肉じゃがの材料を買って自宅に連れ込むと、新八くんが『わぁ』と歓声を上げる。
「凄い綺麗にしてるんだ…」
キョロキョロと辺りを見回しながら台所に入って冷蔵庫を開けると、新八くんの目が眇められる。
「…沖田君、ココでちゃんと生活出来てるんですか…?」
「なんでィ。テレビもゲームも冷蔵庫もレンジも有りやすぜ?あ、布団も。」
「そういう事じゃ無くって!冷蔵庫の中ジュースだけ…ってお酒まで有る!!さっきの買い物で調味料まで買うからおかしいと思ってたら!」
「…だって必要ねーし。」
俺がボソボソと答えると、新八くんの顔が恐くなる。
「普段何食べてんだアンタ?」
「えー…?コンビニ弁か惣菜…」
「そんなんばっか食べてたら体壊すよ!」
「…サラダも喰ってるし…」
「ダメですっ!」
バンッ!と音を立てて台所の棚を開けると、新八くんの動きが止まる。
「…調理器具は綺麗ですね…あ…彼女さんとか…?」
ニコリと笑って振り返るけど…なんでかこの笑顔は嫌だ。
「おう、毎週姉さんが来てなんかして行きまさァ。」
「あ…お姉さん…!…来る…?」
「おう、結婚して今は別の所に住んでるんでねィ。」
「あぁ、成程…え…じゃぁ今日……あ、明日か…」
何かブツブツ言ってっけど良く聞こえねェから気になる…
でも、俺の腹はもうかなり限界でさっきからグーグー鳴りまくってる。
「新八くん、腹減りやした…」
「え…あ!はい!じゃぁ早速始めますけど…エプロンとか借りれませんか?」
「そんなんウチに有りやしたかねィ…」
「ですよねー…」
それでもゴソゴソと箪笥を漁ってみると、山崎だか近藤さんが面白半分にくれたフリフリのヒラヒラが1枚…
「…新八くん、こんなん有りやした…」
「…沖田君、そういう趣味が…」
「山崎でィ。」
「あぁ、山崎君。」
納得されてるぜ?ザキィ…
「他には…無いんですよね…?」
「無ェ。」
大きな溜息を吐きながらも、しぶしぶソレを着けた姿はやたらと可愛い。
新妻みてェ。
「…服は脱がないんで?」
「なんでだよ!見たいか?男の裸エプロン見たいか!?」
こくり、と頷くと、新八くんはこれ以上ない程赤くなって下を向いてしまった。
あれ…?
「そっ…そういう冗談はあのっ…僕はボケじゃないんで…上手く返せなくてすいまっせん!」
冗談じゃねェんだけど…
「あのな…」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
「あ!じゃぁ作りましょうか。良い?ちゃんと見てて下さいね?」
俺の腹ァァァァァァ!空気読めェェェェェェェェェェ!!!!!
心の中でどんなに後悔しても、時間は戻らないし新八くんも止まらない。
笑顔で説明しながらも、肉じゃがはどんどん出来ていくし、意外と新八くんは恐い。
「違うだろうがァァァァァァァ!」
「…へい…」
「返事は『はい』!」
「…はい…」
なんとか作り方を覚えさせられて、肉じゃがも無事出来た。
飯も炊けたし…頂きやすか。
「あ、じゃぁ僕はこれで…あと…」
「え?新八くんは飯喰ってかねェんですかィ?」
「え…?僕も…食べて良いの…?」
きょとん、と見られっと思わず笑っちまう。
「あったり前でさァ。こんなに沢山1人じゃ喰いきれねェよ。それに、不味かったら文句言わなきゃならねェし。」
「…美味しいですよ…多分…」
「多分?」
「絶対美味しいです!僕、食べ過ぎちゃうかも。」
「負けねェし。」
ココで誰かと向かい合って飯を喰うなんて、スゲェ久し振りだ…
それが好きな子なんて…最高じゃねェですか…
「旨い!」
「口に合いました?良かったー!」
嬉しそうに笑われると更に旨く感じる。
こんな幸せなんざ、盆と正月と誕生日が一緒に来た…あ…明日…俺誕生日…
新八くんはそんな事知らないでしょうが、プレゼント貰っちまったみてェだ…
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