キョロキョロと周りを見渡すと、凄い笑顔の沖田君と、びっくり顔の姉上と、親指を立てた近藤君と、真っ白になった皆が見えた。

「あっ…あのっ…今の…」

「なんでィ、新八俺の事好きだったんで?」

沖田君が言うと、止まっていた皆の時間が流れだす。

「えっ!?ちょっ…新八くーん!!何で!?何で!?」

山崎君が目の幅の涙を流してる…

「新八君落ち着いて。君は今混乱してるんだよ。」

…伊東君の方が混乱してるよ…ソレ、定春です。

「…総悟…斬る…」

土方君の瞳孔が限界まで開いて、木刀を構える…

「新八はワタシのお婿さんになるネ!毎日手料理たらふく食うアル!」

…神楽ちゃん…ソレ僕じゃなくても良いんじゃ…?

「そーかそーか、やっぱり新八君は俺の味方だったんだな!だそうですよ?妙さん!」

ニコニコ笑ってる近藤君の顔に姉上の手が伸びる…

「新ちゃん?変な事言わないでくれる?ゴリラと比べるなら、沖田君の方が全然良いわよ?」

近藤君にアイアンクローを決めながら、真っ赤な顔の姉上が僕に凄んでくる…
姉上…本当に沖田君の事好きなのかな…

「姉上…本気なんですか…?本気で沖田君の事…好きなんですか…?」

恐る恐る見上げると、更に赤くなった姉上と、土方君と神楽ちゃんの攻撃をかわしながら、心配そうに姉上を見る沖田さんが見えた…
そうか…本気なんだ…僕は…邪魔しちゃ…駄目なんだ…

「姉上…近藤さん離してあげて下さい…姉上が本気だったなんて知らなくって…邪魔してごめんなさい…近藤君も…邪魔しないように…僕が…」

ぐい、と引っ張ると、近藤君がどさりと僕の胸の中に倒れ込んでくる。
…こんなボロボロになっても…姉上の事好きなのかな…近藤君凄いや…
でも、2人が付き合ってるなら、僕ら邪魔なんだ…

僕ら…?
僕は…僕は沖田君の事好き…?
うん…もう遅いけど。好きになってた…

授業中に話しかけられるの、嫌じゃなかった…一緒にお弁当食べると楽しかった…神楽ちゃんの攻撃から守ってくれたり、土方君のマヨからも守ってくれた…
手を繋がれたり、肩を組むのも、ホントはそんなに嫌じゃ無かった…
嫌じゃ、なかったんだ…

胸の中の近藤君をぎゅっと抱きしめると、気が付いた近藤君が抱き込んでくれる…
僕が泣いてるの…気付いてくれたのかな…?
ちょっとだけ頼っても…良いよね…?
近藤君に抱きついて、止まらない涙を隠してると、いきなり後ろから引かれる。

「…何してんでさァ…俺ァそこまでしてやせんぜ…?」

「ウチの新ちゃんに何してくれてんだ、ゴリラ。」

沖田君…と…姉上…?
何で…?2人の為に…2人の為に僕…僕っ…!
思わず近藤君に向かって手を伸ばすと、近藤君も僕に手を伸ばす。
その瞬間、ビキッ、と音をたてて空気が怖いものになる。

「新八ィ…お前さん俺が良かったんじゃないんで…?」

「あんなにしつこく迫ってたのに…新ちゃんに乗り換えるつもり…?」

「妙さん…?」

な…にを…言って…?
貴方達が、僕らを要らないって言ったんじゃ…