でも、あれ?じゃぁもう1人って…ふと九兵衛さんの隣を見ると、背の高い、ちょっと特徴的な髪の色の男の人…
えっ!?ちょっ…あの人…っ!?
僕はびっくりして、椅子を鳴らして立ち上がってしまった。

「いっ…伊東さん…?」

「おや、しんぱちさん…?………なんで学生服…?」

伊東さんがちょっとだけ目を見開いて後退る。

「あ〜?志村知り合いか?あぁ、そういや剣道部だっけ。」

何が?剣道部?居たっけ伊東さん…ってか海外帰りじゃ…?
僕がキョトンとしていると、近藤君が助け船を出してくれる。

「伊東先生は1年の冬までしか居なかったからなぁ。あの剣道部で、物静かな知性派だったから、新八君が知らなくても無理は無いさ!2年参りの時に会ったんだろう?」

「えっ!?何で近藤君が知って…?」

「いやぁ、あの後伊東先生にメールを貰ったんだがね?色々誤解が有るみたいだったから、驚くだろうと思って黙ってたんだ。伊東先生―、驚いただろう?」

近藤君が楽しそうに、はっはっはっ、と笑う。
…剣道部の部長になる人はみんなこういう人なのか…?

「…驚いた。近藤君も人が悪い…」

それまで固まってた伊東さんが、ちょっと顔を赤くして拗ねてみせる。
何だ?皆知りあいなのかな…?

大騒ぎのHRが終わって、ちょっとした休み時間になると、早速皆が2人を囲む。
僕も行ってみようっと。

先に九兵衛さんの所に行く。

「おはようございます、九兵衛さん。姉上と同じクラスになっちゃいましたね…」

「あぁ、おはよう新八君…はは…ちょっと辛いよ…僕に気を使ってくれるんだね、君は。優しい子だな…」

九兵衛さんが乾いた笑いを浮かべる。
…やっぱり辛そうだな…

「あのっ!僕じゃあんまり力になれないかもしれませんけど、何か有ったら言って下さいね?」

僕が言うと、九兵衛さんが立ち上がって僕の手を握る。

「有難う、新八君。君は本当に良い子だな!」

感動したみたいな九兵衛さんがにっこり笑って僕を見る。
そっ…そんな…照れるなぁ…
僕らがほのぼのしてると、後ろから声が掛かる。

「新八さん、ちょっと良いかな?」

「はい?」

僕が振り返ると、後ろには伊東さんが立っていた。
あ、伊東さんにはちゃんとお礼言わないと!

「伊東さん、その節はお世話になりました!有難う御座いました。」

僕がぺこりと頭を下げると、伊東さんが爽やかに微笑む。

「礼には及ばないよ。人として当然の事をしたまでだからね。」

すっごい紳士…やっぱり外国に留学してたからかな…?
でもこの感じ…どこかで見たような…

「しかし新八さん…いや、新八君か…男の子だったなんてびっくりしたよ…」

伊東さんがじっと僕を見て苦笑する。

「あの―…もしかして僕…女の子と間違われてました…?」

僕が遠い目をして乾いた笑いを浮かべてると、伊東さんが慌てて言い訳する。

「あ、失礼…あんまり可愛かったんでね、女の子だと思ってしまったよ。それに、沖田君と…」

あぁっ!そういえば彼氏だって言っちゃったっけ…

「いえ、あの、はい…」

僕が赤くなってあわあわしてると、伊東さんがスッ、と近付いて僕の耳元で囁く。
ひゃぁっ!

「大丈夫、言いふらしたりしないから…」

うわ、伊東さん優しい…
妙にスキンシップが多いのは、やっぱり外国生活を体験してきたからなんだろうな…

「いっ…いえ、あの…総悟君との事は別に…クラスの皆、知ってますから…」

僕がぱたぱたと手を振って言うと、意外そうな顔をする。

「おや、そうなのかい?じゃぁ…」

伊東さんがそう言ってにっこり笑うと、誰かが後ろから僕を抱きしめる。
なっ…!?何がぁぁぁぁぁっ!?

「新八ィ、何なんでィ!伊東先生と随分仲良しじゃねぇか…」

「総悟君っ!もぅ、又ぁ…それは後で話すよっ!とりあえず離れてよっ!」

僕がじたばた暴れてなんとか後ろを振り向くと、総悟君は伊東さんを睨んでた…

「流石、沖田君は鼻が利く。それにしてもガチガチに固めて余裕が無いね…僕ならそんな事はしないけど?」

「うるせぇよ!アンタの事ァ、俺はまだ信用しちゃいねェ…」

「心外だなぁ。和解したじゃないか、僕らは。」

うわっ…何か空気が痛い…
何か有ったのかなぁ…?この2人…

「まぁ、沖田君とは闘いにはなるかな。新八君?」

「はっ…はい!」

何!?僕ぅ?

「沖田君は止めて、僕にしとかないかい?」

「…は…?」

「あぁ、沖田君と別れて僕と付き合わないか?」

「……………は………………?」

え―と…何言ってんだ?この人…?

「新八君が男の子でも、好きになってしまったんだ。沖田君みたいな狂犬と君みたいな可愛い子が一緒に居るなんて…油断してると噛みつかれるよ?」

伊東さんが、極上の笑顔でにっこり笑う。