大江戸ストアに着くと、今日もマヨネーズ売り場に山崎さんが居た。
しかし…山崎さんも毎日大変だよね…アレ、土方さんのマヨだよね…まぁ、僕は山崎さんに情報貰えるから嬉しいけど。

思わず笑顔になって山崎さんに駆け寄ると、僕を見付けた山崎さんが苦笑する。

「こんにちわ、新八君。」

「こんにちわ、山崎さん。」

隣に立つと、山崎さんが僕のカゴを持ってくれる。
僕の買い物を終わらせて、いつものように万事屋の前まで一緒に帰る時も、山崎さんは僕の荷物を持ってくれる。
そんな事良いって言ってるのに…まぁ、楽だから良いか。

「いつも有難う御座います。」

「どういたしまして。で?今日は何が聞きたいの?」

僕が話を振る前に、山崎さんが話を振ってくれる。
良い人だよな…山崎さん…
ちょっと感動しつつ、思わず笑顔になってしまう。

「あの、誕生日っていつなんですか?」

「えーとね…7月8日…だね。」

「えっ?」

「7月8日だよ。」

「あと少しじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「うん、そうだね。」

にっこりと笑われるけど、そんなチャンスあと数日で来ちゃうなんてっ!!
色々考えたかったのに…
なんでもっと早く聞かなかったんだ僕っ!!

「あのっ!あのっ!!何が…好きなんでしょうか…?」

あの人が好きなモノなんて、皆目見当がつかないし…
この際山崎さんの情報に頼り切る!!

「…えー…?好きなモノ…ねぇ…お酒…かなぁ…あとお菓子とか…近藤さんとか…?」

…役に立たねぇな…ジミー…近藤さんなんてどうするんだよ…
でも…お菓子か…
それなら、ケーキなんて良いんじゃない?うん決まり!ケーキにしよう!!

僕が大きく頷くと、山崎さんが笑いかけてくる。

「お役に立てた?」

「はい、とっても!」

にこりと微笑み合うと、どこからか殺気が飛んでくる。
えっ…何…

「新八ー!ジミーと何やってるネ!」

気付くといつの間にか万事屋の前に着いていて。
迎えに出てくれていたのか、上から覗いていた神楽ちゃんが階段を駆けおりてきて、山崎さんが持ってくれていた荷物を奪い取る。

「もう、神楽ちゃん失礼だよ?山崎さんとはお話してただけだよ。ちゃんとご挨拶できないなんてお行儀悪いよ?」

僕が怒ると、しぶしぶペコリと頭を下げる。

「いいよいいよ、チャイナさんはこれくらい元気じゃ無いとね。それじゃぁ、もう俺行くね。」

軽く手を振りながら、山崎さんが歩いて行ってしまう。
悪かったなぁ、と思いつつ見送っていると、神楽ちゃんがボソリと呟く。

「新八…ジミーの事好きアルか…?」

何故か神楽ちゃんが恐る恐る僕に聞いてくる。
好き…?

「うん、良い人だよね。」

「…好きアルカ!?恋人アルカ!?」

「はぁっ!?」

イヤイヤイヤ、恋人って何だ!?
何でそんな話に…

「何言ってるの神楽ちゃん!山崎さんなんかと恋人な訳無いじゃない!!」

大体、僕にはあの人がいるからねっ!
…まぁ…片想いだけどさ…

僕の勢いに驚いて、神楽ちゃんが大人しくなる。
なんだか機嫌も良くなった…?

「そうアルネ!そんな訳ないネ!」

そう言ってにひゃりと笑って、神楽ちゃんが荷物を持ってカンカンと階段を上って行く。
何だったんだろ…?
あれぐらいの年頃の女の子はそういう話好きなのかな?

まぁ、そんな事より。
ケーキ…誕生日ケーキといったらやっぱりホールケーキだよなぁ…
でも、僕の今のお財布事情じゃホールケーキなんか絶対無理だしなぁ…
ジロリと銀さんを見ると、寝っ転がってジャンプ見てるし…

「銀さん…今月の給料…」

「あ?仕事も無いのに出る訳無いだろ〜?」

ものっ凄く不機嫌に吐き捨てやがったけど…

「なら、仕事探してこいや!ずっと寝っ転がってジャンプ読みやがって…」

僕がキレたらそそくさと万事屋を出ていく。
あー!もう!!

銀さんに何も望めないって事は…
姉上…貸してくれないかな…

ちょっとだけ期待を込めて、家に帰って出勤前の姉上と食卓を囲む。

「あの…姉上…出来ればで良いんですが…お金を…貸しては頂けないでしょうか…?」

なんとか話をきり出して、そっと姉上を伺うと、そこには怖いくらいの笑顔の姉上…

「え?新ちゃん何か言った?」

「えっ…あの…お金を…」

「何か言った?」

「…何でも無いです…」

駄目だ…姉上も頼れない…
そのまま食事を終えて姉上を見送って、後片付けをしながら考える。
こうなったら手持ちで何とかするしかない。
万事屋に、日持ちするケーキの材料は有る筈。それを何とか分けてもらって…それ以外は買ってきて手作りするしかないよな…
ケーキなんか作った事無いけど…銀さんに教わる訳にもいかないし…
あぁ、どうしよう…
そんなので喜んでもらえるとは思えないよ…

ちょっと考え込みながら寝たら、あの人に笑顔でケーキを投げつけられる夢を見た。

気が重いまま目を覚ますと、枕元に見慣れない封筒が…
中を開けてみると、そこには千円札が入っていた。
まさか…姉上!?

大急ぎで居間に走ると、すっかり朝ご飯の支度が出来あがっていて、そこには笑顔の姉上と暗黒兵器…

「姉上っ!あの…これ、有難う御座います…!」

「新ちゃんいつも頑張っているから、お小遣いよ。大切に使うのよ?」

「はいっ!」

僕が嬉しくて笑うと、姉上も優しく微笑んでくれる。
良かった!これでなんとか材料が揃うよ!!
気持ちのせいなのか、今日の暗黒物質はいつもより美味しく感じた。