はつこい



いつも俺の後ろを、そーちゃんそーちゃんと着いてきていた可愛いあの子が、江戸に引っ越してしまって十数年。
やっと見付けた俺のお嫁さんは、男になって帰って来た。

まぁ…初めっから男だったんだけど…
俺が勝手に女だ、って思ってたんだけど…

それでも俺は、結構ショックで…ちょっと冷たく当たってしまった。
スグに新だ、って判ったけど、気付かないフリして他人のフリで。
そしたら、新は全く俺に気付かなかった。
本気で俺なんか知らない、って顔して、

「沖田さん」

なんて言ってきた…そーちゃんって呼んでくれねェし…

「新よぉ…オメェまさか、俺の事忘れたのかィ…?」

「へっ…?新…って…何で沖田さんが僕の事そんな風に呼ぶんですか!?そんな呼び方したのなんて…小さい頃の…そーちゃんぐらいしか…」

「俺ァ、沖田総悟、って言いまさァ。」

「…おきた…そーご…?………そーちゃん…?」

俺がそう名乗ると、新が驚いた顔をした後、にっこりと笑う。

「そうでィ。探しやしたぜ?新。」

「うわー!懐かしいなぁ!僕が江戸に引っ越す事になった時は、泣いたよなぁ!そーちゃんとお別れしたくない、って。あの頃、僕、友達なんてそーちゃんしか居なかったし…立派になったんですね!」

新がきゃっきゃっとはしゃいで、可愛い笑顔を俺に振りまくから…何か、俺ァ男でも良くなっちまったんだ…

「新…」

「え?何ですか?ミツバお姉さんもお元気ですか?」

「おぅ、姉上も息災でさァ。姉上はまだ武州に居るんでさァ…なァ、新…」

「そっか、良かった…あ、何ですか?」

「新…俺ァ小せぇ頃からずっと決めてた事が有るんでィ…なぁ、新…俺の嫁になっちゃァくれねェかィ?」

「あぁ、嫁………嫁ェェェェェェェェ!?や、僕男ですからっ!嫁は無理ですからっ!!」

「そんなこたァねェよ、新なら立派な嫁になれまさァ。可愛いし…」

真っ赤になってわたわたと動いてるのが可愛くて、ぎゅうと抱き締めると、大人しくなる。

「かわっ…可愛くなんか…無いです…僕男だし…大体、僕は新八ですからっ…そーちゃん…僕の事女だと思ってたんじゃ…」

「ヘイ、思ってやした。男だったって知ってショックで…」

俺がそこまで言うと、新が酷く抵抗を始める。
それでも離すまいと、がっちり抱き締めた腕から、銀髪の侍が新を奪っていく。

「あっ!銀さんっ!!助かりました!!」

「ちょっと〜、チンピラ警察が新ちゃんになんの用〜?ウチの新八かどわかすの止めてくんない?」

ホッとした顔で銀髪を見上げる新を軽く抱きしめて軽口を叩いてるけど、銀髪の目はマジだ…コイツも…新の事…
おっさんのクセに、俺の新に慣れ慣れしいぜ…コイツ…
新を奪われて、やり場のなくなった手でバズーカを構えると、遠くから土方の声が響く。

「総ォォォォォ悟ォォォォォォォォ!!又サボって…テメー銀髪…子供に何をしてるんだ…?」

土方の目が剣呑なモノになり、銀髪から新をべりっと剥がして背後に庇う。
と、新が土方の隊服を、きゅっと掴んで引っ張る。

「あのっ、銀さんは僕の雇い主ですっ!それに、僕を助けてくれたんですっ!」

必死で言いつのる新は、土方を見上げると上目遣いになって…土方がうっすら赤くなりやがった…

「土方さんよォ、コイツァ武州に居た時の俺の幼馴染でィ。覚えてねェか?いっつも俺の後をトコトコ着いてきてた…新でィ。」

「は…?新って…アレ女の子だっただろ。おめぇが嫁にするって騒いでた…」

「そうでィ。男だったみたいでさァ。」

「………へー………」

土方の俺を見る目が可哀想なモノを見る目に変わる。
イラッとしまさァ…

「まぁ、俺ァ変わらず嫁にしやすけど。な?新?」

俺の発言に銀髪と土方が固まる。
へっ、オメェらおっさんと違って、俺ァ速攻でキめてくぜィ!
ついでに折角構えたんで、2人に向かってバズーカをぶちかます。
あわあわと慌てた新が駆け寄ると、2人がふらふらと手を振る。

チッ…仕留め損なっちまった…

ほっと溜息をついた新が又、キッ、と俺を睨んで真っ赤になる。

「だからっ!僕は男だって言ってるじゃないですかっ!からかわないで下さいっ!そうだ、からかわれたんだっ!そーちゃんは昔っからそう言う人だったっ!僕が女の子じゃ無かったから…意地悪してるんだっ!!」

真っ赤な顔でプリプリと怒ってるけど…女の子じゃ無かったって…そんな事で意地悪なんてしねぇぜ俺は。
そのまま新は、銀髪の手を引っ掴んで、ドスドスと歩いて行ってしまった。
まぁ、居所も判った事だし…じわじわと落としていきまさァ。