「まだのようです…そういえば、遅いなぁ…どうしたんだろ…?」
「じゃぁ今のうちに…新八君、今度の休みに映画でもどうだい?」
「えぇっ!?近藤君と、僕が!?どうして!?」
近藤君はウチの姉上に恋してるから、僕にはおかしな事言って来なかったのに!何でいきなり…?
僕がビックリして近藤君を見ると、あぁ、という顔で笑う。
「いや、外堀から埋めていこうかと…仲良くしような?弟よ!」
近藤君がそう言うと、皆が近藤君を囲む。
あ、神楽ちゃんも居る…
「神楽ちゃんおはよー」
「新八待ってるネ。今このゴリラ倒すアル。」
「手伝うぞ、リーダー。」
「ゴリラのクセに、新八君に手を出そうとは…」
「…斬る…」
「ヒドいっスよ、委員長〜」
口調は軽いけど、皆顔が怖い…
「そんな、映画ぐらいで…」
僕が声を掛けても聞いてくれなくて、皆が近藤君を囲んでパンチやケリを入れてる…
あぁぁぁぁ…!暴力反対〜!!
あわあわしていると、ガラリと教室の戸が開く。
あ!先生…って、姉上と…沖田君…?
何故か眼鏡をかけた沖田君と僕の姉上が、手を繋いで教室に入ってくる。
…なんで…?
それを見てると、何でか分からないけど胸がモヤモヤする…
お話したら分かるかと思って、2人に駆け寄る。
「おはよう、沖田君。姉上…それ、どうしたんですか…?」
「あら新ちゃん、どうしたって…沖田君が途中で眠りそうになってたから連れて来たのよ?」
姉上が!?沖田君を!?…ってか姉上…何で顔が赤いんですかっ!?
それに…まだしっかり手を繋いでるし…
「沖田君…」
僕が声を掛けても、沖田君はボーッとしたまま自分の席に向かう。
…無視かよっ…
仕方ない…姉上の方に聞くか…
「姉上、まさか…沖田君が新しい彼氏…?」
「さぁ、どうかしら。」
うふふ、と笑って姉上も自分の席に行ってしまう。
なっ…何で否定しないんだよっ…!
僕が自分の席に戻ると、後ろの席で沖田君が突っ伏して寝ていた。
…何かムカツク…
「近藤君、待ち合わせは何時にする?」
僕は、ふらふらと自分の席に戻ろうとしていた近藤君の制服の袖を掴んで、話し掛ける。
「お、新八君その気になってくれたか!じゃあ、駅前に11時でどうだ?昼飯食べてから映画に行こう。」
「わぁ、楽しみです!」
「そうか、仲良くしような!」
「はい、もちろん。」
僕らがにっこりと笑い合うと、四方八方からビシッ、と音がする。
…なんだろ…?
首をかしげながら自分の席に着くと、丁度銀八先生が教室に入ってくる。
さぁ、今日1日の始まりだ…沖田君が起きるまでが僕の安息だよな…今までなんか、問題にもならないくらい、大変なんだ…
HRが終わって、1時間目が始まって、休憩時間になっても沖田君は眠ったままで…
平和なんだけど…平和なんだけど、何か変な感じだ。
いつもなら、授業中でも構わず色々話してくるのにさ…や、別に寂しいとかそんなんじゃ無いし!
ここの所ずっとそんなんだったから、ちょっと落ち着かないだけだし…
うん、寂しくなんか…無いし…
2時間目が終わる頃、むくりと起き上がった沖田君が、休憩時間になった途端、姉上の所に行く。
…ホントに付き合い始めたのかな、2人…沖田君、近藤君が姉上の事好きなの知ってるのに…
「新八君、総悟の事が気になるかい?」
にこにこ笑った近藤君が、沖田君の席に座って僕の制服を引っ張る。
近藤君は…姉上の事心配じゃないのかな…?
「そんな事無いですけど姉上の事は心配ですね。ってか、近藤君こそ心配じゃ無いんですか?沖田君に姉上とられたんじゃ…」
「ははは、総悟は妙さんには興味は無いだろ。新八君が大好きだからな!」
「はっ…恥ずかしいなぁ…分かんないですよ?姉上は僕と同じ顔だし…女の子だし…結構優しいトコ有るし…可愛いトコだって有るし…沖田君が好きにならないなんて言いきれないじゃないですか。それに姉上イケメン好きだし。」
言ってて何でか悲しくなってきた。
何で…?よっぽどシスコンなのかな…僕…
「そんな事は無いだろう。総悟は新八君の外見だけが好きなんじゃないぞ?妙さんだってそうだ。ちゃんと中身を見てくれる女性だ。」
近藤君が、僕の頭を撫でる。
…姉上が本当に中身を見てるんなら…きっと近藤君の事好きになるよ…?
僕が大人しく頭を撫でられてると、遠くから何かが飛んできて、近藤君に当たる。
続いてあちこちから色んな物が飛んできて。ビシビシと近藤君に当たる。
「ちょっ!やーめーろーよぉぉぉぉぉー!」
僕が近藤君を庇うと、おっそろしい殺気が飛んでくる。
えっ!?僕!?
キョロキョロ辺りを見回すと…姉上!?すっごい眼でこっちを睨んでた気が…でも今は何か楽しそうに沖田君と話してる…
まさか…まさか姉上、近藤君の事…
いや、ナイナイナイナイナイ!ナイ!!
そんな事有りません!僕が許しません!!
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