始まりはいつもの公園
最近良く会う人が居る。
それは買い物の帰り道だったり、万事屋への行き帰りの道だったり、珍しく仕事に向かう途中だったり…とりあえず、毎日会っている。
そうなると不思議なもんで、その人と親しくなったような気になってくる。
会わないと、何だか物足りなくなってきたりもする。
ほら、今日も…
「お、又逢いやしたね、新八君。」
「こんにちわ、沖田さん。最近良く会いますね。」
「全くでさァ。波長が合うんですかねェ。」
「そうなんですかね?」
今日は、買い物の帰りだ。
何でか僕が持ってた荷物を半分持ってくれて、スタスタと前を歩いていく。
まぁ、かなり楽出来るんで構わないんだけど…でも…
「沖田さんっ!万事屋そっちじゃないですよ?」
「あぁ、公園に行こうかと。ジュース奢ってやらァ、ちょっと付き合いなせェ。」
「ジュース!?すんまっせん!!」
「良いって事よ。局中法度にも有らァ、新八君には優しくしろ、って。」
会ったらいつも、そんな風に飲み物やらお菓子やらを奢ってくれたりもする。
何で奢ってくれるんですか?って聞くと、いつも『局中法度だから』って言うけど…
でも、全くの無表情で言われても、冗談なんだか本気なんだかさっぱり分からない…
沖田さんの事は、あんまり知ってる訳じゃないけど、近藤さんの事を凄く慕ってるって事ぐらいは知ってる。
伊東さんのアノ時、落ちていく近藤さんを珍しく必死で追いかけてたし…だから僕も思わず掴んじゃったんだ、この人の事…
でも、だからと言って、近藤さんが決めた変なきまりを、こんなに忠実に守らなくても良いと思うんだ。
会う度に何か奢ってくれたりとか、荷物持ってくれたりとか…や、僕は有難いんだけどね?
でも…沖田さんがそんな変な決まりを守るなんて、何か変な気分だ…他の事は守って無いみたいなのに…
それとも、僕が知らないだけでそれなりに守ってるのかな…?
「どうしたィ、ジュース要らないんで?」
「あ!いりますいりますっ!!」
気付いたら立ち止まって考え事をしていたらしく、ちょっと先から沖田さんが叫ぶ。
そのまま踵を返してスタスタと歩きだしてしまうんで、小走りで追いかけて隣に並ぶ。
…何かさぁ…さりげなく重い方持ってんじゃん、この人…何か走りやすいと思ったよ…
このビジュアルで、この気配り。
そりゃぁ女の子達も騒ぐ訳だよ、羨ましい…
こういう人が居るからさ、僕の方まで女の子が回ってこないんだよね、きっと。
そうだよ!決して僕がモテないんじゃ無くって、皆こういう目先のカッコいい人に群がってるから、僕に気付かないだけなんだよ!
僕だってホラ、結構イケてるしさ!
沖田さんみたいなそういうちょっとした気配りを学べばさぁ!
…きっと沖田さんは30過ぎても鷹にはならないんだろうなぁ…ってかもう鷹じゃなかったりして!
あれ…?この人いくつだっけ…?
「…沖田さんっておいくつなんですか?」
「は?なんでィ唐突に…18でィ。」
「えっ!?18にもなって神楽ちゃんとマジ喧嘩してんですか!?」
僕がつい習性でツッコミを入れてしまうと、沖田さんがムッとして立ち止まる。
あ、今のはヤバかった…どうしよう…
「…そんなにジュース、飲みたくないんで…?」
「すみまっせん!!ちょっと調子こいてましたァァァァァ!!」
僕が光速で謝り倒すと、沖田さんが又歩き出す。
でも、なんか俯いてブツブツ言ってる…怒っちゃったのかなぁ…
「…沖田さん…?怒っちゃいました…?」
「新八君は…大人の男の方が…好きなんで…?」
「は?」
相変わらず、沖田さんの言う事は良く意味が分からない…
好きって…なんで対象が男…?
あぁ、アレかな?尊敬出来る人物、とかかな…?
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