一通り済まして新八と荷物を万事屋に送っていくと、ニヤニヤ顔の旦那に迎えられた…
新八はそそくさとお茶の用意をすると台所に逃げ込んだんで、俺はソファに座り込む。

「沖田君〜、随分遅かったじゃない。」

「まぁねェ、俺ァそんなに早い方じゃねェんで。」

「ふ〜ん。所でさぁ、新八ってどうなん?意外と巨乳なの?それともつるぺた?」

…やっぱりな…この旦那が気付いて無い訳ねェと思ったんだ…

「まぁ、そこそこ、かねェ…俺好みでさァ。」

「へ〜、無い訳じゃないんだ…ま、無理しないでやってね?壊さない程度で。」

「判ってまさァ。ちゃんと1日2回まで、って決めてやすから大丈夫でさァ。」

「あっそ。」

「さっさとガキ作って嫁に貰いやすんで、そん時ァよろしくお願ェしまさァ。姐さんとか姐さんとか姐さん。」

「イヤ、それは俺じゃぁ無理だから。沖田君頑張れ。」

俺達が姐さんの説得を押し付け合ってると、パタパタと新八が戻ってくる。

「お茶お待たせしました!…って、意外と仲良しですよね、2人とも。何のお話ですか?」

にっこりと笑った新八に、2人声を揃える。

「姐さんの説得を頼もうかと。」
「妙の説得を頼もうかと。」

「は?姉上?何をですか?僕が頼みましょうか?」

きょとん、と小首を傾げる姿は可愛い。はてしなく可愛い。

「イヤ、俺と新八の結婚の承諾を貰いに行く時に…外堀から固めとこうかと…」

「子供作ってから行くんだろ?でもそれじゃ沖田君殺されね?」

2人でまだ言い合ってると、新八がダラダラと汗を流す。

「銀さん…?今、子供って…」

「だって女の子だろ?新八が黙ってっから、言っちゃ駄目なのかと思って。銀さんが気付かない訳無いでしょうが。」

新八が、うっと詰まって顔を赤くした後、有難う御座いますと言ってペコリと頭を下げる。

「…もしかして…もう皆さん気付いてます…?…僕が…女の子だって…」

新八が気まずそうに言うと、旦那があー、とか言う。

「バァさんは分かってんな、アレ。俺に手を出すな、って言ってきたから。キャサリンも分かってんな〜、アレ。ドM忍者も知ってそうだし、神楽もアレなんとなく分かってんだろ。」

「ってー事は、新八の周りは皆知ってるって事ですねィ?」

「まぁそうだろうな。大体は感づいてんじゃね?」

「後は真選組ですかィ…………いーや、めんどくせェ。結婚の報告すれば気付くだろ。」

俺がずっ、と茶をすすると、旦那がソファにひっくり返ってオイオイ、と言う。

「イヤ、沖田君。ゴリさん辺りビビるだろ…マヨラーもビビ…んのは見てぇなぁ…よし、銀さんも行くわ。」

「…旦那も良い性格してやすね…」

なんでか話が纏まって、今から3人で真選組屯所に結婚の挨拶をしに行く事になった。
まぁ…善は急げ、って言いやすからね…
屯所に着いて局長室に行くと、都合良く土方も居た。

「近藤さん、ちょいと話が有るんですが、良いですかィ?」

「おぉ、どうした総悟、改まって…」

俺らがきちんと机の前に座ると、近藤さんと土方が向かいに座る。
山崎が茶を持って来たんで、山崎も座らせた。

「どうしたんですか?隊長と万事屋って…珍しい組み合わせですね。」

「いやぁ、保護者同伴の方が良いと思いやして。」

「…保護者…?」

3人が怪訝な顔をするんで、ニヤつきそうになるのを押さえながら、真面目な顔を作る。

「近藤さん、俺結婚する事に決めやした。新八と。」

グイッと新八の肩を抱き寄せると、3人が3人ともアホ面を下げる。

「えっ!?ちょっと総悟君!?新八君は男の子だよ?判ってる?」

近藤さんが、あわあわとお茶を飲んで、噴き出す。
土方は、限界まで深く吸い込んだ煙草で指を火傷する。
山崎は、どこか遠くを見ている。何かブツブツ言ってるみてェだ。

「何にも問題は無ェでさァ。新八は女なんだから。」

俺が言い放つと、土方が寄って来て俺の額に手を当てる。

「熱なんざ無ェよ。本当の事でィ。」

「まったまたー!冗談だよな!?冗談だと言ってくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

近藤さんが叫ぶと、銀の旦那が、フンっ、と鼻で笑う。

「なになに?オメェら本当に気付いて無かったの?俺はすぐに気付いたけど〜?」

ふふん、って顔で3人を見ると、土方がムッとする。

「イヤおめぇ、判んねぇだろ。だって見た目男だろ。乳無ぇし。」

そう言って新八をじっと見やがる。見てんじゃねェよ、土方コノヤロー!

「イヤイヤイヤ、無い、無いから。男だって。男だと言えー!」

…土方が壊れた。新八に手ェ出したら殺す。

「…おかしいとは思ってたんですよね…だって新八君何か良い匂いするし…男にしちゃぁ肩とか華奢だし…月イチですっごく具合悪そうだったし…女の子なら納得いく…」

山崎が、監察の目で新八を見る。
そんな山崎の言葉を聞いて、近藤さんと土方が真面目な表情になる。

「新八君…君は本当に女の子なのかい…?」

「はい、父に男の子として育てられましたが、女の子です。戸籍が…男なんですが…本当に、僕は女の子です。騙していてすみませんでした。」

近藤さんの真摯な態度に、新八も真っ直ぐ背筋を伸ばして深々と頭を下げる。
その姿を見ていた近藤さんが、すっくと立ち上がり俺達の方に寄ってくる。
まさか…新八を怒るのか…?
新八をかばった俺を嬉しそうに見降ろし、そっと手で制して、ぽんぽん、と新八の頭を撫でた。

「辛かったろうな。もう女の子として生きて良いんだよ?戸籍は俺は何とかするから、総悟の事を、宜しくな?」

にっこりと笑った近藤さんを見つめて、新八の目からぽろぽろと涙がこぼれる。
…だから俺はこの人が信用出来るんでィ…好きなんでィ…

「えっ!?ちょっ、新八君!?どうした!?俺何かまずい事言った!?」

近藤さんが慌てて挙動不審な動きをすると、新八がえへへと笑う。

「すみません、安心したら涙が…有難う御座います、近藤さん…」

俺がハンカチを渡すと、ぎゅうと抱きついてくる。
ぎゅうと抱き締めると、ほう、と溜息が聞こえる…緊張…してたんだねェ…

新八が落ち着くまで抱き締めてると、大人達が何だか悪だくみしてるみたいだ。
後でちゃんと教えて下せェよ?ま、今は新八抱き締めるのに忙しくて聞けねェけどな。