恋の駆け引き



クセの有る生徒が多いと名高い銀魂高校に入学して早3年。
1・2年と、そんな噂なんか忘れるぐらい平和に過ごしてきたのに…それまでの平和な日々のしわ寄せみたいに、3年のクラスは大変な人達が集まってしまったみたいで…そんな皆に僕は気に入られてしまったみたいで…毎日がそりゃぁもう大騒ぎだ。

あぁ、昔は平和だったな…

嫌われるよりは全然良いけど…
でも!僕は男だし!!
からかわれてると思って油断してたら貞操の危機って意味が分からないからっ!!

…気が重いけど、学校サボるなんて出来ないしな…
こんな時、皆ならサボるんだろうな…特に沖田君…良いよな…僕もあんな自由な人になりたいよ…

重い足を引きずって教室まで行くと、早速隣の席の桂君が僕に絡んでくる。

「おはよう新八君。」

『おはよう、志村うしろ』

桂君といつも一緒に居る、どっかで見たような黄色いくちばしの白い生き物(?)エリザベスが、そんな看板を見せる。

「おはよう桂君、って朝からドリフかよっ!?後ろに何が有るんだよっ!?」

ツッコミつつも一応後ろを確認すると、やっぱり何も無い。

『バカが見る〜』

「ムッ…ムカツクなぁ!」

僕が机にドン、とカバンを置くと、桂君が僕の頭を撫でる。
…何だよ…子供じゃないっての…

「やっぱり新八君のツッコミ、俺には必要だな。どうだ?コンビを組んで夫婦漫才をしてはくれまいか?50円あげるから。」

「安っ!僕って50円!?」

桂君を見ると、ちょっと頬を染めてもじもじとしてる…
今どこに照れる所が有ったんだ!?

「足りんなら、んまい棒も付けよう。チョコ味だぞ?」

…何でそれでコンビ組むと思ってんだ…?
自信満々な顔が何かムカツク…

「だから嫌ですってば!僕は将来公務員になるんです!安定した生活が良いんです!」

キッパリ言って、鞄から教科書とかを出して机にしまう。
もう付き合ってらんないよっ!

「むぅ…俺は諦めんぞ?又明日な!」

そう言って席に着く。
…イヤ、又明日って…席隣だし…まだ朝のHRすら始まって無いし…
でもソレを口に出したらまた煩いだろうから…心の中だけで突っ込んでおく。

鞄の中身を全部机に入れた所で、今度は爽やかに笑った風紀委員一同がやってくる。

「おはよ〜、新八君!」

「あ、おはよう山崎君。」

「おはよう、新八君。」

「おはよう御座います、伊東君」

「うす…」

「おはよう、土方君。」

「おはよう新八君、妙さんは?」

「おはよう御座います、近藤君。姉上多分もうすぐ来ますよ?」

皆、普通にしてれば良い人達なのに…何で…
ってか、一番大変な人がまだ来て無いや…どうしたんだろ?いっつも皆と一緒に来るのに…

「新八君、今日の放課後は空いているかな?図書館で一緒に勉強しないか?」

伊東君がすっごく有難い申し出をしてくれるけど…

「すみません、今日はバイトで…」

「そうか…じゃぁバイトの後に食事でも…」

スッ…と僕の机の上にホテルのルームキーが置かれる…

「イヤイヤイヤ、僕ら高校生ですから!ってか僕男ですから!!」

「ははは、知っているよ?そんな事ぐらい」

僕がツッコミを入れても、爽やかに微笑んでる…何考えてんだ、伊東君っ!?

「新八くーん!それより俺とミントンしようよ!」

山崎君が伊東君を押しのけて僕の前に来る。
この人もしつこくミントンに誘うよね…ってか、僕の話聞いてなかったのかな…?

「ですから、僕今日バイトで…」

「終わるまで待ってるよ!」

爽やかに言われても…

「イエ、バイトで疲れてますから、バトミントンはちょっと…」

「そうー?じゃぁ明日…」

「山崎しつけーよ。新八、コレ弁当…どうせチャイナ娘に盗られんだろ?」

土方君が山崎君を押しやって僕の机の上にお弁当を置くけど…

「やっ…イエ、今日は盗られないようにしますんで!お気持ちだけで…」

…土方君のお弁当って、全てがマヨネーズまみれなんだよな…僕には無理…

「…そうか…」

土方君が残念そうに俯くけど、僕には無理ですからっ!!!

「新八君、妙さんはまだかな?」

にこにこ笑った近藤君がするりと僕の隣にやってくる。