妖精とダンス!!



今年はなんだか皆大人しいけど、今日はハロゥインだ。
きっと皆で色んな仮装を僕にさせるんだと思ってたのに、今僕は一人で家に居る。

去年は神楽ちゃんと一緒に仮装して、色んな人にお菓子を貰いに行ったっけ…
楽しかったなぁ!

…沖田さんには…イタズラされたけど…

今年はちゃんと沖田さんの分のお菓子も用意したし、家に奇襲をかけられても大丈夫だからな!
…まぁ…少しくらいならイタズラされても…良いかな…なんて…思…



うわーっ!!
僕とした事が!!何て事想ってんだ!?
イタズラ…なんて…そんなえっちな…っ…

1人で赤くなってバタバタしてると、玄関の呼び鈴が鳴る。

…沖田さん…かな…?

用意していたお菓子を持って、小走りで玄関に行くと…あれ…?黒くない…
沖田さんなら、隊服でシルエットが黒い筈だし…神楽ちゃんなら赤い。
でも、今擦りガラスの向こうに移る影は白くって小さい…

「はい、どちら様ですか?」

「トリック・オア・トリート」

うわっ!凄く可愛い女の子の声…
あれ…?でもこの声…どこかで聞いたような…

首をかしげつつカラリと玄関を開けると、ソコに居たのは凄く綺麗な金髪の女の子で…
って!この娘!?

「パンデモニウムさん!?」

信じられなくて、メガネを外して眼を擦ってもう1回ちゃんと見ても、ソコに居るのは僕が想像していたアノ娘で…
白いふわりとした長袖のワンピースで…
背中に透明の羽根が付いていて…

「こんばんわ、新八さん…」

ふわりと綺麗に微笑まれたら、僕の心臓はドキドキと脈打ち始める。
でも…でもパンデモニウムさんはあの時…

「そんな…キミはあの時…」

「新八さんがあの日ちゃんと祈ってくれたんで、今日だけトクベツに妖精に羽化する事が出来たんです…ハロゥインですから…」

嬉しそうににっこりと笑う顔は、最高に可愛い。
え…本当に…?本当にパンデモニウムさんなの!?

「本当に…パンデモニウムさん…?」

「はい、本当です。あの…今日だけは…私新八さんと一緒に居られるんです…私と一緒に…居てくれますか…?」

恥ずかしそうに僕を見て、そっと手を握られるとものっ凄い勢いで顔に血が上ってくる。
思わずコクコクと頷いてしまいそうになるけど…
でも…きっと沖田さん…逢いに来てくれるよな…
約束はして無いけど…でもきっと…
でも…パンデモニウムさんには…きっともう会えないよな…

「パンデモニウムさん…あの…」

「私が新八さんに逢えるのは…今日だけなんです…一緒に居られませんか…?」

凄く淋しそうな表情で、目に涙を溜められると…嫌だなんて言えない。
でも…3人で一緒にとかは…駄目かな…?
僕にとって沖田さんは…

「勿論、一緒に居ようよ!あ、お茶淹れるね?家に入って…」

「嬉しい!じゃぁ行きましょう?」

嬉しそうに恥ずかしそうに微笑んだパンデモニウムさんが僕の手を取ると、ふわりと体が浮き上がる。

…浮き上がる…?

ぷぃーたぁーぱぁぁぁぁぁぁん!?

パンデモニウムさんに手を引かれてどんどん空に舞い上がっていく僕は、さながら某お話の主人公のようで…
えぇぇぇぇぇぇっ!?
そんな…えぇぇぇぇぇ!?

あ、コレ夢か。
うん、夢に違いない。

「夢じゃありませんよ?私と手を繋いでるから、新八さんも飛んでるんです…ほら…」

彼女がふいに僕の手を離すと、途端に僕の身体は重くなって、一気に地上に吸い寄せられる。

「ぎゃぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」

空気の抵抗を、嫌というほど感じる。
あぁ…僕はこのまま死ぬのか…
ふっと意識が遠のきそうになると、ぎゅっと僕の手が握られる…

「安心して下さい。私は新八さんを離しませんから…」

「イヤ、今、離したからね!?離したからね!?」

「新八さんが夢だって言うからです!」

うふふ、とイタズラっぽく笑うパンデモニウムさんも可愛い。
可愛いから許す!!

「まぁ、ちゃんと助けてくれたから良いけど…」

赤くなる顔を背けて、ぎゅっと強く彼女の手を握ると、パンデモニウムさんも強く僕の手を握ってくれる。
うわっ…なんかコレ…あのコレ…あまずっぺェェェェェェェェェ!!!
でもこんなの初めてで…小さくて柔らかい手が凄く大切な物のように感じる…
いつも僕が繋ぐのは、僕よりも大きくて、固い手だから…
勿論、その手だって僕にとっては大切な物だけど。
でも、守りたい物ではないから。
横に立って一緒に闘う手だから。
こんな気持ちになるのは、初めてかもしれない…