ご飯が出来て卓袱台に運んで行くと、くんくんと鼻を鳴らしてそうご君が起きる。

「そうご君、ご飯出来たよ?」

「はい!おいしそうです!」

きゅうっと僕の腕に掴まってこられると、男の僕には無い筈の母性本能がうずく。
2人で並んで一緒にご飯を食べていると、お腹が一杯になったのか、そうご君がコクリコクリと船を漕ぎ始める。
…もう眠くなっちゃったのかな…?
でも…自分で歩いてもらわないと、流石に僕だけじゃ布団まで連れて行けないな…

「そうご君、眠くなっちゃった?お布団まで歩ける?」

ゆさゆさと揺すると、うっすらと目を開けたそうご君がコシコシと目を擦る。

「…おふろ…」

「お風呂?湧かして有るけど、眠かったらすぐに寝ても良いんだよ?」

「おふろはいる…」

なんでか頑なにお風呂って言うけど…僕…沖田さんをお風呂に入れなきゃいけないのかな…?
それは…ちょっと…照れるって言うか…なんか…ねぇ…?
でも、そうご君1人じゃ入れないよね…きっと…

「そうご君1人で…入れないよね…?」

「しんぱちといっしょにはいるー!」

…元気にそんな事言うけど…
だって…お風呂でしょ…?
お互い裸じゃん…僕の見られるのもアレだけど…僕も見ちゃうんだよ…?
僕が赤くなってもじもじしていると、そうご君がじっと僕を見る。

「しんぱちおかおあかい…おねつある?」

こつん、とおでこを付けられると、更に熱がっ…

「…すごくあついの…しんぱちおふろはいれない…?」

しょんぼり、と俯かれると、なんだかもう何もかもがどうでもよくなっちゃうよ…
そうご君は子供じゃん!
裸とかなんとかなんて考えてる場合じゃないよ!!

「大丈夫だよ!一緒にお風呂入ろうか!」

「はい!」

僕が覚悟を決めて、入浴の用意をして手を繋いでお風呂場まで行くと、凄い素早さで着物を脱ぎ散らかしたそうご君が走ってお風呂場に入る。

「すごいおっきいね!おふろすごいおっきいね!!」

きゃっきゃっと嬉しそうに振り返って、立ち止まって僕を待ってる姿は、無駄な肉が一切無い鍛え上げられた筋肉が綺麗で…ものっ凄く目のやり場に困るけど…
そのままいつまでも待たせちゃったら風邪ひいちゃうよね…
僕も手早く着物を脱いで、最後の抵抗で腰にタオルを巻いてお風呂場に入る。

「はい、椅子に座って?」

「はい!」

「お湯掛けるから、ちゃんとおててで耳塞いで?おめめもギュッって瞑るんだよ?」

「はい!」

言われたとおりに耳を塞いでギュッと目を瞑って小さくなるそうご君を確認して、お湯を掛ける。
さっさと洗っちゃって湯船に入れよう…じゃないと…僕の心臓がもたないよ…
なんで子供ってこんなに無防備なんだよ…大股開きは…止めて欲しい…

「じゃぁ、先に頭洗うから、まだ目は瞑ったままにしてねー?」

シャカシャカとシャンプーを付けて頭を洗うと、頑張って目を瞑ったままのそうご君が小さくなって足を閉じてくれた…
助かった…

「もう一回お湯掛けるよー?」

「はい!」

又、ギュッと小さくなるそうご君を確認してザバザバとお湯を掛けて泡を流す。
髪の毛のお湯も顔に付いたお湯も綺麗に拭いてから、もう良いよ、って声を掛けると、恐る恐る目を開けたそうご君が驚いた顔になる。

「すごい!めがいたくない!!しんぱちまほーつかった?」

キラキラと尊敬のまなざしで見られると、なんか照れる…
別に普通の事なのに…

「魔法なんか使って無いよ。ちゃんとおめめ瞑ってたら痛くないよ?」

「そっかー!」

なんか納得したみたいなんで、続けて体も洗っていくけど…
流石に…どうしよう…そうご君自分で洗ってくれないかな…無理かな…

「そうご君、自分で体洗えるかな?」

「うん!あらえる!」

ボディーソープを付けたタオルを渡すと、一生懸命ゴシゴシと擦ってる…大丈夫そうかな…
その間に僕も頭を洗って体洗う。

「そうごすごい?ちゃんとぜんぶあらえたよ!」

ざっと前と後ろを確認すると、ちゃんと洗えてるかな…でも、背中は洗えてないよね…

「うん、えらいねそうご君。」

僕が褒めると、えへへ、と嬉しそうに笑ってくれる。
タオルでささっと背中を洗って、お湯で泡を流したら…沖田さんの白い肌がピンクに染まって…なんか…色っぽい…
って!僕は何考えてるんだよっ!!

「はっ…はい終わりー!じゃぁ、湯船で温まろうねー?」

僕が先に入って、はい、と手を差し出してもそうご君は中々入ってこない…どうしたんだろ…?

「おふろ…おっきくてこわい…」

…ちびっこ目線だと、ウチのお風呂は大き過ぎるからなぁ…
あれ?でも、沖田さんの大きさは変わって無いよな…?
不思議に思って首を傾げていると、そうご君がくしゃみをする。
おっと、このままじゃ風邪ひいちゃうし。

「大丈夫、僕が支えてあげるから怖くないよ?」

そっと手を引くと、ぎゅっと僕に抱きついて一生懸命湯船を乗り越えてくる。
かっ…可愛過ぎ…
思わずぎゅうと抱きしめると、すりすりとすり寄ってくるよっ!!
あぁぁ…駄目だ駄目だ!中身は子供でも、沖田さんだからね!この人!!

「ちゃんと肩まで浸かるんだよ?」

「うん。もう温まった。」

「イヤ、今入ったばっかりだから。100まで数えてー?」

「…いーち、にーい、さーん、ごーお、じゅーう、ひゃーく!」

「はしょり過ぎだから!!」

…可愛くてもやっぱり沖田さんか!?
なんで10の次が100!?

「だって…ひゃくまでかぞえられないもん…」

そうご君の顔を覗き込むと、目に一杯涙を溜めてる…うわっ!泣いちゃう…

「じゃっ…じゃぁ一緒に数えようか。」

「はい!」

嬉しそうににっこり笑うそうご君と向かい合わせで湯船に浸かって一緒に100まで数える。
つっかえながらもそうご君が100まで数えきると、頬っぺたを真っ赤に染めてきもちいねー!と笑った。
あぁぁっ!可愛いなぁ!!
ゆっくり温まったんで、又僕が先に上がってそうご君に手を伸ばすと、ぎゅうと抱きついてきて一生懸命湯船を乗り越える。
あぁもう可愛いっ!!

…抱き付かれると、現実に戻るんだけどね…なんだこの筋肉…
やっぱり、なんだかんだでしっかり鍛えてるんだよな…いっつもサボってるけど、真選組の隊長だけはあるよね。

ちょっとドキドキしながらも、バスタオルで体を拭いてあげて、寝巻き用の僕の着物を着せる。
…やっぱりちょっと小さいか…なんか悔しい…
髪も乾かして、手を繋いで居間まで行くと、途中でそうご君がもじもじとする。

「…どうしたの?トイレ?」

「ちがいます!おふろはいったら、アイスをたべるんです…」

成程、だからお風呂入るって張り切ってたんだ。
じーっと僕の顔を見つめるけど…アイスか…姉上のバーゲンダッシュ食べたら…殺されるよな…
でも…そうご君、めっちゃ期待してるし…

……………………
…うん、殺されよう…

「食べ終ったら、ちゃんと歯を磨くんだよ?」

「はい!」

手まで上げて良いお返事をしてくれるなんて、よっぽど楽しみだったんだな…
途中で台所に寄って冷凍庫からバーゲンダッシュを1個頂戴する。

すんまっせん、姉上…