次の日も、その次の日も、俺は新八に逢いに行った。
その度に嫌な顔されっけど…俺はめげねェ。
ちっせぇ頃から、それだけは譲れねェ事だから。
それに…新八の顔が、嫌なだけじゃなく…何か悲しそうだから…

「おー、新八ィ、今日も可愛いねェ。そろそろ俺の嫁になる気になったかィ?」

「はいはい、もうそんな風にからかわれても、動揺なんてしませんから。」

そう言いつつも、ほっぺたを赤く染める姿はやっぱり可愛い。
俺ァからかってるつもりなんか、微塵も無いんですがねェ…何で信じてくれねェんでィ。

「からかってなんか、いやせんぜ?」

「じゃぁイジメかっ!?イジメなのかっ!?」

ぎゃあぎゃあと俺にくってかかってきても、真っ赤な顔じゃぁ可愛いだけでィ。

「かーわいいでさァ。」

俺に詰め寄ってくる新八を、軽く抑えて頭を撫でると耳まで真っ赤になる。

「もっ…もうっ!止めて下さいよっ!意地悪するのっ!!」

「俺はマジですぜ?からかっても、苛めてなんかもいねェよ。」

「…だからっ…僕は男ですってば…!」

「気にしねェ気にしねェ。」

「気にするわぁっ!!!!!」

俺がこんなに素直に自分の気持ちを言葉にするなんて、珍しいんですぜ?
判ってんのかねェ…?新八は…

「新はもっと可愛かったのにねェ…そーちゃんそーちゃん、って俺の後を着いてきてよォ…」

「はぁ!?ならそういう女の子探せば良いじゃないですかっ!」

「俺ァ新八が良いんでィ。」

首まで真っ赤になって…凄ェ美味そうでィ…
つい、新八のほっぺたをぺろりと舐めると、そこを抑えてガチガチに固まる。

「なっ…なっ…何すんだァァァァァァツ!?」

「イヤ、美味そうだったんで…」

「美味しくないよっ!!」

やっと動けるようになったのか、ばっと飛び退る。

「えー?」

「えー、じゃないっ!!」

ぷりぷりと怒る姿も可愛いや…そう思うとついつい笑ってしまう。

「へらへらするなっ!もぅ…どうしたいんだよ…」

今更何言ってんでィ…コイツァ…
俺が姿勢を正して真面目な顔になると、ぷりぷりと怒っていた新八もちょっと怯んだ感じになる。

「今更何言ってんでィ。俺ァずっと言ってやすぜ?新八ィ、俺と付き合いなせェ。むしろ嫁になれィ。」

じっと新八を見つめたまま俺がそう言うと、ぱたぱたと挙動不審になる。

「だからっ!僕もずっと言ってますよね?僕は男だってっ!!冗談もいい加減にして下さいっ!!」

「俺ァ…冗談なんて言ってるつもりは無いですぜ?小せぇ頃からずっと、新八を嫁にするって決めてんだ。」

「だからっ!それは僕の事女の子だって思ってたからでしょう!?もう違うって分かったんだからっ…男なんだから…そんなのなれる訳ないじゃん…お嫁さんなんて…なれる訳無いじゃん…」

新八が俯いてモゴモゴと喋りはじめる。
ぎゅっと手を握って引き寄せると、俯いていた新八が、はっと顔を上げる。

「男でも…可愛いって思っちまったんだから仕方ねェだろィ…俺ァ…新八が良いんでィ。新八じゃなきゃ駄目なんでィ!!」

俺にしちゃ、滅茶苦茶必死に新八に言って聞かせると、頑なだった新八の表情が、少しだけ緩む。

「新…」

「沖田隊長ー!またこんな所でサボって…あ!新八君こんにちわ。今日も大江戸ストアに行く?」

「あ…山崎さんこんにちわ…はい、タイムセールの時間に…」

「そうなの?じゃぁ又後でね!沖田隊長行きますよ?土方さんがめちゃくちゃ怒ってましたよ〜?」

山崎がにこにこ笑って新八に手を振りながら、俺の首根っこを掴んでずるずると引っ張る。
ちっ…もう少しで新八の気持ちも揺らぎそうだったってェのに…

「山崎ィ〜…なんで邪魔すんでィ…」

「だって、俺も新八君の事好きですから。ライバルの邪魔は出来るだけしますよ。」

にっこり笑ってるのに、背筋がうすら寒くなりやがる。
なんでィコイツ…山崎のクセに生意気でィ!
俺が刀を抜いて斬りかかろうとすると、ぱっと手を離した山崎が飛び退って、俺に叫ぶ。

「沖田隊長ー、近藤局長も心配してましたよ?総悟は最近サボってばっかりだ、って。」

「うっ…」

コイツ…近藤さんの名前出したら俺が大人しくなると思いやがって…
負けたみたいで悔しいけど、近藤さんに心配はかけられねェ…
その日は俺は大人しく屯所に帰った。