僕が怪訝な顔で沖田さんを見ると、はっとした沖田さんが、気まずそうに顔をそむける。
あー、とかうー、とかつぶやいてた後に、じっと僕を見て、ぼそぼそと言い訳する。

「イヤ、ホラ、アレでさァ…」

何だろ…?

「僕は、大人とか子供とか関係なく男の人は別に好きじゃありませんが…」

僕が言うと、ダヨネー、とか相槌うってるけど…かなり慌ててるよな、この人…
こんなに感情を見せるなんて…初めてじゃない…?
なんか…こういう感じの方が良いのにな…

「変な意味じゃなくて、尊敬とかそういう意味ででさァ。」

「イヤ、それ以外だと怖いですから。そうですね、やっぱり頼りがいのある大人な人の方が好きですかね…いつまでも少年の心を持ってるんだ、とか言うヤツにロクなヤツ居ないですよ…」

年だけとった、自称心は永遠の少年な銀髪を思い出して吐き捨てる。
そうだよ、アノ人みたいな大人にはなるまい…僕はいつだってキラめいてやる…!

「…へー…参考になりやした…」

僕がにこりと微笑むと、沖田さんが、考え込む。
何だろ…何か考えちゃったのかな…?

「…沖田さん…何か悩んでました…?僕でよかったら相談に乗りますが…」

「あー…すまねぇ…」

公園のベンチに着いたんで、僕がよっこいしょ、と荷物を置いて座ると、僕の隣に荷物を置いた沖田さんが自販機に向かう。
…掛け声とか掛け無かったよな…僕も気を付けよっと…
暫くして戻ってきた沖田さんが、缶の飲み物を僕に渡す。
あ、コーヒーかな………

「何でおしるこォォォォォォォォ!?どんだけベタなんだ、アンタァァァァァァァァ!!僕は銀さんじゃないですからねっ!!もしかしてさっきのアレですか!?大人の男がなんとかってヤツ…銀さんに憧れてるとでも思ったんですかっ!?違いますからね!憧れてなんかいないですからねっ!!特にそんなもん飲むのなんて憧れてませんからねっ!!」

僕がふぅふぅと肩で息を吐くと、ニヤリと笑った沖田さんがコーヒーの方を僕にくれる。

「じゃぁこっち飲みなせェ。おっと、お子様はブラックなんて飲めねェかな?」

ニヤニヤ笑いがムカツクなぁ!

「いただきます!言っときますけど、僕ァ普段からブラック派ですから!普通にブラックですから!」

受け取った缶を開けてゴクゴクと飲むと、沖田さんもおしるこを飲み始める。
うへぇ…ホントはブラックなんて苦くて飲めないけど…何か悔しいじゃん。


「ホントはアンタ、お茶が好きなんだろ?」

クスリと笑って、ポケットから僕がいつも飲んでいるお茶の缶を出して渡してくれる。
…なんだかんだ言って、この人大人だよな…気配り、ちゃんと出来るしさ…優しいし…

「…有難う御座います…」

お礼を言ってお茶を受け取ろうとすると、ぱしっと開けて渡してくれる。
…それぐらい自分で出来るのに…
有難くお茶を喉に流し込むと、口の中の苦味が和らぐ。
思わずにっこりと笑ってしまったら、沖田さんもにっこり笑ってた…
うわ…珍しい…そんな顔でも笑うんだ…何か…どきどきする…カッコいい人は得だよね…

お茶を飲み終わって、万事屋まで荷物を運んでもらったんでお茶に誘ってみると、見廻り途中なんで、って言って帰ってしまった。
…珍し…いっつもサボってると思ったけど、意外と真面目なのかもしれないや…



数日後、酢昆布をダシに神楽ちゃんを荷物持ちに確保して、大江戸ストアのタイムセールに挑んだ。
思ってたよりも、何もかもが安くって、ついつい買い過ぎてしまった…
2人で2個づつ袋を提げて、よいしょよいしょと運んでいると、前の方から沖田さんがやって来た。

「お、新八君にチャイナ。」

「あ、沖田さん。お久しぶりです、お仕事…」
「テンメェドS!ヤル気かヨ!?」

「神楽ちゃんっ!」

僕が慌てて止めようとするけど、沖田さんが穏やかに流す。

「おぅ、悪ィな。今日は遊んでやらねェよ。」

うわ、珍しい…今、忙しいのかな…?
そう思ってると、僕の荷物と神楽ちゃんの荷物を1個ずつ持って、先に立ってスタスタと歩きだす。

「あれ?沖田さん、仕事中じゃ・・・?」

「あー…休憩中。茶ァ飲むだろィ?」

そう言っていつものように公園に向かう。
ホント珍しい…いつもは神楽ちゃんと一緒の時は真っ直ぐ万事屋に向かうのに…
神楽ちゃんと顔を見合わせるけど、折角だから一緒に公園に向かう。
ベンチに着くと、サッサッとベンチを払って、ん、と言う。
…座れ、って事かな…?払ってくれるって…デートかよ…

「チャイナは何が良いんでィ。」

「わっ…ワタシにも奢ってくれるのカ…?」

「おう。」

神楽ちゃんがビクビクしながらベンチに座って、恐る恐る沖田さんを見上げる。

「じゃぁ、オレンジジュース…くださいヨ。」

沖田さんがベンチに荷物を置いて、自販機の方にスタスタと歩いていく。