「は―い、どちら様―?」
ガラガラと引き戸を開けると、ソコにはクリスマスっぽい包み紙の大きな荷物を持った人。
その後ろには、ひよこ色のマフラー…
大量の雪をかぶった総悟君が立っていた。
「めりーくりすます。」
プレゼントを差し出して、にっ、と笑う。
「そっ…総悟君…?えっ!?もしかして、さっきの電話、外から…?」
「そ―でさぁ。」
ニコニコと笑ったまま、真新しい携帯を持ち上げる。
「あ、ケータイ買ったんだ!あ―、もぅ雪まみれ!!いつから居たの?」
僕がパタパタと頭や肩に乗った雪を払ってあげると、満足そうに笑う。
「ほら、やっぱり泣いてやがる。どうしたぃ?」
「べっ…別にっ!」
総悟君が、そおっと僕の頬を拭う。
アレ…?何だよっ!又涙出てくるしっ!!
…だって何か…総悟君の姿見たら安心したってゆうか…嬉しかったってゆうか…
「さて、それじゃで―としやしょうぜ?で―と。」
総悟君がプレゼントを持ったまま、ズカズカと家に上がり込む。ちょっ…何だよ!で―とってっ!?
「総悟君っ!彼女の所行かなくて良いのっ!?待ってるんじゃないの?雪降ってるよ?外っ!こんな中女の子待たせちゃダメだよっ!!」
僕は…総悟君に行って欲しくないけど…
「は?だからさっきから何言ってんでぃ?俺ァ始めっから誰も待たせちゃいやせんぜ?」
本気で不思議そうな顔で僕を見る。
「イヤ、だって…さっき女の子と歩いてて…それにミツバさんも彼女とデートって…」
自然と顔が俯く。いくらドSだからって…そこまでやるかよ…
「…俺の弁当作ってくれてる『彼女』は誰でぃ。姉上には面倒だからそう言っただけでぃ。それに、さっきって…あぁ、中学ん時のダチにコイツ選んでもらってやしたけど。」
総悟君が、ぐっ、とプレゼントを差し出す。
「…ダチ……?」
「ダチ。」
差し出されたプレゼントを受け取って、首をかしげる。友達って…
「総悟君、友達居たんだ…」
「…失礼ですねィ新八ァ…俺のガラスのハートはボロボロでさぁ…」
ジロリ、と睨まれても不思議だよ、総悟君に女の子の友達って。イメージ湧かない…
気にした風もなく、総悟君がそのまますたすたと居間まで入り込む。
「…あ―…家族でパーティですかぃ…?俺もこっそり混ぜてもらえやせんかねぃ…ウチ、今日帰れないんでさぁ…姉上が土方さん呼んじまってやすから…」
テーブルに並んだ料理を見て、総悟君が言う。あぁ!!だから彼女と、って…
「こっそりも何も、ウチ今日暫らく誰も帰ってきませんから…父上は道場主協会のパーティ行ってるし、姉上は…多分近藤君と…」
「マジですかぃ!?やりやしたね、近藤さん!!あ―、でも夜には帰ってきちまいやすね、姐さんなら…まぁ、初めっから飛ばすのも近藤さんらしくねぇや。でも、じゃぁコレは何ですかィ?新八1人でこれ…」
僕は赤くなって俯く。
「や、なんか寂しくて…料理作るのに夢中になってたらこんな事に…」
総悟君がニヤリと笑って、僕の頭をぽんぽんと撫でる。
「安心しなせぇ、こんぐらい俺が平らげてやりまさぁ!」
「よろしくお願いします。」
僕が笑顔で言うと、ふっ、と綺麗に笑う。
…どくん………
なっ…何だ!?何が!?どうしたんだよっ!?僕の心臓っ!!かっ…顔が何か…赤くなってるんですがっ!!!
僕が慌ててお茶を取りに台所へ行くと、総悟君は適当にテーブルの前に座って待っていてくれる。
どっ…どうしたんだ?僕っ!?なんでこんなにドキドキ…何か有ったっけ?今!?総悟君が笑って…
…どくん…
えっ…笑顔ぉ―!?何でそんな…総悟君の笑顔で…って…僕ぁ片思い中の女の子かよっ!?
ナイナイナイナイナイナイナイナイ!!
「新八ィ―!腹減りやした―!何やってんですかぃ―?」
僕が慌ててペットボトルを持って行くと、待ちきれなかったのか、総悟君がもう食べ始めていた。
「ちょっと!お行儀悪いですよっ!?少しぐらい待てないんですか!?アンタはっ!!」
へ―い、と言って箸を置く。
お茶の用意もして、いただきます!と、手を合わせて食べ始める。
見る見るうちにあんなに沢山あった料理が減っていく。
ホント、美味しそうに食べてくれるなぁ、総悟君は。父上や姉上や神楽ちゃんは全然反応無いもんなぁ…こんだけ幸せそうに食べてくれると僕も幸せになっちゃうよ…
半分ぐらい食べ終わった総悟君が、にこにこしながら僕を見てる。
…何だろ…食べ辛いよ…
「何?総悟君…そんなに見られてたら食べ辛いよ!」
「俺ァ新八が食べてんの見るの、好きなんでぃ。小動物がメシ食ってるみたいで可愛いんでぃ。」
「ペットか!?ペット扱いかっ!?」
なっ…なんて事言うんだこの人はっ!!かっ…可愛いって…
僕の顔はきっと真っ赤だよ…っ!それに…どきどきして…胸がいっぱいになっちゃって…
「…総悟君…もぅ少し食べない…?」
「食べやす!!」
にい、と笑って料理に手を伸ばす。…もしかして…確信犯…?
「総悟君…もしかして…食べ足り無かったから、僕にプレッシャーかけて食べ辛くした…?」
僕がじっと見ると、目を逸らした。
「総悟君っ!!」
「新八が食べてんの見るの好きなのはホントでさぁ!…それ以外も…」
「何が…」
僕が聞き返そうとすると、電話が鳴った。
電話を取ってみると、父上だった。雪が凄いので、今日は帰れないと言う。
アレ?そんなに雪凄いのかなぁ…?
父上の電話を切ってすぐに、又電話が鳴る。今度は姉上だった。姉上も今日近藤さんの家に泊まるって…姉上ぇぇぇぇぇぇぇ!!!
「何言ってんですか姉上っ!!ぼかぁ許しませんよっ!!そんなふしだらなっ!!」
「新ちゃん!変な想像しないで頂戴!外見てないの?こんな雪の中外に出たら遭難します!!」
「へっ…?
カーテンを開けて外を見ると、真っ白だった。
…えぇぇぇぇぇぇぇ!?何これ何これ何これっ!!!!!
いつの間にこんなに雪…ってか、コレ吹雪いてんじゃん!!雪すんごい積もってんじゃんっ!!
「分かりました…姉上お気を付けて…」
「だから、違いますから!ちゃんと客間を用意してくれました!!それに…そんな事する人じゃないもの…」
「姉上…男なんてみんな一緒ですよ…?」
「違うもの!!」
ゴガシャン!!
スゴイ勢いで電話が切れた…他所様のお宅の電話なのに…
まぁ、姉上だしなぁ…大丈夫だろう…
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