子供はどんな姿でも子供



今日も元気だ仕事が無い。
そんな事を半ば自棄で考えながら、僕は今日も大江戸ストアのタイムセールでの闘いに完全勝利した。
タイムセールが無かったら…万事屋の食卓は、マジでふりかけだけになっちゃうよな…タイムセール有難い…
そこそこ重い荷物を持って外に出ると、いつもならそこに居る筈の人が居なかった。

…あれ…?今日は仕事なのかな…?
いつもなら、ふらりとやって来て荷物を持ってくれたり、お茶奢ってくれたりするのに…
って!別に寂しいとかそんなんじゃねーし!
ぶんぶんと首を振って、荷物を持ち直して歩き出す。
イヤマジで、寂しいとか逢いたいとか、そんなんじゃねーし…

少し行くと、前の方に黒い制服が見える。
…頭…黒い…土方さんか…
じっと見ていると、土方さんの横に有った茶色がくるりと振り返る…あ…沖田さんっ…!
…私服…?
ふっと僕と目が合うと、ぱぁっ、と花が咲いたように笑って大きく手を振る…えっ…何あの顔…

「しんぱちぃー!」

たたた…と僕に向かって駆け寄ってくるけど…
なんだ…?ものっそ遅いんだけど…!?
一生懸命走ってるみたいなのに、いつまで経ってもこっちに来ない…新手の嫌がらせか…?
叫び声が恥ずかしいと思いつつ、でも立ち去るのも後が怖いんでその場で立ち止まっていると、やっと僕の前まで来た沖田さんが、ハァハァと息を切らす。
…そんなに疲れるほど遠く無かったよね…?

「しんぱちこんにちわ!」

「…こんにちわ…」

何か変だな…と思いつつもクセで挨拶を返すと、又ぱぁっと全開の笑顔…
…うわぁ…なんだこの顔…可愛過ぎる…!

「しんぱちはおげんきですか?そうごはげんきです!」

「…はぁ…」

「おげんきですか?」

…そうご…?
なっ…なんだ!?何がどうした!?
僕が反応に困って呆然と立ち尽くしてると、沖田さんの瞳がジワリと水を湛える…って…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?

「後で説明するから、返事返してやってくれ。」

いつの間にか僕達の傍に来ていた土方さんが、困った顔で沖田さんの頭を撫でながら僕に頼む。
なっ…!?撫でてる!!頭撫でてるっ!?土方さんが!?
驚きつつも、言われた通りにしてみよう…

「ごっ…ごめんなさい沖田さん、僕も元気ですっ!」

僕がそう返事を返すと、沖田さんがぷぅっと膨れる。

「おきたじゃないもん、そうごだもん!」

な…んだコレ…
新しい遊びなのか…?
僕が困って土方さんを見ると、片手を上げて僕を拝むようにしてる…
うっ…

「そっ…そっかー、そーご君?」

「ちがいます!そうごです!」

「…そおご君?」

「そうご!」

…面白い…なんでそんなに『う』に拘ってんだろ…

「はい、おきたそうご君!」

「はい!」

滅茶苦茶満足した顔で、大きく手を上げて返事をする…
なんだコレ…まるで子供…子供…?

「土方さん、これ…」

「あぁ、説明するが、ここじゃなんだ…場所を移すぞ。」

土方さんが僕の荷物を奪って、沖田さんと手を繋いで…
手ェェェェェェェェェェェ!?
驚愕で固まった僕を気にせず、サクサク動き出すんで、慌ててついて行こうとすると、沖田…いや、そうご君が僕の手を握ってにっこり笑う。
…なんか…物凄く可愛いんだけど…
きゅう、って一生懸命手を握られると、抱きしめたくなってくる…
見た目はいつもの沖田さんなのに…なんだろ、滅茶苦茶可愛い…
だってたまに手を掴まれる時は、嫌がらせだろ、って思う程の力で掴まれるから…
こんな感じで握られるなら…怒らないのに…

なんて僕がちょっと邪な事を考えながらそうご君に引かれるままついて行くと、土方さんは近くのファミレスに入った。