I LOVE YOU



それはある日の万事屋からの帰り道。
見廻り中だという沖田さんに、僕は偶然出逢ってしまった。

「こんばんわ沖田さん、ご苦労様です!」

「おう、こんばんわ。ここ最近ちょっと物騒だからねィ…新八くんは今帰りですかィ?」

「はい、今日はちょっと遅くなっちゃいまして…」

昨日久し振りに仕事が有った万事屋は、嬉しい事に報酬の他にそのお宅で作っているというお野菜をたくさん頂いたんです!
そのせいなのか、ちょっと浮かれた銀さんが久し振りに料理を作ってくれて、今日の夕飯は凄く豪華だったんですよ?
だから僕と神楽ちゃんも気分がノっちゃって、いつもの夕飯がプチパーティーみたいになっちゃって…それで僕の帰る時間がいつもより遅くなっちゃったんです!

楽しかった気分そのままにそう説明すると、沖田さんはにこにこと楽しそうに話を聞いてくれて。

「そりゃあ楽しかったんだねィ。羨ましいこって。」

なんて返してくれた。


ドS王子だとか意地悪だとか言われている沖田さんだけど、僕と話をしている時はとても優しくて、頼れる兄上みたいで全然そんな事無いのになぁ…
それは近藤さんが決めた局中法度のせいかもしれないけど、銀さんや神楽ちゃんに対するのとは表情とか口調とか態度とか、何もかもが全部違うんだもの。
綺麗で可愛くてキラキラしてて、それなのに格好良くて男らしくて…
そんな人に僕だけ凄く大事にされてる感じがして………そりゃ、男の僕が好きになっちゃっても仕方ないよね!?

「どうしたィ新八くん。満腹すぎて歩けねェのかィ?優しいお兄さんがおぶってってやろうか?」

ニヤニヤ笑いながらちょっと意地悪に、立ち止まっていた僕に沖田さんが言うけど、そんな事も気にかけてくれる事が嬉しくて仕方ない。

「本当におぶってくれるんですか?」

えへへ、と笑いつつそう聞いてみると、沖田さんの手が伸びてきて、ビシッとデコピンされてしまった。

「俺がそんな事する訳ねェだろ。むしろ俺をおぶりなせェ!良い腹ごなしになんだろィ?」

そのまま僕にぴったりとおぶさってこられると、心臓が爆発しそうになるゥゥゥ!!
体温がァァァ!なんか良い匂いがァァァ!!

「ちょ…!沖田さんんんー!!」

「キリキリ歩きなせェー」

思いっきり体重をかけてくる沖田さんを引き摺りながら空を見上げると、そこには綺麗な満月…
そういえば…

「月が…」

「へ?」

「月が、綺麗ですね。」

美しく訳された、西洋の愛の告白。
沖田さんがそれを知っていたら、僕はこの後天国か地獄に行く事になる。
知らなかったら…

立ち止まって突然そう言った僕から体を離して、沖田さんが僕を見て月を見上げる。
笑ってもいないし、顔を歪めてもいない。
無表情だから、いっそう恐いよ…

「そうですねィ、今日は満月でしたっけ。」

そう言ってふんわり笑った沖田さんは、まるで月から来た妖精のようだ………

って!!
この反応は解ってる!?それとも…!?

「えっと!沖田さん知らないですか!?」

「ん?何をですかィ?」

きょとん、と僕を見るこの顔は………これは………
………この顔は知らないな………

「優しいお兄様を無視たァやるじゃねェか新八くん…」

僕が内心ホッと溜息をついたりがっかりしたりしている間が長かったのか、ムッとした沖田さんがヘッドロックをかけてきた!それも本気の!!
ちょ!こんなの僕が受け流せるわけないだろォォォ!ギブ!ギブ!!
僕がパンパンと沖田さんの腕をタップしても、沖田さんは全然離してくれない!

「んー?聞こえやせんねィ。声は出せるだろィ?」

どっ…どうする!?
どうする僕ゥゥゥ!?
正直になんか話せる訳ないし!!
他に何か…何か………あっ!!

「まっ…満月の晩にお月さまに向かって空のお財布を振るとお金が貯まるんですよォォォ!」

苦し紛れにそう叫んだ僕の首から沖田さんの手が離れる。
助かった………

「貧乏だと色々やらなきゃいけねェ事が有って大変だねィ…今晩も振るんですかィ?一緒に振ってやろうか?」

にやーりと悪そうに笑う顔なのに格好良いなんて思う僕の目は本当に悪いに違いない。
畜生、メガネ変えてやる!

「振りませんー!」

「強がんねェで振れよー」

「依頼料が入ったんで今はそんなに貧乏じゃないですぅー」

「なんなら俺が振ってやろうか?」

うっ…そんな縁起でもない事聞きたくないよ!!
『ふってやる』なんて、違う意味でも聞きたくないィィィ!!

「嫌です!結構です!!」

「ほれ、財布出しなせェ。」

「嫌ですゥゥゥ!」

そんなやり取りをしながらも、沖田さんはしっかりと僕を家まで送ってくれた。
思わず言っちゃった告白だったけど、伝わらなくてちょっと安心したような残念なような複雑な気分だ。
取り敢えず今は、このままの関係で満足…だよ…