ボックス席に案内されると、土方さんが、コーヒーと、ケーキセットを2つ頼んでしまう。

「お前もケーキで良かっただろう?」

「あ…でも僕お金なんて…」

「それぐらいご馳走する。」

「有難う御座います!」

うわ、ケーキなんて久し振りだ…
すぐに注文の品が運ばれてきて、嬉しそうに笑ったそうご君がケーキを食べ始める。
あーあ…口の周りに一杯つけて…

「見ての通り、総悟の中身が子供になっちまってな…」

土方さんの話を掻い摘むとこうだ。
いつものように、朝イチで土方さんにイタズラしようとした沖田さんを撃退したら、手に持っていた何かをうっかり被ってしまった沖田さんの中身が子供になってしまった…と。
…確かに…沖田さんならやりそう…
って事は、本当なら土方さんが子供になってた、って事か…ちょっと怖いな…

「俺がずっと付いて居られれば良いんだが、そう言う訳にもいかねぇ…でだな、総悟を万事屋で預かってもらおうかと思ってな…」

話をしているうちにケーキを食べ終わったそうご君の口の周りを、土方さんが取り出したティッシュで拭いてあげてる…
…なんか…お父さんみたい…
ってか…なんだろ…それを見てるとイラッとする…
あんなにゴシゴシ拭いて…痛いんじゃない?アレ…

「やー!」

やっぱり痛かったのか、そうご君が涙目で僕の方に走って逃げてくる。
きゅうっとしがみつかれると、なんか優越感…

「大丈夫?そうご君。あーあ、赤くなっちゃってる…酷いおじさんだねー?」

「ねー?」

僕らが仲良く首を傾げて土方さんを見ると、不機嫌そうな土方さんがジロリと睨む。

「おじさんじゃねぇ…仲良いようだな…これは依頼だ。依頼料はちゃんと払うから、総悟が元に戻るまで預かってくれ。」

「えっ!?そんな…万事屋には神楽ちゃんも居るし…」

「あぁ、それじゃ…これは志村、お前個人への依頼だ。」

「えぇっ!?」

そんな…沖田さんでしょ…?沖田さん…そりゃ、そうご君は可愛いけど…
でも、沖田さんでしょ…?
じーっとそうご君を見ると、僕の視線に気付いてにっこりと微笑みかけてくれる…
あぁっ…可愛いっ!

「しんぱちぃ、けーきたべないの?そうごたべていい?」

こてん、と首を傾げられると、悶絶しそうになる…可愛い…
ものっ凄く甘やかしそうだ…

「良いよ、ちゃんと食べれるかな?」

「しんぱちたべさせて?」

えへへ、と笑っておねだりなんかされたら…なんでも言う事聞いちゃいそうだ…
小さくケーキを切り分けて、はい、と差し出すと、嬉しそうにぱくりと口に入れる。

「上手に食べれたねー?」

思わず頭を撫でると、これ以上ない程嬉しそうににっこりと笑う…
だっ…駄目だ…心臓やられる…
可愛過ぎておかしくなりそう…

「そうご君、まだケーキ食べるよね?」

又小さく切って、はい、と差し出すと、ちょっと困った顔でじっと僕を見る。

「そうごがぜんぶたべたらしんぱちのけーきなくなるの…ひじかたさんもたべる?」

じっと僕らを見つめる顔は、天使みたいだ…そうだよな、沖田さんってビジュアルだけは美少年だもんな…邪気が無かったら天使だよ…
自然とだらーっと顔を緩めた土方さんと僕は、お互いの顔に気付いて慌てて顔を引き締める。

「そうご君が食べさせてくれるんなら、僕も食べようかなー?」

「あ、眼鏡汚ぇ!俺も…喰わせてくれるんなら喰うぞ?」

「はい!そうごちゃんとふぉーくつかえるよ!」

張り切って大きくケーキを切って、まず僕にケーキをくれると土方さん悔しそう…
その後土方さんにもケーキを切って食べさせてあげてる…なんか…ムカっとする…

「おいしいですか?」

「うん、そうご君が食べさせてくれたから特に美味しい!」

「凄ぇ旨かったぞ。」

2人が笑うと、そうご君も笑う。
あー、もう!なんだろ…沖田さんなのに…沖田さんなのに可愛い!!
残りのケーキを全部そうご君に食べさせて、ジュースも飲みきったのを見計らって土方さんに向き直る。

「土方さん、依頼、お受けします。」

「そうか、頼む。ただし、志村邸に数人護衛を付けるからな。」

「はい。宜しくお願いします。」

…そうだよね…この機に乗じて攘夷志士とかに襲われたら…僕だけじゃ撃退できない…
ファミレスを出て、土方さんが僕らを家まで送ってくれる。
家に着くと、もう隊士の方達が居らしていて、土方さんの指示を聞いて何処かに潜んで行く…

「それじゃ、宜しく頼む。」

土方さんが名残惜しそうにそうご君の頭を撫でるけど、もう新しい場所に興味津々で土方さんに見向きもしない…
ちょっと可哀想…
とぼとぼと万事屋に荷物を運んでくれる土方さんを見送って、そうご君と一緒に家に入ると姉上はもう仕事に出かけてしまっていた。
残念、姉上もきっと凄く可愛がってくれただろうに…

途中で土方さんが買ってくれた食材で僕が晩ご飯を作っていると、テレビを見て歌を歌っていたそうご君が大人しくなる…
どうしたんだろ…?
そっと様子を見に居間に行くと、座布団にころん、と転がってすうすうと寝息を立てて眠ってしまっていた…
うわ…眠る姿まで可愛い…!
そぉっと毛布を掛けてあげると、くるりと丸くなる…写真やムービーに残したくなるお母さんの気持ち…分かった気がする…