初めての『ともだち』
夜兎工の人達との大騒ぎから1週間、何故か僕は高杉さんにつけ狙われている。
気が付くと、ちょっと後ろからだったり、物陰からだったり、とにかくこちらをジッと見ているのだ。
そして恐ろしい事に、気配を感じて僕が振り返ると、ニヤリと笑うのだ。
目なんか合った日には、にやぁり、とさらに深く笑って、そして、何も言わずに立ち去っていく…
それは、教室でも廊下でも登下校中でも買い物に行った先でも何処でもで…最近の僕は、全くもって気の休まる暇が無い。
そりゃぁ、この間の夜兎工との一件で、僕は高杉一派にとって鬱陶しい危険人物と認識されてしまったんだろうけど…
でも、あの人達だって同じクラスの仲間だし…見殺しになんか出来なかったんだよ!
…まぁ、全然余計なお世話だったみたいだけどさ…
でも、あの後来島さんはお礼っぽい事言ってくれたし…
河上君は何故かレアなお通ちゃんグッズくれたし…
そんな怒ってるような感じじゃなかったのにな…
高杉さんとだって、仲良く、まではいかなくても挨拶ぐらいはするようになったのに…
今の感じはどう考えても隙を見せたら殺られるじゃん!
確実に狙われてるじゃん!!
なんかもう怖くて、アノ笑顔が夢にまで出てきて寝不足だしさ…
あー…もうどうしよう…誰かに助けを求めようかな…?
今日も登校時はあの気配につけ狙われつつ、気を擦り減らして…
まぁ、途中から沖田君が一緒なんでちょっと気が休まるんだけど。
教室に着いたらもうグッタリしちゃって、すぐに机に突っ伏した。
こんなのが続いたら、僕はもたないよ…
うん、やっぱり、誰かに相談した方が良いよな。
誰がいいだろう…
姉さんは、危ないから駄目だ。
風紀委員の皆も…そんな私的な事で手を煩わせるのは申し訳ない。
神楽ちゃんは強いけど、女の子だ。
そうなったら…
なんだかちょっと嫌な感じだけど、やっぱり銀八先生が一番かな。
あんなんでも一応僕らの担任だし。
高杉さんとも知り合いみたいだしね、きっと何とかしてくれるよね!
そうと決めたら早速職員室に行こう!
ぐったりと机にへばりついていた体を起して廊下に向かおうとすると、今日に限って来島さんと河上君が教室に来ていて入口を塞いでいた。
その上、2人とも僕の方を見ていて…ニヤリ、と笑った。
…まさか…
僕が恐る恐る後ろを振り向くと、やっぱり高杉さんが僕を見ていて…
目が合うと、にやぁりと笑った。
ヒッ…ヒィィィィィィィィィィィッ!!
僕が次にどう動くのかバレてる…?逃げられ…ない…
頭がくらっとして、ガタリと音を立てて椅子に座ってしまう。
どうしよう…どうしよう…
「新八ィ、煩ェよ。俺の眠りを妨げんじゃねェや。」
「オメーは一生寝てろヨ。新八どうかしたアルカ?顔が変ヨ?」
後ろの席の沖田君と隣の席の神楽ちゃんが文句を言ってくるけど…
それどころじゃないし!
「沖田君もう寝てんの!?何しに学校に来てんだよっ!神楽ちゃんも!顔が変って余計なお世話だよ!!もう僕それどころじゃ…」
「「だから、どうした、って聞いてんだよ。」」
2人がいつの間にか僕を囲んで顔を覗き込んでる…凄く…心配そうな顔…
「新八の顔がブサイクなんて言って無いアル。色が変ヨ…具合悪いアルカ?」
神楽ちゃんが、そっと僕の頬を撫でる。
心配…かけちゃった…
「そうでィ!フラフラしやがって…新八の具合見てんのに忙しくってオチオチ寝てらんねェよ。」
そう言って、僕の頭を撫でてくる…沖田君っ!?
心配…してくれてるのか…?
そう言えば、ドSとか言われてるけど結構優しいし面倒見良いんだよな、この人…
今の僕の状況を、この2人に話したら…
いや!そんな事出来ない。大事な友達を巻き込むなんてそんな事出来ない!
撫でられる手が気持ち良くてそっと目を瞑ると、バシッと音がして沖田君の手が避けられる。
同時に頬に有った神楽ちゃんの手も避けられる…何…!?
「…何しやがる、ションベン・イエロー…」
「気安く志村に触ってんじゃねーッス、ウンコ・ブラウン!」
…来島さん…?
「離すネロリコン。」
「ロリコンじゃありません。フェミニストです。」
…武市君…?
この2人が絡んでくるって事は…
「…おい…」
やっぱり…この声は…高杉…
慌てて振り向くと、そこには酷く不機嫌そうに僕を見る高杉晋助!
やっ…やばい!!遂に殺されるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
なんとか逃げようと後ろに下がると、ソコにも人がいて…
恐る恐る振り向くと、やっぱり河上君…と…仁蔵君…
どうしよう…逃げられない…
「たっ…助けて!沖田く…」
「「高杉ィィィィィィィィィィ!!」」
沖田君と神楽ちゃんの怒鳴り声と一緒に、来島さんと武市君が突き飛ばされて、河上君と仁蔵君が倒れる。
すぐに2人が僕の両側に立ってくれて、僕は安心して大きく溜息を吐いた。
やっぱりこの2人は物凄く強い…僕も…僕もこんな風になりたい。
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