1年の終わりに…
大忙しの大みそか。家の大掃除を終わらせて、おせちを作って夜に備える。
今日は総悟君と2年参りに行くんだ!
お願いする事はいっぱい有るし!何より、夜に一緒にお出かけ出来るのが嬉しい…!
僕が夜を楽しみに、わくわくしながらお重におせちを詰めていると、玄関で呼び鈴が鳴る。
「新ちゃんお願いー!」
高い所の掃除をしていた姉上が叫んだんで、僕はエプロンもそのままに玄関へ走る。
「はーい、どなたー?」
僕が玄関を開けると、そこには長い髪を頭のてっぺんで結ったイケメンが立っていた。
「あの…?」
「妙ちゃん!かっ…可愛く成長したんだね!僕の想像通り…いや、それ以上だよ!髪切っちゃったんだね…?でも、すっごくにっ…にあっ…似合ってて、かわっ…かっ…かっ…可愛いよっ!」
イケメンが真っ赤になって言いたい事言って僕に抱きついてくる。
…恥ずかしいんなら言わなきゃいいのに…
ってか!
ぎゃぁぁぁぁぁ――――――っ!何だ!?この力!?
「うわわわわわわわわわっ!」
思わず僕が叫ぶと、物凄いスピードで姉上が走ってくる。
「てめー!ウチの新ちゃんに何してくれてんだゴラァ!」
姉上の鉄拳がイケメンに迫る。
あぁぁぁぁ!姉上っ!こんなひょろっとした人に姉上の鉄拳は!!死んじゃうよ!!
僕の心配をよそに、イケメンは姉上の鉄拳を軽々とかわして、僕を横抱きにして飛び退る。
「えっ?あれ…?妙ちゃん…?」
イケメンが、僕と姉上を見比べて首を傾げる。
「ぼっ…僕は新八ですっ!貴方は誰ですかっ!?」
「僕は…」
「九ちゃん…?」
姉上が、ビックリした顔でイケメンを見る。
九ちゃん…?って…
「えぇっ!?九兵衛さん!?柳生の…?」
「あぁ、僕は柳生九兵衛。そうか、君は新八君か!大きくなったね。」
九兵衛さんが微笑んで僕の頭を撫でる。
「九ちゃん、いつ日本に?」
姉上がいつもの笑顔に戻って、にこやかに九兵衛さんに尋ねる。
「さっき着いたんだ。1番に妙ちゃんに逢いたくて、真っ直ぐここに来たんだ。」
九兵衛さんが姉上の元へ歩いていく。
姉上もにっこり笑って家へと入ってもらう。
僕がお茶を出して、暫く3人でのほほんと世間話をしていると、急に九兵衛さんが姿勢を正して、姉上の手を取る。
「妙ちゃん、1番にここへ来たのは他でもない。僕は妙ちゃんに、けっ…結婚を前提に交際を申し込みに来たんだ!妙ちゃん!僕と…」
「ダメよ。」
姉上が笑顔のままばっさりと斬り捨てる。
…久し振りに見たなぁー…この顔の姉上…
「なっ…なんで…?だって、子供の頃約束したじゃないか!!」
九兵衛さんは涙目だ…純粋な人だなぁ…子供の頃の約束って…
「だって私、もう心に決めた男性が居るもの。それに…九ちゃん女の子じゃない。」
「なっ…!?」
えぇぇぇっ!?九兵衛さん女の子だったのぉぉぉぉぉ!?
「そっ…そんなの関係ないよっ!それに、その男は本当に妙ちゃんに釣り合うような男なの!?僕が見極めてやるよ!!」
イヤ、日本では結婚するには性別は関係あるよね…?
絶対に絶対に僕はそいつを見極めるんだ!と引かない九兵衛さんも一緒に2年参りに行く事になった。
近藤君なら、大丈夫だよね…
約束の時間の少し前に、総悟君と近藤君が僕らを迎えに来る。
九兵衛さんも一緒に行く事になった事を告げると、近藤君がニカっと笑う。
「そうか、妙さんと新八君の幼馴染ですか!外国帰りだと、日本の行事が懐かしいでしょう?是非一緒に行きましょう!俺は近藤勲、こっちは沖田総悟だ。宜しくたのみます。」
流石近藤君、心が広いよ…
九兵衛さんも感心したのか、こっそり僕に器のデカイ男だな!と言ってきた。
えへへ…いい感じじゃない?
「でも、流石妙さんと新八君の幼馴染さんですね!美人ですな!」
近藤君…九兵衛さんが女の子だってすぐ分かったんだ…
九兵衛さんもびっくりしたらしく、近藤君に近付いて何か話しかけてる。
「何よ、近藤君…九ちゃんは確かに可愛いけど…」
「まぁまぁ姉上。近藤君がやっと付き合えた姉上を振って九兵衛さんに行く訳無いでしょうが…」
「付き合ってないもの…」
「…は…?…ちょっと姉上!?まだ付き合ってないんですか!?」
「だって…イザとなったら言え無いんだもの…」
ぷぅ、と膨れる姿は可愛いケド!何やってるんですか!?姉上!!
「…そんな事してたら、近藤君誰かに取られちゃいますよ?」
「そんな事ないもの!」
キッ!と僕を睨む姉上は涙目だ。
もぅ…素直じゃないんだから…
片隅でコソコソ話をしてた僕らの所に総悟君がやってくる。
「新八ィ、あの女なんなんでぃ?俺の事、すんげぇ睨んでくるぜ?」
「総悟君を…?」
僕が九兵衛さんの方を見ると、確かにすんごく睨んでる。
何で…?って、あぁっ!誤解してるよ、九兵衛さん!!
僕が総悟君に事情を説明すると、総悟君ははぁ、と溜息をつく。
「俺の方だと思ってやがんのかィ…ま、近藤さんじゃ勝ち目ねぇからな!俺だと思いたいんだろうよ。」
と言って、へへん、と笑う。
ホント、総悟君って近藤君に懐いてるよね…ちょっと妬けちゃうよ…
「総悟君はそれで良いんだ…」
僕がぷい、と横を見ると、にやっと笑った総悟君が僕をぎゅうと抱きしめる。
「何でぃ、ヤキモチかよ。俺ァ新八以外にゃ興味ないぜ?」
僕もぎゅうと抱き返すと、いきなり後ろから引っ張られる。
「新八君!何で君がこの男に抱き付く!?コイツが妙ちゃんの恋人なんだろう?」
九兵衛さんが怒った顔で言うと、近藤君がえぇっ!?総悟マジでぇぇぇぇぇ!?と反応する。
そんな訳ないじゃん…
「違います!!近藤君は、私の…!?」
「たっ…妙さん…?」
「私のストーカーです!!」
「妙さんー…」
姉上…まだ言わないのか…
「コイツじゃないのか!?妙ちゃんはいけめんが好きだったよね?じゃぁ誰…?」
「とりあえず神社に移動しますよ−?」
どうにも収集つかなくなってきたんで、皆を引っ張って神社に移動する。
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