「たっ…助けて誰か――――――っ!!」

銀さんのキメ顔をぐいぐいと押し退けながら叫ぶと、白い何かが銀さんの上に落ちてくる…あ…

「定春っ!」

銀さんと神楽ちゃんを前足で押さえた定春が、僕を見てわん!と吠える…助けてくれたんだ…!

「有難う定春!」

すぐに玄関を掛け出そうとすると、そこで誰かにぶつかる…

「どうした新八くん、そんなに慌てて…おぉ…何故そんなに魅力的なんだ君は…」

「桂さんっ!?って何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

何でそんなに唇突き出して近付いてくるんだ!?コイツもか!?
思いっきりのけぞってなんとか避けて逃げようとするけど…力強くて逃げられないー!!

「ヅラ!テメー何してやが…退けろ定春!!」

「離すネ定春ー!新八がピンチネ!」

うわぁぁぁぁ!もうダメか!?もうダメか!?

「桂ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

叫び声と同時に、僕の目の前を銀色に光る物が通り過ぎていく…って真剣!?
危っ…危ないっ!!

「大丈夫だったかい、新八くん?」

グッと引き寄せられた先には黒服と眼鏡…って伊東さん…?
ってか…この人も何でこんなに近い…

「おい、テメェ何してやがる…」

ものっ凄い殺気と一緒に又真剣が僕の目の前を通って行く…

「油断も隙もねぇな…新八、コッチ来い。」

煙草の匂い…土方さん…?
グイッと手を引かれて振り向かされて、クイッと顎を掴まれ…ギャーッ!近い近い近いっ!!

「新八くん危なー…新八く…ん…」

グイッと引っ張って助けてくれたのは山崎さんで。
山崎さんもおかしいのかと思ったら、ズンズンと歩いて行ってしまった…助かった…!
僕が駆けだそうとすると、くるりと振り返った山崎さんが、飛んだ…!?

「新八くぅーん!!」

そのまま僕に飛びかかってくるんで、サッと身を翻すとベチャリと地面に飛び込む。

何なんだ…何なんだコレ…
怖くなってそのまま走り出すと、真選組隊士の皆さんがザワつく…まさか…

「「「「「「しんぱっちくぅーん!!!!!!!!!」」」」」」

「ぎゃ―――――――っ!?」

黒い集団が、一斉に僕に向かって走ってくる!!!!!
どっ…どうしたら…
振り向くと、山崎さんを先頭に、伊東さんも土方さんも銀さんも神楽ちゃんも桂さんも…高杉さんに坂本さんまで増えてる!?

「何で指名手配犯を目の前にして僕に向かって来てんだ真選組ィィィィィィィィィ!?」

僕が叫んでも、全員聞こえないフリしやがった!?
サイテー!サイテー!!サイテー!!!

…っていうか、僕挟まれてんですが…コレって絶体絶命…?

「だっ…誰か助けてーっ!!さだは…」

思いっきり叫ぶと、両側からドカンドカンと音がして、人が飛んでいく…何…?

「新八呼んだー?兎の国の王子様が助けに来たヨー」

見え隠れするのはピンクの三つ編み…まさか…

「かっ…神威…!?」

「もー、呼び捨てなんて照れちゃうヨ。」

坂本さんも桂さんも空を飛んでる…高杉さんと土方さんと伊東さんが刀を抜いて、銀さんが木刀を、神楽ちゃんが拳を構えた。
あれ…?山崎さ…

「危ないよね、新八くんは俺の後ろに隠れてて?あ、その前にチュッとひとつ…」

「何やってんでィ、おめぇら…ザキはまだしも土方さんや伊東さんまで遊んでんじゃねェよ。」

むーん、と口を伸ばして僕に迫ってきてた山崎さんを刀が制する。
…この口調…この声は…

「沖田さんっ!」

「下っ端どもも、皆お前さんに群がってやしたが…何したんでィ、おっそろしいお人でさァ…」

僕を見下ろして、ヤレヤレと肩をすくめる。
そんな…僕は何も…

「僕は何もしてませんっ!皆が変なんですっ!!」

「ふーん…何か有る筈なんですがねィ…」

のんびりと話をしていた沖田さんの目つきが変わる。

「君、誰だい?俺の新八に慣れ慣れしいヨ?」

あれだけの皆さんを潜り抜けて、神威さんが僕の背後に迫る。
沖田さんの後ろには、倒されていた真選組隊士の皆さんがにじり寄って来てる…
怖くなって、沖田さんの隊服の裾をぎゅうと掴むと、それに気付いた沖田さんがニコリと笑って僕の手を掴んだ。

「逃げやすぜ。」

沖田さんに手を引かれるまま、真選組の皆さんの真ん中を突っきる…はっ…速い…!