せんせいといっしょ



中学に入ってすぐにやったテストを持って帰った日、ソレを姉上に見せると、姉上の顔が凍った。

「…そーちゃん、コレは何…?」

「こないだやったテストでさァ。あんまり良く出来なかったけど、僕としては…」

「…良く、出来なかった…?」

ビキッ、という音が聞こえた気がする…

「そーちゃん?」

姉上の全開の笑顔が怖い…
俺が小さくなると、はぁ、と溜息をつく。

「100点を取れとは言わないけれど…これはあんまりよ?そーちゃん。…何か考えないといけないわね…」

「…へい…」

怒った姉上に逆らえるはずもなく、俺は大人しく頷いた。
姉上…変な事考えねェでくれると良いんですがねィ…





そんな話をしていた次の日、学校から帰るのを見計らったように、姉上が家に帰って来た。

「姉上、今日は早いですね。」

「えぇ。そーちゃん、ちゃんと帰って来てるわね?今日から家庭教師の先生に来てもらう事にしたのよ?」

「えっ!?今からですか!?」

ちょっ…姉上気が早すぎ…

「だってそーちゃん、事前に言っておいたら逃げちゃうもの…」

姉上が困った顔で俺を見る。
確かに…先に言われてたら俺ァ逃げまさァ…
流石だぜ、姉上…すげぇや…
でも、昨日の今日でそんなにすぐ家庭教師なんてみつかんのか?

「でも、昨日の今日で良く見つかりましたね。」

「それがね?会社の後輩の妙ちゃんに相談してみたら、弟さんが家庭教師もしているっていうから、お願いしちゃったの。凄い偶然でしょ?」

「へぇ、そうですねィ…でも、そんな急に来て貰ったら迷惑なんじゃねェですかィ?」

「そんな事ないみたいよ?だってもう一緒に来てくれてるんですもの。先生、どうぞ。」

ガチャリ、と居間のドアが開いて、気弱そうな男が入ってくる。
黒髪の眼鏡で…俺とそんな年変わんないんじゃねェか?
こいつが家庭教師…?こんな奴に教わる事なんざねぇよ。

「妙ちゃんの弟さんの、新八君よ?とっても優秀な方なのよ?」

姉上が自分の事のように自慢するのが何かムカツク…
ソイツはそんな事無いです!なんて謙遜してるけど、姉上が俺以外を褒めてるなんて…
へっ、良いぜ。イビリ倒して自分から辞めさせてやるぜィ!
さってと、まずは大人しくしといて、勉強が始まったら苛めてやる…

「よっ…よろしくお願いします!沖田総悟です。姉が無理言ってすみません…」

ちょっと演技して、純情で大人しそうなガキを演じてやるぜィ…
上目遣いで見上げてやると、ソイツと目が合う。

「こんにちわ、君が総悟君?僕は銀魂高校2年の志村新八です。よろしくね?」

そして、ソイツがにっこりと笑った。

…な…んだ…?
世界が急にキラキラして見える…
その上アイツ、バックに花背負ってねェか…?アレは…向日葵…?
急に俺の体温が上がって、上手く話せねェ…