誕生日には、何をする?
俺、真選組一番隊隊長沖田総悟は、今非常に悩んでいる。
それというのも、今日は何の間違いか、俺が惚れちまった男の誕生日なのである。
ソイツ、志村新八は俺達真選組と何かと関わり合いが有る万事屋の従業員で、江戸一番のツッコミ使いで、メガネで、笑顔の可愛い16歳で…
ホントに、何で男に…と自分でも思うんですがねィ…惚れちまったもんは仕方ない。
俺ァ、そんな覚悟はとっくに決めちまってる。
だけど…
こんなイケメンの高給取りに惚れられたんだから、大喜びでシッポ振ってついてくんだろ、と思ってはいるんですがねィ…
それでも俺ァ、未だに告白すら出来ねぇでいるのだ。
ヘタレだとは自分でも思ってらァ。
でも、あの可愛い笑顔で照れたように微笑みかけられたら何も言えなくなっちまうんでィ!
心の臓がバクバクいって、頭に血が上っちまって、体も動かなくなっちまって…てんで俺らしく無くなっちまうんでィ!!
それでも今日は一年に一回の新八くんの誕生日だから…なんとか色んなもん振り絞って、誕生日プレゼント渡して告白しようと心に決めて来たんですがねィ…
よく考えると俺ァ新八くんの好きなモンなんざ、殆ど知らないんでさァ…
やっぱりオーソドックスに結婚指輪とか…あ、俺新八くんのサイズ知りやせん…
んじゃ、着物とか…じゃ、新八くんの好み知らねェや…
寺門さんグッズ…はカブったら微妙でィ。
ゲーム…は…ラブチョリスぐれぇしかやってねェって言ってたし。
あん時は結構仲良くなれた気がしたんですがねィ…
あー!
なんかこう!新八くんのハートをぎゅっと掴む何かって言ったら何なんですかねィ!?
ブラブラと店を眺めるついでに見廻りをしながら歩いていると、色んなモンが目に留まる。
でも、どれも良さそうで、どれも決め手に欠ける。
あーあ、何にしようかねィ…
通りかかった眼鏡屋のショーウィンドウを眺めてっと、綺麗に並べられた眼鏡の向こうに新八くんの笑顔が見えた気がした。
…眼鏡も良いかもねィ…
ほら、言うじゃねェか。
男が眼鏡贈んのは、その眼鏡を外すのが目的だって。
「あれ、沖田さん?」
天使の声が聞こえたと思って慌てて振り返ると、ソコには俺を見て可愛く微笑む新八くん!
「よっ…よう…」
「珍しいですね、沖田さんとこんな所で逢うなんて…」
「おー、そうだねィ…新八くんは健康診断ですかィ?」
「んな訳無いじゃないですかっ!まだ眼鏡が本体説推し進めんのかよっ!?あのですね、実は今日僕の誕生日で…姉上がスペアの眼鏡をプレゼントしてくれたんですよ。ちょっとオシャレなんですよ?」
えへへ、と嬉しそうに笑う新八くんは半端無く可愛くて、俺ァそれだけで体の力が抜けてグダグダになりそうになる。
でも…姐さんが眼鏡をプレゼントしたって事ァ…俺は眼鏡はプレゼント出来ねぇや…
「ところで、沖田さんが眼鏡ショップに居るなんて…もしかして沖田さんも目が悪くなったんですか…?」
にこにこと微笑んだままそう聞いてくるなんて、眼鏡仲間が増えるとか喜んでくれてんですかねィ?
「いんや。新八くんが沢山居るなー、って眺めて…」
「だからっ!僕は眼鏡が本体じゃないって言ってんだろが!!」
はっ!
ボーッとプレゼントの事考えてたら新八くんを怒らせちまった…
こんなんじゃ告白なんざ出来ねェ!
しっかし…プリプリと怒って俺を睨む姿まで可愛いぜィ…
「あー…すいやせん。じゃぁお詫びに何か奢ってやりまさァ。誕生日なんだろィ?」
「えっ…!?良いんですかっ!?」
はっ!
ボーッとしたままでいたら、俺すっげぇナイスな事言ったんじゃね?
新八くんも頬染めてまさァ!
「おう、どんと来い。」
「じゃぁ、じゃぁ!僕ケーキ…食べたいです!」
「サイコーに旨い所に連れてってやらァ。」
俺がニコリと微笑むと、嬉しそうに笑った新八くんが『待ってて下さいね!』と念ををして小走りで眼鏡を取りに行った。
そんな急がなくたって俺ァいなくなんかならねェのに…
新八くんの後姿を見守りつつ、俺は小さくガッツポーズした。
スゲェ俺!
これってデートじゃね!?
サイッコーに旨いケーキで新八くんをとろっとろに甘くして、その勢いで告白でィ!!
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