「あのっ、ご飯…もう良いですか…?」

「…おぅ、美味かった。ごちそうさん。」

チラリと僕を見て、又ひまわりに目を戻す。
…皆さんが変な事ばっか言うから…
警戒されちゃったのかな…でも、美味しかった、って言ってくれた…
何か…嬉しいよ…

食器を片付けて、お茶を持って部屋に戻ると沖田さんはソファに座って、まだひまわりを見ていた。

「…沖田さんっ!お茶どうぞ?ひまわり、好きなんですね。」

「おぅ、ありがとよ。コイツ見てっと何か忘れてる気がするんでさァ…誰か…大事なヤツを…」

…僕の…事かな…?そうだったら良いな…
沖田さんがずっと考え事をしてるんで、僕はテレビをつけてお茶を飲む。
パチパチとチャンネルを変えていると、あっ!お通ちゃん!!
そっか、新曲のプロモーションやってる時期か!
次のライブの為に、邪魔にならないように小さく歌いながら、振りの練習をしてると、何か視線が…

「なっ…何ですか…?あ、煩かったですか?すみません…」

「イヤ、可愛いなと思って。」

「そうですよね!沖田さんもそう思います?お通ちゃんの可愛さは、パンパないですよねっ!」

そっか、沖田さんもお通ちゃんの良さが分かるのかっ!
何か嬉しい!!

「イヤ、オメェさんが。」

「はっ!?」

おっ…おっおっおっ…沖田さん…っ…?
記憶…戻ったの…?

「なっ…何言ってんですかっ!?皆さんの言う事本気にしたんですかっ!?」

沖田さんがこいこい、と手招きしてソファをぱんぱんと叩く。
なっ…何だろ…?座れって事だよな…?
僕が言われるとおりにソファに座ると、沖田さんがぴとりとくっついてくる…

「なっ…!?」

慌てて沖田さんを見ると、するりと僕の頬を撫でて、眼鏡を取っていく…
ってちょとぉ!?何か…近っ…近い近い近いっ!!!!!

「おっ…沖田さんっ!悪ふざけは止めて下さいよ?何ですか?お通ちゃんを見れなくしようっていう意地悪ですかっ…?」

僕があわあわと焦って後ずさると、沖田さんがふっと笑う。

「寺門さんはもう出てねェよ?黙りなせェ。」

なっ…なんだ?この雰囲気っ!?
ニヤリと笑った沖田さんが、僕の腕の間から手を差し込んで、ぐっと背中を引き寄せる。

「だーっ!近いですってば!!…もしかして、記憶…戻ったんですか…?」

もうすぐ目の前にある表情からは、何も見えない…

「そうだと言ったら、オメェどうする…?」

そうだとしたら、僕は…
今迄精一杯の抵抗で押しやっていた胸を押す手を緩めて、そっと着物を掴む。

「だったら僕は…」

じっと見つめて、ぎゅっと目をつぶると、ひどく近くで沖田さんがふっと笑う。

「何でィ、オメェやっぱり…」

くつくつと笑いながらそこまで言った沖田さんが、ビクリと震える。

えっ…?何が…?

僕が目を開けると、苦しそうな顔をした沖田さんが寄りかかってくる。
なっ…何っ!?どうしたのっ!?

「沖田さんっ!?どうしたんですか?頭痛かったりするんですかっ!?」

あんなに頭をぶつけてたのに、なんとも無い訳ないんだ…今になってどこか悪くなってたりするの…?
どうしよう…沖田さんが…沖田さんがっ…!

頭を押さえて小さく呻きだした沖田さんの頭をぎゅっと抱きしめる。

「沖田さん…沖田さんしっかりしてっ…死なないでっ…!」

僕が必死に呼んでも、全然返事が無い…
どうしよう…どうしよう…
僕が泣きそうになってひたすらぎゅっと抱きしめていると、するり、と腰に手がまわる。

「いくら俺だからって、新八を泣かすような事させられるかィ…」

えっ…?

「…沖田さん…?」

そっと呼ぶと、ごろりと仰向けになった沖田さんと目が合う。

「…ここァ天国ですかね…?ははっ、新八が俺を膝枕してらァ…幻…なんですかねェ…」

「…沖田さん…?」

「おっと、幻聴まで聞こえらァ…可愛いねェ…やっぱ駄目だ。忘れたくねェや…さっきのキャンセル!キャンセル!!」

「僕の事…想い出してくれたんですか…?」

「へ…?」

がばっと起き上がって不思議そうな顔で僕を見つめてくる沖田さんを、ぎゅっと抱きしめる。
新八、って呼んでくれた…
それがこんなに嬉しいなんて…ずっと…ずっと呼んでくれてたのに…

「好きです…大好きです…僕は貴方が大好きです!」

僕がそう言うと、沖田さんはぴくりと震える。

「新八ィ…?」

「はい。」

「新八。」

「はい。」

「新八。」

「はい。」

「…本物…なんですかィ…?イヤ、本物がこんな事言う訳ねェ。そっくりな別人かィ?それとも姐さん…な訳ねェか…」

沖田さんが変な顔で色々言ってくる。
僕は、本物なのに…

「本物です!僕は本物の志村新八ですっ!」

僕がそう言ってじっと沖田さんの目を見ると、じっと見返される。

「…俺の気持ちは…届きやしたか…?」

「はい…今迄ごめんなさい…沖田さんが死んじゃう、って思ったら…初めて分かったんです。僕の大切な…大切な人だって…」

「でも…山崎はどうするんでィ…」

沖田さんが、悲しそうな顔になる。
全部…想い出したんだ…じゃぁ、正直にちやんと言わなきゃ…

「山崎さんに告白はされました。それがちょっと嬉しかったのも事実です。沖田さんも見てたんですね?あの時…でも、僕は沖田さんが良いんです!沖田さんじゃなきゃ嫌なんですっ!!」

「旦那やチャイナは…?」

「もぅっ!誰も関係有りません!あの2人は万事屋の家族ですっ!」

いつまでもうだうだ言うしっ…僕の気持を信じてくれないしっ!

こうなったら…