きらきら
光に満ちたステージで、今日も笑顔でくるくるる。
可愛いスカートひらめかせ、歌って踊ってウインクきめて☆
ありがとうございましたっ、で、ペコリとお辞儀。
皆に夢を配ります。
今やすっかりアイドルだから、今日も元気に頑張りまぁ〜っす!
歌が終わって顔を上げると、マネージャーの沖田さんがにひゃりと笑う。
うん、なんとか上手く歌えたみたい。沖田さんがあの顔で笑ってくれてる時は、上手くいってる時なんだ。
…いつもの営業スマイルじゃなくって嬉しそうに笑ってくれてる時は…本当に安心する…
ステージを降りて雛壇に帰ると、たもさんがお疲れ様って言ってくれて、お通ちゃんが笑顔で迎えてくれる。
素早く隣に座ると、次に歌うアーティストさんがたもさんと話を始めて、後ろの方は暇になる。
…本当は、ちゃんとお話聞いてなきゃいけないんだけど…
「新ちゃん、今日も可愛かったよ!歌は…まぁ…アレだけど…」
「…ありがとう、お通ちゃん…」
あはは…とひきつり笑いを浮かべると、お通ちゃんもあはは、と笑ってくれる。
こんな…普通に話しかけて貰えるようになるなんて…1年前は想像もつかなかった。
…僕…志村新八は、ただのファンだったんだから…
そう、僕はお通ちゃんの親衛隊長まで務めるほどお通ちゃんが大好きで、少しでもお通ちゃんに近付きたくって、色々なオーディションを受けまくっていた。
でも…男のままの僕は、地味で冴え無い眼鏡で…何度チャレンジしても、受からなかった。
そんなある日、やけっぱちになっていた僕は、姉上に無理矢理女装させられて受けたオーディションに、受かってしまった。
流石にそのまま女の子としてアイドルをやっていくなんて出来なくって、本当は男なんですっ!って言ったんだけど…
今、マネージャーをやってくれている沖田さんが面白がって猛プッシュしてくれて…事務所の社長の近藤さんもそれに乗っかって…
僕は、女の子『新』として、アイドルデビューさせられてしまったんだ…
すぐにバレるだろうと思ってたのに、意外とバレないもので…
男としては複雑だけど、僕はいつの間にかトップアイドルの一員になっていた。
おかげでお通ちゃんともお話出来るようになれたんだけど…でもやっぱり女の子のフリしてるから…申し訳ない気分で一杯で…
そんな事思いながらも、やっぱりお通ちゃんとお話し出来るのは嬉しいし…何より僕は…すっごく応援してくれる沖田さんの期待を裏切りたくない。
それに…ファンだ、って言ってくれる皆の気持ちも分かるし…応援してくれる気持には応えたいと思うんだ。
番組の収録が終わって、皆楽屋にはけようと歩き出す。
僕もお通ちゃんと一緒に、皆さんにお疲れ様です、と挨拶しながらスタジオの外に向かう。
と、沖田さんがスッと僕らの横にやって来て、爽やかな笑顔で「お疲れィ」と言ってくれる。
この笑顔は営業用の作った笑顔だけど…やっぱりカッコ良いや…
「新ちゃんのマネさんカッコ良くて良いなぁ。私も真選組に移ろっかなー」
お通ちゃんがえへへ、と笑いながら沖田さんの腕に掴まる。
おっ…沖田さんはダメだもんっ…!
僕が慌てて沖田さんの隣に駆け寄ってスーツの裾をぎゅっと掴むと、お通ちゃんがあはは、と笑う。
「新ちゃんってばヤキモチやいてる!可愛い〜!!大丈夫、とらないよ。らぶらぶだなぁ!」
お通ちゃんが、僕のほっぺたをつんつん、とつついてすっごく近くでクスクス笑う。
「そっ…そんなんじゃ…」
「あは、新ちゃん真っ赤〜!可愛いっ!!もう、皆知ってるよ〜?新ちゃんとマネさんがらぶらぶだって。」
お通ちゃんがぎゅっと僕に抱きつく。
やば…胸の詰め物がズレちゃうっ…!ってか、それよりも、お通ちゃんの胸っ…胸がっ…!!
僕が焦って離れようとすると、沖田さんがスッと僕らの間に入って、僕を抱き締める。
「寺門さんと言えど、俺の新に手ェ出すのは止めて下せェ。」
「も〜、あっついなぁ!良いな〜私もカッコ良い彼氏欲しいよ!」
「わっ…私達そんなんじゃ…」
僕が慌てて沖田さんから離れると、お通ちゃんがくすりと笑う。
「新ちゃん、皆知ってるよ〜?新ちゃんとマネさんが付き合ってるの。皆、新ちゃんが可愛いから黙ってるんだよ?」
いたずらっぽくウインクして、お通ちゃんが笑う。
そう…こんな焦ってみせてるけど、これは本当は作戦なんだ。
僕が男だってバレないように、沖田さんと付き合ってる、って事にしてるんだ…
どっちも結構なスキャンダル、って気がするけど…付き合ってる、ってのはこの業界ではそこそこある事らしい。
「…そう…なの…?お通ちゃん、内緒にしてくれる…?」
「もちろん!」
あぁ、お通ちゃんはやっぱり優しくて可愛くて良い娘なんだ…
僕がえへへと笑ってありがとう、って言うと、お通ちゃんもえへへと笑ってどういたしまして、って言ってくれる。
「新ちゃんのそういうトコが可愛くて守ってあげたくなっちゃう!」
きゃー!と笑ったお通ちゃんに、僕は又ぎゅっと抱き締められてしまった!!
僕がじたばたと暴れると、沖田さんが後ろからぐいっと引っ張ってくれる。
「俺のでさァ。止めて下せェ。」
「はいはい。でも良いな〜、新ちゃんスレンダーで。私も新ちゃんみたいなおっぱいが良いな〜」
!?
やっ…ヤバいっ!!どうしよう…なんて言えば…
僕が困って俯くと、沖田さんがぽんぽんと僕の頭を撫でる。
「新はソレ気にしてんでさァ。そのうち俺がでっかくしてやるんで、今は言わないでやって下せェ。」
「いや〜ん、惚気られちゃった!頑張ってね?新ちゃん。」
「なっ…ちょっ…何言って…」
僕が真っ赤になると、お通ちゃんがにやん、と笑って走って行ってしまった。
にっこり、じゃなくて、にやん…
「もうっ!沖田さんお通ちゃんに何て事言うんですかっ!!」
「誤魔化せただろィ?」
そう言った沖田さんは、もう仕事の顔に戻ってて…僕の気持ちだけ、空回りしてる…
いつの間にか僕は、この人の事………沖田さんにとっては、そんな事ただの仕事なのに…
「そうですけど…っ…」
「さ、さっさと楽屋戻って次の仕事に行くぜィ。」
「…はい…」
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