うるとらだーりん



新八が女だったって知って早１週間。
既成事実は作ったものの、怒っちまった新八は、俺と逢ってもくれねぇ。
万事屋に行っても居ねぇし、恒道館に行っても居ねぇし。避けられてんのかねェ、俺ァ…

何でィ何でィ、あんな悦んでたクセに…もう俺無しじゃいられねェだろィ…？新八ィ…
ってか顔も見れないなんて、俺が限界でィ。
あー…新八に逢いてェなァ…

無駄かもしれねェけど、今日も見廻りにかこつけて大江戸ストアのタイムセールを覗いてみる。
新八居ねェかなァ…

俺がキョロキョロと見回しながら野菜コーナーに向かって歩いてくと、ご機嫌な新八の声が聞こえる。
…居た！！

「やっと依頼料が入って久し振りの買い物なんですから逃がしませんよ？ちゃんと荷物持ちして下さいね！」

「んだよぁ…荷物持ちなら沖田君が居るだろ〜？」

「アンタらの食いブチだろうがァァァァ！何人に頼ってるんですかァァァァァァァっ！！」

「だって新八よォ、オマエら１週間ぐらい逢ってないだろ〜？そろそろ体が疼いて…」

「アホかァァァァァァァァ！？」

盛大なツッコミと、バチ―ンという音と共に銀の旦那が俺の足元に滑り込んでくる。
…相変わらずなお人だァ…コノ人ァ…
俺がじとりと見降ろしていると、寝っ転がったまんまの旦那がニヤリと笑う。

「おー、噂をすれば…後は任せた！」

ぐたっとしてた筈の旦那が、物凄ェ速さで立ちあがって走り去っていく…そんなに荷物持ちしたくねぇのか…

「…よォ…」

ちょいと緊張しながら俺が声を掛けると、新八が真っ赤になる。
１週間ぶりだからか、いつもよりもっと可愛く見えらァ…まぁ、新八はいつも可愛いけどねェ。
逃げられるかと心配で、足早に近寄っていくと、固まっちまってんのか新八は動かない。
ぎゅうと手を握ると、ビクリと新八の体が跳ねる。

…触られんのも、嫌なのかねェ…

「新八ィ…俺ん事…もうイヤになっちまったのかィ…？触られんのもイヤかィ…？」

「そっ…そんな事有りませんっ！！何でそんな…」

「だってよー、ここ１週間、新八の姿すら見れなかったから…俺の事避けてんのかと思った…嫌われちまったのかと思った…」

俺がちょいとヘコんで文句を言うと、真っ赤な顔のまま、新八がぷぅと膨れる。

「嫌いになんて、なる訳無いじゃないですか！珍しく仕事が入ってまして…ちょっと出たっきり戻れなかったんです…逢いたかったです…沖田さん…」

そう言って、俺の制服の袖をぎゅっと掴んでくる。
何だコレ。誘ってるだろ、新八ァ…

「俺も逢いたかったでさァ…すっげぇ…」

そのまま抱き締めようとしたら、するっと抜けてカートに手を掛ける。

「当然万事屋でお茶飲んでいきますよね？お茶菓子買って帰りましょう！沖田さん、何が食べたいですか？お団子？お饅頭？かりんとうとかも良いですね！」

にこにこ笑いながら、久し振りにお給料入ったんですよ？と言って菓子売り場に向かう…

「あー…新八ィ…」

「はい？何にするか決まりました？」

「…新八が喰いてェ…」

俺が言うと、ぼふん、と音がするぐらい赤くなって、俯いちまった…
やべ…怒られる…何か言い訳…

「あー…あのですねィ…」

「僕も…」

「へっ？」

「…僕も…食べて欲しいです…」

真っ赤な顔でぽそぽそと恥ずかしそうにんな事言われちゃァ、喰わねェ訳にはいかねェだろ。
カートにぽいぽいと団子を入れて、新八の手を引く。
さっさと会計を済ませて、袋に詰めて、荷物を持って、先に立ってさっさと歩きだすと、新八は俺の隊服の裾を掴んでついてくる。

「あっ…あれ…？沖田さん？万事屋こっちじゃ無いですよ…？」

新八が焦ったように俺を引き戻そうとするんで、耳元に口を寄せて、囁いてやる。

「オメェが喰わせてくれる、って言ったんだぜ？今更止めるは無いでさァ…」

にっこりと極上の笑顔を浮かべてやると、新八がうっ、と詰まる。
そのままスタスタとホテル街に向かうと、俺の制服を掴んだまんまの新八がとてとてとついてくる。

「…やっ、あのっ、食料品とか…持ったままだし…あの…」

「冷蔵庫ぐらい有るだろィ。」

俺が言うと、ぐっと黙るんで、そのまま手近な所に連れ込んだ。


２


→