哥哥襲来



吉原で大騒ぎが有って1週間、万事屋もすっかり落ち着いてしまった。

僕も神楽ちゃんも、自分の非力さに愕然として修業をしてはみたものの、そんなに簡単に強くなれる訳でもなく…
その上、僕らの周りには頼れる大人なんか居なくって…銀さんなんか、ちょっと尊敬してたりしたのにさ…ガッカリしちゃったよ…
もうさぁ、近藤さんに頼んで真選組で稽古付けてもらったり出来ないかなぁ?
土方さんとか沖田さんとか強い人に教わったら、なんかいけそうな気がするよ。
この際、義兄さんとか呼んでも良いよ、僕…

そんな事考えてはみたものの、やっぱり踏ん切りはつかなくって…アノ人を義兄とは…呼びたくないな…だらだらと日が経つにつれ、僕達の気持も落ち着いてしまった。


まぁ、何を考えていても僕らの生活は普通に続いて行くもので…
今日は大江戸ストアの月に1度の大売り出しの日で。
ここぞとばかりに日持ちのする食べ物を買い溜めする為に、銀さんと神楽ちゃんと定春と、4人で買い出しに出て戦利品を大量にゲットした。
吉原の騒動で、そこそこ依頼金貰ったからね!おやつも買っちゃったよ!!帰ったらお茶淹れて皆でおやつ食べよっと。

「米に味噌に砂糖に醤油に塩に缶詰に卵に…トイレットペーパーも買ったし…忘れ物無いですよね?」

「あ〜…無いんじゃね?そんだけ有ったら暫くもつだろ…」

「ふりかけも忘れてないヨ!新八は良いヨメになるネ!!」

「嫁にはならないよ、神楽ちゃん…」

「わふっ!」

「…定春まで…ならないってば…」

僕らがそんな話をしながら万事屋に戻ると、居間にピンクの頭が見えた。

…神楽ちゃん…?…は、一緒に買い物に行った…

「おっかえりー♪お邪魔してるよ。あ、サンドイッチ食べる?」

大量のサンドイッチを頬張りながら、小首を傾げるのは…

「神威ィィィィィィィィィィィーっ!!!!!!!!」

持っていた荷物をドサリと落として、神楽ちゃんが飛びかかり、銀さんが木刀を構える。
その、飛びかかった神楽ちゃんを軽く抑えて、銀さんに殺気を放った神威さんが、ニコリと僕に笑いかける。
…なっ…なんだ、コノ人………

「なんか色々邪魔が入ったけど…まぁ良いや。今日はね、眼鏡のキミに大切な話が有って、わざわざ、こんな辺境まで来たんだ。でも、意外と都会でビックリしちゃったよ。結構ヒト住んでんだね?」

片手で持てるだけサンドイッチを持って、ぱくぱくと食べながらにっこりと笑う。
なっ…ぼっ…僕に…!?アレか!?神楽ちゃんには手を出すな!!とかそういうアレかっ!?

「まぁ、落ち付いて座ってよ。あ、君達も食べて良いよ?サンドイッチ。阿伏兎が作ったからおいしいヨ?」

神威さんがそう言うと、台所から僕の割烹着を着て三角巾を着けた、あの時のおっさんがお茶を持ってやってくる…割烹着パツパツじゃね…?大変だなぁ…この人も…
気がつくと、神楽ちゃんと銀さんはソファに座ってモリモリとサンドイッチを食べている。
その前にトントンとお茶を置いて、阿伏兎さんが神威さんの斜め後ろに控える。
そして、僕にチラリと目を向けて、顔の前に片手を上げる。ごめん、って事なのかな…?

「ちょっと2人ともっ!そんな信用してパクパク食べて…っ…」

僕が2人を引っ張ると、ビックリしたような顔で神威さんが僕を見る。

「安心してよ、毒なんて入って無いから。そんなオモシロく無い殺し方なんてしないヨ。それに、俺のおヨメさんの関係者は殺さないから。」

にっこり笑っておっそろしい事を言うけれど…アレ…?待てよ?今何か変な事言わなかったか…?

「あのー、すみまっせん、僕の聞き間違いだとは思うんですけど、今何か変な事聞こえた気が…お嫁さんって…」

あ、しまった!つい習性で突っ込んじゃった…
でも…お嫁さんって…ここに居る女の子って神楽ちゃんだけだし…夜兎って兄妹でも…?
攻撃されるかと思って構えていた僕をじっと見たまま、神威さんが照れたように笑う。
…何…?

「あ、しまった、先に言っちゃった。話しっていうのはその事。俺ねー、君の事スキになっちゃった。俺のおヨメさんになって?俺は強いよ?」

頬を染めて照れ笑いする姿は可愛いけど…相手はアノ神威さんじゃんっ!!しっかり僕ぅぅぅぅっ!!

「イヤ、あの、僕男ですからっ!」

「えっ?」

心底驚いた顔で、キョトンとされてもっ!僕の方がキョトンだよっ!!
両手に持っていたサンドイッチを全部食べて、ぺろりと指を舐める。

なっ…なんかしぐさが色っぽ…って、何考えてんだよ僕ぅぅぅぅぅぅぅっ!!
神楽ちゃんも銀さんもなんで黙ってんだよっ!
僕が2人を見ると、2人ともばったりと倒れ込んでる…

「なっ…毒入って無いって…」

「毒なんざ入って無いよ?ちょっと大人しくしてて貰うんで、眠って貰っただけさ。」

阿伏兎さんが肩をすくめながらニヤリと笑う。
な…この人僕が男だって知ってたハズじゃんっ!
僕が阿伏兎さんに文句を言おうと一歩近付くと、笑顔のままの神威さんがスタスタと僕に近付いてくる。

なっ…何…

そのまま目の前に来て、ぺたりと僕の胸に手を当てる。
ビクリと肩を跳ねさせて、じっと僕の顔を見てそのままその手をするりと滑らせる。
…んやっ…なんか…変な感じ…
僕がビクリと震えても、動く手は止まらなくって…その手は僕の股間をするりと撫でる。

うわっ!ちょっとっ!!

僕が後ろに下がろうとすると、ガッチリと片手で掴まれて動けなくなる。
そのまま股間をもぞもぞと撫でられて…

「やぁっ…ちょっ…んぅっ…」

やだぁっ…変な声出たよぅっ…
でも…これで諦めてくれるんならっ…