよ…

「総悟君―、さっき商店街で女の子と歩いてるの、見ちゃったんだよ?僕。それに、昨日ミツバさんが総悟君は今日彼女とデートだって言ってたよ―?も―、水くさいなぁ!しらばっくれちゃってさ!!」

ワザと明るく言うけど…何だよ、もぅ!!出るな!涙っ!!

「…新八ィ…何で泣いてんでぃ…」

「なっ…泣いてないよっ!何で僕が泣かなきゃなんないんだよっ!!」

「イヤ、声が…ま、見りゃ判るか。今から新八んち行くから。」

「えっ?ちょっと総悟君、デートはどうしたのっ!?」

「ん―?…これからでさぁ。」


ピンポ―――ン


「あ、お客さんだ…総悟君何か用なの?僕も忙しいからちょっとなら良いよ?ごめん後で電話切るね?」

総悟君何の用だろ…?彼女さん待たせて…あ、何かプレゼントでもくれるのかな?ああ見えて結構義理堅いからなぁ、総悟君。マフラーのお礼する!!って張り切ってたし…

とりあえずお客さんだ。何だろ?父上が又何か通販でもしたのかな…?
ぐいっ、と涙を拭いて、はんこを持って玄関に急ぐ。