何だ?コレ…?
「…沖田総悟…です…」
俺がやっとの思いで、かろうじて名前だけ言うと、姉上がにっこり笑う。
「あら珍しい。そーちゃん照れてるわ。」
そして、クスクスと笑う。
ちょっ…!?そんな訳ねぇだろィ!!
「おねーちゃんっ!」
「良かった、仲良く出来そうだね。」
えへへ、と笑う顔が可愛くて…って何だ!?俺おかしいんじゃねぇの!?コイツ男だぞ!?可愛いって何だ!?
もう1回、そっとソイツの顔を覗き見ると、やっぱりにこにこ笑ってて…キラキラしていて、可愛い…
やっぱり俺おかしい…病院行かねェと駄目だな…
「じゃぁ、早速お願いしますね。私は会社に戻りますので。」
微笑んで姉上が家を出ていく。
「あ、はい任せて下さい。総悟君どうしようか?ココでする?それとも部屋でする?」
今度は小首を傾げて俺を覗き込んでくる。
しっ…心臓が爆発しそうでィっ!!
「なっ…なななななななっ…何をっ!?」
「何を、って…勉強だけど?」
「…ここで…する…」
俺ァ何を考えちまったんでィ…やっぱり俺…どっかおかしい…
頭を冷やす為にも、走って部屋に行って教科書とノートを持ってくる。
あー、チクショウ、どうしたんでィ…何でこんなに心臓がドキドキ言うんでィ…何でこんなに顔が熱くなるんでィ…
絶対何か病気でィ…明日…近藤さんの所に行ってみよう…
俺が教科書を持って居間に戻ると、何でか居間の空気が寒かった。
…あれ…?エアコン入れたのか…?
「…総悟君…君のテスト、見せてもらったよ…コレは遣り甲斐有るねぇ………」
スッと顔を上げたソイツの笑顔は姉上のソレと一緒で…
おっ…俺をビビらせるたァ、中々やるねィ…
「お手柔らかに、たの…」
「さっさと座れっ!貴様に無駄口を叩いている暇など無いっ!」
額に変な鉢巻を巻いた途端、ソイツが鬼に変わった。
そっからは延々と基本を叩き込まれて…俺がぐったりとしだした頃に、やっと約束していた時間が来たらしい。
「あ、もうこんな時間。それじゃぁ僕、そろそろお暇するね?家で姉上が待ってるんだ。」
あ…元に戻った…
「総悟君は物覚え良いから、ちゃんとやったらすぐに勉強出来るようになるよ?」
えへへ、と笑って僕の頭をぽんぽんと撫でる。
なっ…!?子供扱いは…っ…やめろ…って言おうと思ったけど…
撫でられてるソコが、妙に暖かくて…そのまま大人しくしてた。
「…頑張ってやるよ…」
俺が照れ隠しで、フイっ、と横を向いて言うと、又ぽんぽんと撫でられる。
「あはは、頑張ってね?じゃぁ、そのやる気で来週までにこのプリントやっておいてね?」
はい、と渡されたのは手書きのプリントで…
綺麗な字だな…
「こんなの軽いぜ!」
「わ、頼もしいな!でも、分からない所はちゃんと調べてやって良いんだよ?分からないまま適当にはやっちゃダメだからね?」
「…おぅ…」
俺が素直に言うと、又頭を撫でられる。
何でこんなに…きもちいんだろ…
他の奴なら、こんな事無いのに…
「じゃぁ、僕帰るね。又来週よろしくね?総悟君。」
ソイツがにこにこ笑って、手を振って帰っていく。
あ…
「せんせー、名前、もっかい教えて下せェ。」
俺が言うと、ビックリした顔をした後、幸せそうに笑う。
「僕はね、新八。志村新八だよ。」
「…新八先生…又来週な!」
「うん、又来週ね。」
にこにこ笑いながら、手を振って言ってしまう…
何でだろ…スゲェ寂しい…
勉強して頭良くなったら、これが何なのか判んのかねェ…?
そうなら、一生懸命勉強するぜ…?俺ァ…
◆
それから毎週、新八先生は家にやってきた。
寺門通親衛隊(新八は隊長なんだそうだ)の鉢巻きを巻くと鬼になるけど、それ以外は優しくて…キラキラしてる。
心臓のドキドキは納まんねェし、体温も異常に高くなる。
あんまりおかしいんで、ちっさい時から姉上と一緒に世話になってる近藤さんの病院に行って診て貰った。
そしたら、体はどっこも異常ねぇって言われちまった。
んで、近藤さんはニカッと笑って、その病は俺じゃぁ治せねーなぁ、って言った。
やっぱり病気なんだ、俺…
決死の覚悟で姉上にも言ったら、姉上も近藤さんと同じ顔で笑って、
「あら、そーちゃんったらおマセさん。」
とか言われちまった…
…何がでィ…?
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